シークエンス7まで
―――シークエンス3
「あ、さきのん先輩。おはようございます。」
瞳にパンを分けてもらっていたら、さきのん先輩が来たので挨拶する。年上への敬意は忘れちゃいけない、こう言うとき親のしつけがでると思う、実際俺のは条件反射だ。
「先輩遅い。」
瞳が不満を漏らす。確かに2分くらいの遅刻かもしれないが、ふてぶてしいな、親の顔が見てみたい。
「ごめんなさい。」
とても素直に謝ってしまうさきのん先輩。可愛い。この学校で小動物っぽい人といったら俺はこの人と答える。
だって、常にひまわりの種持ってるから。
「…なんで集まったの?」
そうだ、さきのん先輩が居る以上、俺の論理的推理は論理的じゃない。
「決まってるわ。唯の実験よ。」
さきのん先輩は瞳から旗を渡され、キョトンとしている。
「さぁ、曲がり角で男子と女子がぶつかって一昔前の漫画のような展開になるのかどうかの実験をします。」
瞳の言葉を頭の中で反芻する。
「全てわかった、とりあえずそんな理由でこんな時間に先輩を呼び出したお前は、さきのん先輩にスライディング土下座しろ。」
指を鳴らして威嚇しながら、瞳に命令する。
「スライディーーーーング土下座ぁぁぁ」
全くスライディングしていないが、そう叫びながら土下座する。
「気にしてない。」
「よし、じゃあ俺、帰るわ。」
しかし、優しいさきのん先輩が折角集まったんだし、やろうといったのでやる事になった。
数回のトライの後、
「ダメね。ぶつかった時の衝撃では転ぶ事さえ難しい。灰、全力疾走してきて。」
「なんなんだ、親の遺言でその事を調べろとでも書いてあったのか?なんでそこまで捨て身で、こんなくだらない事を調べようというんだ。そもそも、無理だよ、俺が全力疾走した時点で色々崩れてるよ。」
俺は、この何の面白みも無いただただ瞳と曲がり角でぶつかるという作業に飽きと、言葉では表せない虚無感を感じ、遂に俺はキレた。
「がんばって。」
よし、さきのん先輩がそう言うなら俺の全力疾走を見せてやろう。ひまわりの種を渡された、さきのん先輩は何かにつけてひまわりの種をくれる。これ味が無くて、おいしくないんだけどな。
結局、それから18本もダッシュさせられる事になった。
―――シークエンス4
俺は二年生だから卒業式はあまり関係ないが、授業が無いのはいい、座っているだけでいいなら楽だ。楽なんだが、腹が痛くなってきた、ひまわりの種の食物繊維って多そうだし食べすぎたかも。恥を忍んで席を立った。担任の先生が体育館の出入り口に立っていて、呼び止められる。
「おい灰、どこに行くんだ。」
「腹が痛くて。」
「よし、行け。」
体育館のドアを開けてくれたので、トイレに行く。トイレからでると、担任の先生がやってくる。
「下痢か?」
まぁ、下痢かどうかと言われれば下痢だ。理由は食物繊維のとりすぎだが。
「何度も体育館を出入りするのは恥ずかしいだろう。荘厳な卒業式だしな。保健室で休んでいてもいいぞ。」
先生に背中を押される。保健室に入れられる、まさか、保健室で卒業式に参加する事になろうとは。
暇なのでボーっとする。ストーブの中途半端な暖かさが心地いい。
これベッド使っていいのかな。眠くなってきた。しかし、病人でもないのに無断で使っていいものなのか?
む、外に誰か歩いている。
あぁ、風紀委員の大橋だ。風紀委員は卒業式中、部外者が校舎に侵入してないか見回りだろう。こう言う行事の時にはこう言う役は必ず必要だからだ。とりあえずなんか恥ずかしく思ったのでしゃがんでやり過ごす。
結局、保険の先生も来なかったし、俺は卒業式で校長先生が言っていた、足の裏から光のでる人になれと言う言葉についてただ考えていた。
―――シークエンス5
この時、ひとつの事件が起きていた。
三年生を送る会を、将棋部も行う事にした。といっても、三年はさきのん先輩しか居ないので、みんなでお菓子を買ってきただけだ。送る会といっても、何をすればわからなかったのでいつもどうりの部活だ。
「ルールはウォーターメロンで。」
さきのん先輩がトランプを切る。ポーカーだ。
「はいフルハウス。」
掛け金など無いので、役が出来たら見せてしまって問題ない。
「ストレートフラッシュ。」
「それ、八回くらい連続だよね。」
「ズルはしてない。」
「違うゲームしない?」
ずるしてないんじゃ勝てるわけが無いと判断した。
「いいよ。」
「コッチのカードゲームしよう。ライフは四千で。」
そういって俺が出したのは、トレーディングカードゲームだ。
「じゃ、わたしの先攻、マンモスの墓場召還、二枚伏せ、エンド。」
「俺のターン、《クイック・シンクロン》・《レベル・スティーラー》・《シンクロン・エクスプローラー》で、《ジャンク・ウォリアー》と《ロード・ウォリアー》をシンクロ召喚。《ロード・ウォリアー》の効果でグローアップ・バルブを特殊召喚し、《レベル・スティーラー》と共に《フォーミュラ・シンクロン》をシンクロ召喚。シューティング・クェーサー・ドラゴン召還。アタック4千の二回攻撃。」
「何かありますか?」
「……。」
勝利。
カードゲームはこれだけならさきのん先輩に勝てる。
「先輩ってどこの大学行くんですか。」
話題もなくなったので、聞いてみた。
「ねぇ。」
さきのん先輩が複雑な顔をしている。あれ、何かやばい話題だったかな。
「あの…今まで言い出せなかったんだけど、私さ、灰君と同じクラスなんだよね。」
それは無い。
さすがにドッキリだ、余り冗談を言わない人だからドキッとしたが、常に真実だけを口にするわけじゃない。
「冗談言わないでくださいよ。だって、みんなからさきのん先輩って言われてるじゃないですか。」
「そう呼ぶの瞳さんと灰君だけだよ…。」
あれ?
これってもしかして、ガチのパターンか?
「いや、ありえない。そんなパターンねぇよ。だって俺が入部した時先輩っぽく入部届けを出しに言ってくれたじゃないですか。」
それにあの時、誰よりも先に部室に…いや違う、あの時部室に一番にいたのは俺だった。
「私もその時は職員室に用があったから。」
「でも、先輩って言っても訂正しなかったし…。」
それでも俺が食い下がると、恥ずかしそうに、
「あの…私、小さいから年下に見られた事しかなくて…だからちょっと嬉しくなっちゃって。」
なるほど、タメなのか、なら、先輩というのも変な感じではある。
「解った。さきのん。なんかさきのんって言うの慣れてないから、はずいな。」
「あだ名だからだと思う。私、大手、もみじって名前だから、名前で呼んで。」
さきのん関係ない名前だった!さの字すら入ってない。崎原 雫とかそんな名前だと思ってたのに!
「じゃあ、もみじって呼ぶ?」
「あ、はい。」
なにこれ。
部室のドアが、音を立てて開く。びくっと肩を震わせる俺ともみじ、いや、やっぱりさきのん先輩で。入ってきた瞳は、テクテクと俺たちの前を通り過ぎ自分のバックからあの大きな帽子を取り出す。
「…。」
後輩達は、逃げるように帰った。みな、親の都合など言っていたが、十中八九嘘だ。そんなやつが、ポッキーを舐めてプリッツみたいにしてから食べるはずが無い。俺も逃げ出したかったが、さきのん先輩をここに一人で置いていくのは気が引けた。覚えてろよ、三沢に本沢に明人に喜成に藤浪に祥太郎め!(後輩達の名前)
―――シークエンス6
一年生の関谷さん。彼女の犬好きはナポレオンも敗北の二文字を辞書に刻むほどだ。そんな彼女は今日の卒業式にもちろん犬を連れてきたらしい。しかし、さすがに卒業式の間は犬を抱えているわけにもいかず、バックの中に入れて外の藪の中においておいたらしい。その犬が盗まれた。しかもそれだけじゃない。そのバックには犬の変わりに爆弾が入っていた。
「タマが、タマがいない。それにこれ、何が入ってるの?そんなことよりタマタマタマ。タマをさらった奴は八回殺してもまだまだ足りない。この世の地獄を…ぶつぶつ。」
関谷さんはたとえ明日世界が滅びる事になってもこんなに動揺しないだろう。
しかし、どんな時も論理的な思考が出来なくなると、ろくな目にあわない。
「一年の関谷さんだよね。どうしたの?」
「うぅ、私のタマが、、たまがぁ。」
「私に任せて。」
まさに女神の微笑みに見えたと関谷さんは後に語ったというが、それは悪魔の微笑みに違いない。
瞳の説明が終わる。
「質問していいか?」
「なに?」
「タマって犬の名前か?」
「そうらしいわ。」
うむ、疑問は全て解決した。帰ろう。しかし、意外にも俺の退路を妨げたのは、さきのん先輩だった。
「待って、関谷さんがかわいそう。」
「そうよ、関谷さんはショックでタマタマタマとうわごとのように言い続け、友達がどんどん減って行ってるって言うのに。」
病院に行け、怖すぎだろ。
「つーか爆弾って本物?誰かのいたずらじゃね?」
「えぇ、確認したわ。本物よ。」
「それに貴方わかってないわね、犯人はならべく早く見つけださないと死人が出るのよ?」
意味が解らない、どうせ適当な事を言って俺に手伝わせる魂胆だろう。
「今日、関谷さんがストレスで授業中に七十八度、、、、、、、吐血したわ。」
怖すぎだろ。




