第七章 フローレンスカヲル 8
「ぶっわははははははははは!ひ、ひ、ひぃ~~~~~~~~!!!!!ゴ、ゴキ?あはははははは!!!!!野崎君らしいや!!!!」
「ね、ねえそれ本当なの?!キャハハハハハハハハ!!!!!!ご、ごめんね。で・・・・・でもおっかしーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
軽井沢の『グリーンケイブルズDGH』に来てから2日目の夜のティータイムにて、昼間聖パウロカトリック教会にて昌男の身に起こった出来事を聞いたペアレントの吉田夫妻があまりの可笑しさに笑いをこらえる事ができなかった。
「ちょっと待って下さいよ、2人共そんなに笑う事ぁないでしょ!!!!!!」
昌男はムキになっていたが、それでも雄也ペアレントも麗子夫人もお腹を抱えて大笑いしていた。
「そうそう、思い出したわ!野崎君がうちでヘルパーをしていた時に来たお客様ですっごく可愛い女の子がいたのよ。野崎君ったらね、その彼女に一目惚れしたのよね。」
麗子夫人がそう言いだすと、
「あーーーーーーーーーーーーーーっっっ!!!!!!!ちょっと麗子さん!俺の古傷に触らないで下さいよっっっっ!!!!!!!!」
と昌男が慌てふためいた。しかしネタとして興味を持った茜は
「えっ?ちょっと何ソレ?野崎君がその彼女とどうしたんですかっ?????」
と身を乗り出してニヤニヤしながら言った。
「えっとね・・・・・・・・」
麗子夫人は楽しそうに昌男の身に降りかかった過去の”事件”について語り出した。
何でも当時グリーンケイブルズDGHのヘルパーをしていた昌男が客の若い女性に一目惚れしたのはいいものの、夜のティータイム時に大嫌いなゴキブリが出没してしまい、全員が逃げまとう中、事もあろうにその女性の背中にゴキブリが飛びついて来たのである。
「それで?その後一体どうなったんですか?」
茜は目を輝かせながら麗子に聞いた。
「もう大変どころの騒ぎじゃなかったわよ。ホラ、野崎君はこの通りゴキブリが大の苦手じゃない?だけどヘルパーをしている以上はどうしたって退治しなきゃならないでしょ?だから仕方なく彼が片方の手に殺虫剤、そしてもう片方の手に丸めた新聞紙を握って格闘に試みたのよ。だけど・・・・・・だけどね・・・・・・ププププププ・・・・・・・ご、ごめん野崎君、悪く思わないでね。キャーーーーーーーーーーハハハハハハハハハハ!!!!!!!」
麗子夫人は当時の出来事を思い出し、それでも必死で笑いをこらえていたがとうとう我慢できずに噴き出してしまったのである。
「れ、麗子さん!!!!!何もそこまで笑わなくたって!!!!!!!!!」
昌男は1人で必死になっていたが、今度は雄也ペアレントが口を開いた。
「い、いや実はさ、野崎君も野崎君でゴキ相手に何とか頑張ったと思うよ。その後野崎君がやっとの思い出ゴキに向かって殺虫剤噴射した後新聞紙で思いっ切りバシッって叩いたんだよ。ところがほんのわずか一瞬の隙に奴に逃げられちゃってさ、結局その女の子の背中に殺虫剤がひっかかってベタベタになった挙句思いっきり頭を新聞紙で叩いちゃったモンだから彼女すっごく怒っちゃってさ、結局野崎君のひと夏の恋はこれにておしまいって事になった訳なんだ。」
雄也ペアレントがそう言うと、茜は
(野崎君ってゴキがダメなのによくひとり人暮らしなんてできるよな・・・・・・)
と話を聞きながら思っていたのである。
「あのさ、もうこの辺でそろそろ話題変えましょうよ。せっかく久々に吉田さん達に再会できたのにゴキの話なんてもう嫌っすよ!!!!!」
昌男がそう言うと
「そうね・・・・・・そうそう!馨さん、次回の新作はいつも以上に気合入っているみたいだわね。」
麗子夫人が馨に向かって言った。
「まあいつも以上に真剣に取り組みたくなるのも無理ないわ。だって馨さんにとって学生生活最後の執筆になってしまうんだし、来年大学を卒業して就職したら忙しくなってそれこそ執筆活動どころじゃなくなるものね。」
麗子夫人が『大学を卒業して就職をしたら』と言った途端、馨が口を開いた。
「私・・・・・就職活動全然していないの。それどころかこれから先本格的に小説家を目指したいって気持ちもあって、正直な話色々と今後の進路について考えている所なのよ。」
馨の突拍子もない発言を聞いた吉田夫妻に茜、昌男の4人は唖然とした。




