第七章 フローレンスカヲル 10
「どうもお世話になりました。」
翌朝、茜と昌男は馨が寝ている間にさっさとチェックアウトを済ませてしまった。昨日の取材の件といい口論の件といい、2人共これ以上馨とは関わりたくなかったのである。
「それじゃあ2人共気をつけてね。」
吉田夫妻が玄関前で2人を見送った。
「そうそう、吉田さんさ、あんまり無理しないで下さいよ。俺だってそうしょちゅうここに来れないんですから。」
と、昌男が言うと
「大丈夫大丈夫!久々に野崎君に会えて僕もすっかり元気を取り戻したよ。ところでさ・・・・」
雄也ペアレントが昌男の耳元へ
「大橋さん、彼女の事ちゃんと君が守ってやれよ!」
と、こっそり囁いた。
「ハ、ハァ??????吉田さんいい加減にして下さいよ!!!!!!!
俺とあいつとは何の関係もないんですってば!!!!!!!!!」
昌男はひどく赤面しながら大声で言った。
「ねぇ野崎君、一体どうしたの?」
何も知らない茜が昌男に聞いて来た。
「い、いや別に・・・・・・・。
そんじゃあそろそろ出発します。又機会があったら伺いますんで。」
「じゃあ事故に遭わない様に気をつけるんだよ。」
「はい、分かりました。」
2人は各々の愛車のエンジンをかけた。
「ねぇ、あなた。」
麗子夫人が雄也ペアレントに話しかけた。
「何だい?」
「若いって本当にいいわよね。私ね、野崎君達を見ててあなたと出会った時の事を思い出したの。私達もかつて全国あちこちと旅しててDGHという存在を知って、そしてあなたに出会って結婚して、今度は自分達が旅人を迎える側になりたいっていう思いで力を合わせてグリーンケイブルズDGHを始めたって事を。」
「あはは・・・・そうだったな。さ~てと、部屋の掃除でもするかなっと・・・・・」
吉田夫妻は茜達を見送った後、中に戻った。そして夫妻の話を偶然聞いてしまった茜は
あの2人って周囲の反対を押し切ってまで
夢を実現したって言うけど・・・・・・・
それにあのゴスロリ女子大生も色々と
悩んでいるみたいだった
それに比べて私は一体何をしているんだろう?
果たして私が本当にやりたい事って何?
バイクの旅以上に本当に心の底から
やりたい事って何なの?
茜自身これから先の事について何かを感じながら愛車カワサキ250TRに跨って次の目的地へと向かった。そして昌男も明日から現実の社会生活に戻るべくホンダCBR1000RRに跨って埼玉県川口市内にあるアパートへと戻って行った。




