第七章 フローレンスカヲル 1
秋田県内にある某宿にて、アルバイト従業員永井純平によって騙された挙句数日間軟禁生活を強いられるも、親切な地元住民によって無事に救出された茜はその後、彼女を救出したトラック運転手の知り合いが経営する修理工場にてパンクしたカワサキ250TRのタイヤ交換をしてもらい、無事に愛車を復旧させる事ができた。更に今後の為を考えて純平から受けた屈辱を警察に通報した。しかし証拠不十分の為に訴えたところでどうにもならず、更に事が事だけあって下手に大騒ぎをすると茜自身の立場が悪くなる事が容易に想像できたので、結局のところ泣き寝入りをせざるを得なかった。
しかし秋田から新潟、長野へと南下して行く内に茜自身も自分自身が受けた被害と悔しさを忘れてしまい、そのまま気ままな放浪を続けていた。そして9月も半ばを過ぎた頃、茜は群馬県内にある草津温泉街 に来ていた。
実は草津まで移動する間に、かつて勤務していた会社の元同僚から茜の携帯電話へ久しぶりにメールが来て、リストラ後殆どの人が再就職や結婚、留学など各々の道に向かって新たな出発をしている、との事だっただった。
元同僚からのメールを読んだ茜は、それぞれの道で頑張っている元同僚達のことを考えると自分は未だ無職のまま放浪の旅を続けており、かと言っていつまでもこんな生活を送る訳にも行かないしで、これから先果たして自分は一体どうすればいいんだろう?と一瞬考えたが、それでもまだ旅を続けたいという気持ちの方がはるかに強かった。それに何しろ今まで28年間の自分の人生の中で長期間空き放題できる時間が持てた事に関して大きな喜びを感じ、今が楽しくて仕方がなかったのである。
「ふーーーっ、気持ちよかった!そろそろ出発しなくっちゃ!」
温泉から上がった茜はとっとと着替えを済ませ、次の目的地へ向かうべく草津温泉街を後にした。
「あーっ、美味しい!最近涼しくなってきたから温かい飲み物が美味しく感じるっ。」
草津から国道146号線に入り、途中で立ち寄ったパーキングエリアの休憩場にて茜は自動販売機のホットココアをすすりながら寛いでいた。
すると遠くからジロジロと茜の様子を伺っている1人の男性が現れた。
(あれ?あそこにいる女の人、もしかして・・・・・・)
男性は恐る恐る茜に近づいて声を掛けた。
「あ、あの君・・・・・。もしかして大橋茜さんだよ、ね?」
「はい、そうですけど・・・・・あ、あれ!?」
茜は男性の顔を見ると、その人が誰なのかがすぐに分かった。
「あなた・・・・・野崎君でしょ!!!!!!」
思いがけない場所で学生時代の同級生、野崎昌男との7年振りの再会を果たした茜であった。




