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バイク乗り2004 ~ある女性の全国放浪記~  作者: r_SS
第八章 健輔じいさん ~出発の歌~
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第八章 健輔じいさん ~出発の歌~ 5

 「おいアンタ!こっちはなぁ家族4人支えなければいけない立場なんだぞ!!!!!!それなのに何だぁ?貴様はこの俺に対してこんな安月給の仕事につけって言うのか?!」

 「い、いやそんな事言われたって今こんな時代ですし・・・・・・・・・」

 埼玉県内の某所にある ハローワーク こと公共職業安定所にて、そこに勤務する茜の学生時代の同級生である野崎昌男は相変わらず職が決まらずに苛立つ求職者の相手をする日々を送っていた。

 「もういい!お前みたいに何もわかっちゃいない若造に聞いた俺がバカだった!!!!!!」

 「ハ、ハイッ!!!!!本当に申し訳ございませんでしたっ!!!!!!」

 昌男に八つ当たりをした求職者が席を立つと昌男はひたすら平謝りをしていたが、

 (・・・・ったく不況なのは俺のせいじゃねえっつうの!そんなんだからいつまで経っても再就職先決まらねーんだよっ!!!!!!!!!)

 と、内心では舌を出していた。その時であった。後ろから視線を感じたのである。

 (オイオイ、又あの能無しジジイかよ・・・・・・・)

 ”能無しジジイ”こと昌男の上司が仕事もせず、ずっと昌男のことをじーっと睨んでいたのである。

 「野崎君、ちょっと!」

 「あ、ハァ・・・・・・」

 昌男は”又始まったよ”と言わんばかりの態度で上司の所へ行った。


 「あ、あの課長、何でしょうか?」

 昌男が上司に訊ねた。

 「君ねぇ~、ここが一体どういう場所だか分かっているよねぇ、職安だよ、しょ・く・あ・ん!」

 「ハァ・・・・・」

 「ただでさえ税金泥棒の公務員って世間から叩かれているのに君はろくに求職者1人が満足する仕事を見つけることぁできないのかね?」

 「いや、別に僕はきちんとやっているつもりですが・・・・・・」

 「口答えする気かい?それじゃあ何でさっきの人あんなに怒鳴ったりしたんだい?この前だって別の人怒らせて苦情がこっちにまで来たんじゃないか?ん?全く君みたいなのを部下に持つとこっちの身にもなってもらわないとねぇ、ハァ~・・・・・・」

 と、いつもの如く昌男の上司はネチネチと嫌味を言い続けた。


 全く何なんだよこのオッサン!さっき俺に

 怒鳴りつけたあのジジイだって前々から

 要注意人物だって事を分かりきっているんだろ?

 それなのにいっつも下っ端に嫌な

 役目を押し付けてテメーはそうやってボーっと

 机に座ってPCでネットサーフィン

 かよ!?テメーが一番税金の無駄遣い

 してんだよバーーーーーーーーーカ!!!!

 大体お前が全然仕事しねえから俺が毎日

 下げたくもねぇ頭下げているんだろうがよ!

 ゲッ!おいおいカンベンしてくれよ~、

 こいつ小指で耳ン中ほじってやがるよ

 オイオイちょっと待てよ!こっちに

 耳クソ飛ばしてんじゃねーーーーーーよ!!!!

 このクソ野郎、いつか絶対にブッ潰してやる!!


 昌男は内心上司に対する不平不満が爆発寸前までに至っていたが、そこはグッとこらえ、延々と続く嫌味を黙って聞いていた。と、その時であった。

 「ただいまぁ~、あ~あ!全く本当に嫌になっちゃうわよっ!!!!!!今日オープンしたあのお蕎麦屋のマズさと言ったら!あんなに伸びきった蕎麦を平気で客に出すなんて一体何様って感じ!もう頭に来ちゃったから店長呼んで大声で怒鳴りつけてやったわよっ!!!!!!」

 「ホントホント、あんなにマズいもの生まれて初めて食べたわよっ!あんなんでもしっかり1,000円取るんだから大したモンだわよね!!!!!」

 職場内で最も恐れられている臨時職員の中年女性2名がお昼のランチから戻って来たのである。

 「これはこれはお二方!お帰りなさいませっ!!!!!!」

 先程まで昌男に対して嫌味をタラタラと言い続けていた上司”様”の態度が豹変し、信じられない程低姿勢な態度で女性達の顔色を伺っていた。


 その女性達、1人は元横綱の曙をそのままメス化させたような風貌とそれに比例するかの如く態度も大きく、臨時職員という身分でありながらあの仕事は嫌だこの仕事は面倒だ等と我侭三昧で仕事中も大声で雑談ばかりをし、もう1人は小柄で華奢な体型ではあったがいかにもお喋りで他人の陰口や噂話が大好きといった感じの人物であった。そして周囲はそんな2人を敵に回したら最期だと分かっていたので、誰も彼女達に逆らう事はできないのである。

 (こんな奴らと仕事をする為に公務員試験の勉強を一生懸命頑張って来た俺って一体・・・・)

 昌男はそう嘆きながらトイレへと避難してしまった。


 (あ~あ、全く毎日毎日やってらんねぇよ!)

 昌男はトイレで用を足しながら劣悪な職場環境に対する文句をブツブツと言っていた。

 (軽井沢に行ってからもうどの位経つんだろう?そういやさっき大橋さんからメール来てたけど、今高山の方にいるって言ってたな。ちっきしょーーーーーー!!!!俺もこんな所からさっさと逃げ出してツーリング行きてぇ!!!!!!!)

 昌男は茜から届いたメールを読んで、自分も旅に出たいと思っていたのである。そして

ふと軽井沢のグリーンケイブルズDGHにて茜から『いちいちうるさいのよ!!!!!!大体何よ、野崎君はいい御身分じゃない!公務員なんてクビもリストラもないんだしさ。一生のほほんと暮らしていけるアンタにとやかく言われたくないんだよね!!!!!』


 と言われた時の事を思い出した。

 (いい御身分、か・・・・・そうか・・・・)

 そう思った瞬間、昌男は

 「俺だってなぁ、メチャクチャストレス溜まってんだよっ!!!!!!!!」

 と叫び、トイレの壁を力いっぱいに蹴飛ばしたのである。しかしその直後、天井から何かボトっと落ちてきた。

 「ん?」

 昌男が目を下にやると、そこには楕円形のボディにこれでもかと云う位黒光りした

大きなゴキブリが威勢良く歩いていたのである。

 「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!ゴキブリイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!!!!!」

 昌男は悲鳴をあげ、半泣き状態でトイレから即座に逃げ出した。

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