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バイク乗り2004 ~ある女性の全国放浪記~  作者: r_SS
第七章 フローレンスカヲル
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第七章 フローレンスカヲル 4

 「うわぁ・・・・・・・どうしちゃったんだよコレ?有り得ねぇよ・・・・・・・」

 昌男は”新生”グリーンケイブルズDGHを目の当たりにして、あまりの変貌振りに開いた口が塞がらなかった。かつてごく普通のログハウスだったそこは、色とりどりの花に埋め尽くされたイングリッシュ風ガーデンにパステルカラーに塗りたくられた壁面、そしてリボンと花で埋め尽くされたウェルカムボードなど、まるで昔の少女漫画に出てくる様な洋館風の宿に様変わりしていた。

「ね、ねぇ野崎君?何だか随分と少女趣味の強い宿だよ・・・・・・ね?」

 当初期待していた茜でさえ、さすがの少女趣味的な外観に驚くばかりであった。

「あ、ああ。昔はこんなんじゃなかったんだけど、本当に一体どうしちゃったって言うんだよ。まぁとりあえず中に入ろうや。」

 昌男は茜を連れてグリーンケイブルズDGHの玄関チャイムを鳴らした。


「こんちわ~、野崎っス。」

 昌男がそう言うと、すぐに玄関が開いた。

「あっらーーーーーーーーーーーー!!!!!野崎君、待ってたのよ!本当に久しぶりよね、元気にしてた?」

 と、全身 ピンクハウス ファッションに身を包んだ女性がやって来た。

「れ、麗子さん?!ど・・・・・ども、お久しぶりです・・・・・・・」

 昌男はグリーンケイブルズDGHのペアレント夫人のファッションを見て

 (麗子さん、相変わらず強烈な趣味してるよな。それどころか酷くなってないか?)

 と引きつり笑いをしながら思った。そして間もなくペアレント本人もやって来た。

「おお、野崎君!待ってたんだよーーーーーーー!!!!!!いや~、相変わらずだね。君と最後に合ったのっていつだっけ?まぁそんな事はどうでもいいや、さぁさぁとにかく中に入って入って!!!!!!!!」

 ペアレントはすぐに昌男を茜を中に入れたが、話に聞いていた通りペアレントの表情はどことなくやつれ気味の様子であった。


 吉田雄也 麗子夫妻

 今から10年以上前にお互い旅先で出会って結婚し、

 夫である雄也の前々からの夢であった

 DGHの経営の為に意を決して脱サラし、

 軽井沢 地区に移住して『グリーンケイブルズDGH』を

 開業する事となった。

 開業当時はごく普通のログハウスで、ペンション形式の

 宿が多い土地柄の中であっても一人旅の男性に

 人気があり、昌男自身も学生時代にヘルパーを

 務めていた時期もあったが、年月の経過と共に建物の

 老朽が進み、改築する事となったのである。


「ところで吉田さん、何でこんなにコッテコテな少女趣味風にしちゃったんスか?」

 昌男は雄也ペアレントにこっそりと訊ねた。

「いや・・・・・その・・・・・実はさ、ここを建て直す時にかかった費用の殆どがカミさんの実家が負担してくれたんだよ。そうなると僕だって立場上カミさんに頭が上がらなくなるだろ?しかもあのカミさんの事だ。あいつがどういう趣味をしているか君も知っているだろ?もうここぞとばかりに自分の意見ばっかり主張して来ちゃってさ、本当に大変なんだよ・・・・・・・」

 雄也ペアレントは屋内のあちこちに飾られたドライフラワーのリースやヨーロッパ直輸入のレースをふんだんに使ったカーテンを見つめながら、溜息混じりに言った。

 (吉田さんが体調崩した理由、な~んとなく分かった気がする・・・・・・)

 昌男は雄也ペアレントの事を心底哀れに思った。


「そうそう!野崎君、連れの彼女だけど気をつけた方がいいぞ。」

 突然雄也ペアレントが言い出した。

「へっ?吉田さん、それは又どうして?」

「いや・・・・・ウチのカミさんさ、ここに女性客が来ると必ず”勧誘”して来るからさ。」

「か、勧誘!?麗子さん何か変な宗教にでもハマってるんスか?」

 昌男が怪訝そうな顔を浮かべたその時であった。

「ねぇあなた、大橋茜さんって言ったわよね?」

 麗子夫人が茜に声をかけて来た。

「はい、そうですけど・・・・・・」

「実はコレ、ウチで出しているイベントなんだけど・・・・・」

 麗子夫人はスタッフルームから1枚のホワイトボードを取り出した。

 (きききき、来たーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!)

 雄也ペアレントは”始まった”と言わんばかりにガタガタ震えながら麗子の様子を伺っていた。

「あの・・・・・コレ、一体何なんですか?」

 茜は麗子夫人が取り出したホワイトボードに記されているイベント名を読みながら驚愕した。


 『ウェディングドレスを着て記念撮影』

 『手作りジャム実習体験』

 『ドライフラワーのブーケ作り』

 『バラの花びら入り”ローズマリーの湯”体験』


 一体どこからこの様な企画が生まれたのかは定かではないが、とにかく麗子夫人はこれらのツアーを茜へ強引に勧めて来たのだ。

「ねっねっ、茜さんも是非参加するといいわよ!ここに来る女の子達から大好評得ているんだから!」

「い、いや私・・・そんな・・・・・・」

 (冗談じゃないよ!何がウェディングドレスを着て記念撮影だぁ?カンベンしてよ全く!!!!)

 茜もたじたじ状態であった。

 (これが”勧誘”ねぇ・・・・あはははは・・・・・・・・)

 昌男は遠巻きにしながら眺めていたが、麗子夫人が気づいたのか、突然今度は昌男が標的にされた。

「そうだわ!野崎君、あなたも『ローズマリーの湯』どうかしら?男の子でも希望する人多いのよ!!」

 麗子夫人はニコニコしながら昌男に近づいてきた。

「お、俺ですかっ!?冗談よして下さいよーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」

 (うへ~~~~ッ!!!一体このオバハン何考えてるんだよっ!!!!!!)

 昌男は麗子夫人の誘いを頑なに拒否をした。そして後ろから雄也ペアレントも

 (やめておけ・・・・・”絶対に”やめておけ!!!!!!!)

 と顔で合図を送っていた。


「あ、あのさっ。2人共長い距離バイクで走ってきた事だし疲れているだろうから、とりあえず部屋に入ってゆっくり休んだ方がいいよ。そんでもって落ち着いたら風呂にでも入ったらどうだい?そうそう、お嬢さんは初めてなんだよね。ウチの庭にさ、ドラム缶風呂があるんだよ。」

 雄也ペアレントが”ドラム缶風呂”と言った途端、麗子夫人が顔をしかめた。

「ええっ、嫌だ!あなた、あんなモノさっさと撤去してって言ったはずよ。せっかく改築して洋館風にしたって言うのに、あの変なモノのお陰でイメージ台無しじゃない!」

「おいおい、何言ってんだ!アレはなぁ、ここを開業して以来の名物なんだぞ!一体あのドラム缶風呂のお陰でどれだけリピーターのお客さんができたのか忘れてしまったのかい?言っておくけどな、いくらお前が何と言おうと俺が死守してきたドラム缶風呂の件にだけは【絶対に】譲らないからなっ!!!!!」


 日頃麗子夫人の尻に敷かれている雄也ペアレントも、さすがに開業以来ずっと守り続けてきたドラム缶風呂の件については絶対に譲らないとキッパリ言い放ち、茜と昌男を客室に案内した。

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