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シークエンス エンド

体育館の裏、誰もいないそこに犯人と俺はいた。

「爆弾ってのはブラフだろ?話を大きくするための。そうしないと関谷さんがお前に全部任せるなんて展開にならないし、いくら先生に言ったら学校に犬を連れてきているのがばれるからって、

あそこまで愛犬家の関谷さんが他人に相談しないわけがない。どうせお前が、誰かにむやみに話すと爆弾魔に犬が殺されるかもしれないとかいったんだ。何でこんな事をしたのかは解らないがそれしかありえない。そもそも関谷さんが犬を入れたバックをとりに行った時、丁度そこにお前が通りかかる事も偶然にしちゃ出来すぎだ。関谷さんは卒業式が終わったらすぐに犬に会いに行ったはずだしな。」

瞳は深く帽子を被っていてどんな表情をしているかは解らない。

「何の話?」

「お前がまだ根に持ってるとは思わなかったが、お前の考えは解らないからな、えっ?」

 顔を上げた瞳はさきのん先輩だった。いやちがう、さきのん先輩が瞳の帽子をかぶっていたんだ。

「あの、私、瞳さんに灰君が話があるからこれ被って待ってて、って言われたから。っていうか、さっきの話何?」

どうやら逃げられたらしい。

「さきのん先輩、瞳がどこにいるか知らない?」

「今日はけん玉教室があるから先に帰るって、言っていたけど…。」

 ハイソな趣味持ってんなあいつ…。

瞳が学校の焼却炉のほうに走っていくのが小さく見えた。 

「さきのん先輩、あいつを追おう。」

 俺が追いついた時には、瞳は焼却炉に、あのバックを突っ込んだところだった。俺が肩に手を掛けると、その手を振り払って瞳は言った。

「そうだよ!私は悔しかった。あの瞬間私はまごう事無き探偵だったのに!お前があのまま犯人だったら良かったんだ。でもこれで私が仕組んだという証拠は無くなった。お前が何を言おうと私は無実だ!あの時のお前のように!」

 大きく笑う瞳。

あの時っていうのは里中さんの水着が盗まれた時の事だろう。こいつにとってあの事は大きな事だったのだろう。俺にとっては些細な事だが、それは俺のものさしでの話だ。たとえ、みんながあれが些細な事だったで済ませてもその事実は変わらない、こいつの中では。

「今回はお前の負けだ。」

だが結局、、、俺の中では些細な事だ。

「俺は潔癖だ。」

「灰君?」

さきのん先輩が首をかしげる。 

 

瞳がまた何か言いかけたとき、鞄の中に俺が買ったままバックに入れっぱなしにしていた大量の爆竹がいっせいに爆発したのだろう、大きな音とともに、焼却炉が爆発する。

「ぎゃっ」

 女の子としてぎりぎりな声を出しながら、しりもちをつく瞳。

 俺のできることは終わった、こいつを警察に突き出したって無駄だし、何より何も起こっていない。俺は勝手に勝利に酔い、こいつはきっと悔しがるのだ。

 明日になれば元どうり、クラスメイトをやっているだろう。

「ねぇ。」

 さきのん先輩が俺の袖を引く。

「瞳さんが灰君に酷い事しようとした事はなんとなく解った。そうだよね?」

「まぁ。」

 それどころかもう少しで死ぬところだった。主に関谷さん的な意味で。それさえも全ては未遂なわけだが。

「解った。じゃぁさ、今日は帰って。」

 さきのん先輩からこれまで感じた事のない威圧感的なものを感じる。

「なんで?」

「敵はとる。」

そういって手をわきわきさせながら瞳のほうにゆっくりと近づいていくさきのん先輩。そんなさきのん先輩に恐怖を感じたんだろう、逃げようとした瞳は手足をばたばたさせる。

「あ、やばい。腰がぬけて…」

「反省しなさい。」

 さきのん先輩がこれまで見た事もない様な笑顔だし、問題ないだろう。本音を言うと、さきのん先輩がなんか怖いのでもう帰ろう。 

 帰ってインターネットで将棋をする事にした。だってこの部活将棋しないし。  


次の日から、瞳が俺とさきのん先輩に敬語を使うようになったが、何があったかは知らないし、知る事はないだろう。普通な人に見えても頭がおかしい部分ってのがある。言い方が悪いかもしれない、誰にでも人とは違うところはあるって事を俺は言いたいんだ。


そう誰にでも。

そして俺は呼び出した真犯人と会う。あの日、犬の入ったバックに躓き蹴飛ばしてしまって、犬が逃げ、大橋君の手をわずらわせる原因を作った奴。

「やぁ。」

「おう、カオスか。」

「さっきまでの見てたよ。なんかごめん。」

「俺は楽しかったよ。」


 本当の真犯人、カオスは少し考えたそぶりの後、

「関谷さんに正直に犬を蹴っちゃったのは僕ですって言ったほうがいいのかな。」

「死にたかったらな。」

「だよね…」

 人間そう簡単に死なないなんていってる奴は、本当に運がいい。俺を見てみろ、友達を庇っただけでもう二回も死にそうになってるんだ。




アフター

「助けてもらった後になんなんだけどさ、少し腑に落ちないことがあるんだよね。」

 カオスは影が薄い。それも絶望てきにだ。だからなのかは知らないが、休み時間はじっとしている事が多く、その休み時間に俺に話しかけてきたことに驚いた。

 何?と小声で返事をした、あまり声を出すと独り言を大声で呟く変な奴だと思われかねないからだ。

「あんな回りくどいやり方しなくても、犬をこっそり返す方法なんていくらでもあったよね?」

「それだとお前が、関谷さんに殺されるから俺があんな回りくどい事したんだろ。」

「だからこっそりとさ。」

 あの事件からもう一週間、今頃になって言う話でも無いんだけど気になるというなら教えてやるか…

「それは無理だ。あの日、犬をどうにかできた人間は体育館から外に出た俺とお前しかいない。そもそも犬があんな大型犬だとは俺は思っていなかったし、そもそも犬を逃がしたから厄介な事になったんだろ。」

「君は大型犬だって気付いただろ、その時にこっそりとかは出来なかったのかい?」

「それだとお前が犯人になるだろ。」

 カオスはまったく解ってないという顔だ。そこで俺はやっとカオスが何を解ってないのか理解した。

「瞳もお前の事、、、認識してる。それに犯人がお前だってことも気付いてる。そしてお前の影が薄い事もな。カオスを犯人と言ってもお前は幽霊みたいな奴だから、誰も納得しない。誰もお前のことなんて知らないからな。だから俺を追い詰めてお前が犯人だと言わせようとしたんだ、二人同じことを言う人間がいれば信憑性高いだろ?」

「頭がこんがらかってきた。結局君の行動にはどんな意味があったんだい気味は全部最初から犯人が誰だか解っていたんだよね?いや、助けてくれたってのは解るんだけれども。」

 俺の行動に何の意味があったのか、俺の計画は完璧だった。確かにあんなに早く俺を犯人だといってきたのには驚かされたが、全ての行動には意味があった。

「確かに、お前を守るってだけなら、犬が勝手に逃げたって事にして、爆弾が入ってたとか言うバックは他人の持ち物だという事にして、瞳を黙らせればいいんだ。」

「じゃぁ何で?」

「お前、里中さんの水着盗んだろ?」

 カオスはうっと胸を押さえて、すぐに口に人差し指を立てて静かにするようにジェスチャーする。そんな事しなくても、誰かに聞かれる心配は無い音量で喋っているのだが。

「その時も、お前の事を認識できる瞳はお前が犯人だとすぐ解ったが、さっきも言ったがお前は幽霊みたいな奴だから唯お前を犯人だといっても無駄。俺に犯人はカオスだと言わせる必要があった。でもそれは失敗しただろ?そうじゃなきゃお前はここにはいない。」

「その件は感謝してるよ…。」

「その時のリベンジマッチみたいなもんだったんだよ。」

 なるほど、と言ってカオスは自分の席に戻る。しかし、すぐに戻ってきてこう言った。

「僕さ、瞳さんと友達になれるかな。」


「お前は俺の話をちゃんと聞けよ。」


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