第八章 健輔じいさん ~出発の歌~ 8
「ほら、上を見上げてみると分かるんだけど、左右の太い材木で支えられているのが見えるよね。あの材木は“合掌桁”と言って屋根そのものを支えているんだよ。」
とある合掌造りの民家の中を見学しながら、健輔は茜に 合掌造りの屋根の構造 を説明した。
「で、さっきの合掌桁の下っ端に目を向けると先が尖っているのが分かるかな?この部分は“コマジリ”と言って下の“合掌梁”って所に開いてあるいくつもの穴の中にコマジリを何本も埋めていく事によって屋根が出来上がる仕組みになっているんだよ。」
「へぇーーーーーーー、すごい。さすが健輔じいさん、何でも知っているのね!」
「いやぁ、そんな事ないさ。僕だってあくまでもガイドさんから教わった事の受け売りだからね。」
健輔は謙遜していたが、それでも茜は彼の博識ぶりにひたすら感心するばかりであった。
「ねぇねぇ、次は展望台に行きたい!途中で団子食べてどぶろく試飲して、食べ歩きしながら・・・・・・っとっと、私ったら嫌だ!今日はバイクで来ているのにお酒飲んじゃヤバイって!」
茜は地酒のどぶろくを飲みたかったのだが、バイクで来ている事を忘れそうになった。
「あはははは・・・・・・・お嬢さんはお酒が好きだったね。ま、どぶろくはともかくとして要望にお応えして展望台に行くとするか。」
2人は白川郷の全景が望める萩町城跡の展望台へと向かった。
「おーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!!!!健輔じいさんったら早く早く!!!!!!」
展望台に向かう途中にある上り坂にて、先に上ってしまった茜が息を切らしてゆっくり上る健輔を見下ろしながら手招きをした。
「分かった分かった!本当にあんたは元気だよ。僕はもう老いぼれ爺だからねぇ・・・・・」
健輔は自身の老体に鞭を打ちながらも自分のペースで坂を上った。
「ふーーーーーーーーーっ、着いた着いた。わぁ素敵!!!!!ねぇねぇ健輔じいさん、さっきまで歩き回った場所がまるで1つの絵みたいになっている!!!!!!」
萩町城跡展望台から見渡す白川郷のパノラマ風景を目の当たりにした茜は健輔の腕を掴みながら大はしゃぎをした。
「そんなに喜んでもらえるとは僕も君を案内した甲斐があったよ。」
健輔は茜が心の底から喜んでいる姿を見て、微笑ましく思っていた。そしてしばらくして健輔は澄み切った青空を見上げながら
「ああ、こうしているとあの時の事が蘇ってくるよ・・・・・・・」
と1人つぶやいた。




