第八章 健輔じいさん ~出発の歌~ 1
「ちょっとさっきから何度も何度も言ってるでしょ?!スピードオーバーなんて絶対してないって!」
「いいや、してたね。15キロオーバーだ。」
「全くわっかんない人ね・・・・・いつ、どこで、誰が一体15キロオーバーしたって言うの!」
「とにかくこれは道路交通法に違反しているんだから無駄な抵抗はやめるんだ。」
短大時代の同級生である野崎昌男と偶然再会に、共に過ごした軽井沢の『グリーンケイブルズDGH』を後にした茜は道中出会ったライダー達に走る事を勧められた 乗鞍スカイライン を走行中速度オーバーで白バイ警官に捕まってしまったのである。
「あ~あ、全くもうついていないったらありゃしない!まさかこんな所で交通違反になるなんてっ!」
茜はブツブツ文句を言いながらも違反は違反という事で点数を付けられてしまった。ふと周りを見渡すと、乗鞍スカイラインから望める 乗鞍岳 の美しい光景に茜は目を奪われた。
「うわーーー・・・・・・・・・綺麗・・・・・・」
夕陽で真っ赤に染まる大空の下にそびえ立つ乗鞍岳の光景をしばらく眺め、
「さて、そろそろ出発しなくちゃ。」
と、茜は再び愛車カワサキ250TRのエンジンをかけて出発した。
「こんばんはー、今日からお世話になりまーす・・・・・・・」
今回の目的地である岐阜県飛騨高山方面へ到着した茜は、早速宿泊先の『飛騨DGH』にてチェックインを行った。
「ようこそ飛騨DGHへ、もう9月も終わりだし夕方になると急に冷えてくるでしょ?」
「ええ、そうですね・・・・・」
北海道の知床半島にある『知床旅人庵DGH』のペアレントと同様、いかにも世話好きそうな風貌をした飛騨DGHのペアレントと茜が受付にて雑談を交わしている最中、1人の老人が通りかかった。
「やあ健輔じいさん、お風呂の湯加減丁度良かったかい?」
と、ペアレントが言うと
「いや~、やっぱり一番風呂は最高だよ。」
と、『健輔じいさん』と呼称された老紳士が答えた。
「そうそう、さっき森沢君も到着して今談話室で健輔じいさんの事待ってるよ。」
「おお、そう言えば堅太郎君もここに来るってこの前電話で言っておったな。それじゃあ後で
立ち寄ってくよ。」
老紳士はそう言うと受付を後にした。
「おっとゴメンゴメン、つい長話をしちゃって。それじゃあ大橋さん、今から部屋案内するから。」
「あ、ハイ分かりました。」
茜は自分の荷物を抱えながら客室へと案内された。




