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彼女に電話

作者: WAIai
掲載日:2026/07/01

夕食を平らげて、部屋に戻ると、俺は早速LINEを見る。


メッセージがきており、「電話してもいい?」というものだった。


俺はバイトの後で疲れていたが、彼女の優しい声を聞けば回復てきるかもしれないと思い、電話する。


「もしもし?」

「もしもし」


ちょっとくぐもったような声。

それでも彼女だと思うと、機嫌が良くなってくる。


俺はにやにやしながら、聞いてみる。


「今、いい?」


「いいよ。ちょうどお風呂から上がったところだから」


彼女の姿を想像し、顔がみるみる赤くなっていく。


どんなパジャマなのか。

どんなベッドなのか。


余計なことを考え、首を横に振る。


彼女は黙ったのが気になったのが、

「どうしたの?」

とまるで子どもに話しかけるように、柔らかく聞いてくる。


俺はベッドに座りながら、

「何でもない。ちょっと考え事をしていただけ」

はぐらかすと、スマホを更に耳に押しつける。


彼女の麗しい声を聞き逃したくなかった。


「今日もお疲れ様でした」


彼女がそう言ってきたので、バイトのことかと思い、答える。


「ありがとうな。お前の声を聞いたら、力がわいてきた」

「もう大げさなんだから」


彼女は照れたような声を出し、話し始める。


「明日、美術の時間が楽しみだね」

「ああ、そういえばそうだったな」


俺はカバンをあさり、時間割を確認すると、美術の時間は4時間目だった。


「ちょうどお腹が空く時か」

「大丈夫。またお菓子を持っていくから。今ね、こんにゃくゼリーにはまっているんだ」

「こんにゃくゼリー? へえ、俺にもくれる?」

「あげるよ。一緒に食べよう」


ふふと笑う彼女。

今すぐにでも会いに行きたいが、夜は危ないし、彼女の家族に遭遇するのは、避けたかった。


「美術の時間、切り絵だろ?」


俺が切り出すと、彼女は興奮したような声を出す。


「そう!! そうなのよ!! 私、金閣寺を作ろうと思って」

「金閣寺? そういえば、京都と奈良に関係するものを作るんだったな」


修学旅行はまだ早いが、美術の先生は京都と奈良のものを作らせようとしているのだった。

それを学園祭で廊下に飾る予定らしい。


「俺は何しようかな? 阿修羅像にでもするかな」

「わあ、かっこいい!! いいと思う!!」


彼女のはしゃいだ声に、俺は電話じゃ物足りないなと残念がる。

彼女はどうなのだろうかと考え、やめる。

楽しい空間を壊したくなかった。


「デザインカッターを忘れないようにしないと」

「そうだな。一緒に机を並べてやろうぜ」

「うん!!」


それから他愛のない話をし、俺は時間を見る。

そろそろ話を切り上げないとと思い、彼女に言う。


「そろそろ切るな。…淋しいけど」

「え。もうそんな時間? 残念だな」


彼女ががっかりした声を出したので、俺はスマホに向かってキスをする。


彼女はどうだろうかと思っていると、

「えっと、えっと…」

と混乱中のようだった。


ちゃんと俺のキスは届いたらしい。


「じゃあお休み。切るな」

「ち、ちょっと待って!! あの、その…!!」


言葉の後に、チュと音がした。

彼女なりに一生懸命、返してくれたらしい。


俺は喉の奥でくくっと、笑う。

飽きなくていいから、彼女を大事にしたかった。


「ありがとうな」

「う、うん。じゃあね」


彼女が顔を真っ赤にしているのを想像し、俺はスマホに向かって「愛しているぜ」と言うと、彼女が声の上がらない悲鳴を発したような気がした。


「じゃあな。また明日」


そう言うと、スマホを切ったのだった。

俺はベッドに横になると、天井を見上げる。


その顔はとろけたものであり、彼女には見せられないものだった。


「明日、どうなるかな?」


会った途端、顔を赤くするか、文句を言ってくるか、楽しみだった。


俺は横向きになると、目を閉じたのだった。


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