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バイク乗り2004 ~ある女性の全国放浪記~  作者: r_SS
第八章 健輔じいさん ~出発の歌~
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第八章 健輔じいさん ~出発の歌~ 4

 「う~ん、やっぱり高山に来たらまずは朝市に行かなくちゃね!」

 岐阜県飛騨高山方面に来て2日目の朝、この日は愛車カワサキ250TRを宿に置いて来て朝から市内を散策していた。別名『飛騨の小京都』と呼ばれる高山市内は江戸時代の情緒溢れる 古い町並 に毎朝早くから開店する 宮川朝市 、そしてちょっと足を伸ばせば 奥飛騨温泉郷 に 下呂温泉 など数々の名湯等で、季節を問わず全国各地から大勢の観光客でごった返しになっていた。

「そうだ、せっかくだから野崎君にメール送ろうっと!」

 茜は散策の途中売店で買った飛騨牛の串焼きを携帯電話のデジタルカメラ機能で撮影し、その画像を添付ファイルとして先日軽井沢にて久しぶりに再会した野崎昌男宛にメールを送信した。

「よし、送信完了。」

 茜はメールを送信した後、近くにあるベンチに座って一休みした。

 (ふーーーーっ、ところで野崎君は今頃仕事してんのかな?)

 茜は空を見上げながら昌男の事をボンヤリと考えていた。

 (そう言えばあの時・・・・・・・・)

 軽井沢滞在中に遭遇したゴスロリ女子大生橘馨の命令により聖パウロカトリック教会にて無理矢理昌男とキスさせられそうになった時の事を思い出した。


 あの時野崎君の顔が目の前に来たのには本当にびっくりしたよ

 でも何でだろう?あの時の事を思い出せば思い出す程ドキドキ感が

 押さえ切れなくなるんだよね。

 本当に一体何なんだろう、この気持ち。

 まるで入江さんと一緒にいた時と同じ気持ち…

 ううん、そんなモンじゃない!

 もっと何ていうか…その…


 茜は仙台で出会った旅人『憧れの君』こと入江勝と同じかそれ以上に野崎昌男に対して淡い想いを強く抱く様になっていたが、ここでハッと我に返った。

「違う違う違ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーう!!!!!!私と野崎君とはそんな関係なんかじゃないんだってば!!!!!!!!!!」

 茜は興奮のあまり思わず大声を出してしまい、周囲から注目を浴びてしまった。

 (やややや、やばいっ!!!!!!!)

 ひどく赤面した茜はその場から逃げる様に去ってしまった。


 気を取り戻した茜はJR高山駅からバスで10分ほどの場所にある合掌造りの家が集まる『飛騨の里』 にて散策をしていた。すると背後から聞き慣れた声がした。

「おや、あんた宿で一緒だったオートバイ乗りのお嬢さんじゃないか。」

 声の主は『健輔じいさん』こと土橋健輔であった。


「健輔じいさん!偶然ね~」

 茜はすぐ様健輔の元へ駆け寄った。

「まさかここで会うとはね、健輔じいさんも今日は市内を歩き回ってるの?」

「ああ、もうこの辺は何度も来ているんだがな。しかしいつ来ても本当にいい所だな・・・ははははは。ところでお嬢さんは今日もオートバイであちこち走っているのかな?」

「ううん、今日はバイク置いてきたの。それにしても何度も来ているだなんて健輔じいさんって

 高山周辺には随分と詳しいのね。それじゃあどこかお勧めの場所ある?是非ご一緒させて!!!」

「えっ?!一緒にって・・・・・僕は別に構わないんだけど・・・・・ただ・・・・・」

「ん?ナニナニ?健輔じいさん、一体何かあったの?」

 茜が健輔にどこか穴場を案内してくれとせがんだ途端、健輔の様子がおかしくなった。


 その時であった。

「おーーーーーーい、健輔じいさん!!!ゴメンゴメン、待たせちゃって。いや~、どうしても仕事柄こういう場所に来るとカメラ熱が増してきちゃってさ、ついつい何度も何度もシャッターを押しちゃったんだよ。本当に待たせてゴメン!」

 今回の道中にて、茜にとって『天敵』とも言えるフリーフォトグラファーの森沢堅太郎が息を切らしながら健輔の元へ駆け寄ってきたのである。

「けっ、堅太郎君!!!!!」

 健輔は茜と堅太郎との間でまた一悶着が起こるのではないかと冷や冷やしていた。

 (ゲッ!!!!!健輔じいさんったらこいつと一緒だったんだ!!!!!!)

 それまで機嫌良く健輔と会話をしていた茜の顔色が見る見るうちに青ざめた。

「おや、これはこれは・・・・・・・」

 堅太郎本人も茜の顔を見た途端一瞬引きつったがすぐに平静さを取り戻し、例によって茜の事を害虫でも見るような目つきで見た上、鼻で嘲笑する様な冷ややかな態度で挨拶をしてきたので、

「いいえ、私もまさかこんな所であなた”様”に会うとは”これっぽっちも”思いませんでしたわ、オ~ホホホホホホホ!!!!!!!」

 と、茜も茜で慇懃無礼な態度で堅太郎に『心のこもった挨拶』をした。

「ま、まぁ2人ともそんなに気張らないで仲良く、仲良く、ね・・・・・・・・」

 互いを睨み合う両者に挟まれた『健輔じいさん』は1人オロオロするだけであった。

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