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第六章 密室 2

「俺さ、遠野で茜おねえちゃんと別れた後行く先々で今後の事考えてたんだ

 このまま引きこもりみたいな生活送る訳にもいかないし、やっぱり高校はちゃんと出ておきたいって気持ちが元々あったし。かと言って親とはケンカ別れみたいな形のままでいたし、どうしても家に帰りづらくてさ。その事を一昨日宿で同室だった年配のおじさんに相談したんだ。そしたらよ、そのおじさんの子供が昔すんげぇヤンキーだったみたいで、とにかく毎日外で暴力事件を起こすわ何やらでしょっちゅう学校や警察に呼び出されてて、気が休まる日がなかったって言ってたっけ。

 そんでもってそのおじさん自身もヤンキーの息子が何か起こす度に怒鳴りつけたり手をあげてしまう時もあったらしいんだけど、やっぱり子供の事がすごく心配だったって言うんだ。だから俺の相談事に対しても”何があろうとご両親は君の事を心の底から大事に思っているから1回家に電話してみなさい”って言ったんだ。そんでもって仕方なく電話したんだけどよ・・・・・・事もあろうに親父が電話に出ちまってよ、マジでビビッたよ!!!!!!!!!!!」


 靖は興奮した様子で言い続けた。

「だけどよ、俺も無言のまま受話器を下ろす訳にも行かないから、とりあえず”親父、俺だけど”って言ったんだよ。そしたら親父の奴、何て言ったと思う?」

 靖が茜に聞いてみると、茜は”さあ?”って顔をした。

「”元気か?父さんも母さんもお前が帰ってくるのを待っているから、気が済むまで度をしたら必ず家に戻って来るんだぞ”って静かな声で言われてよ、俺すっげぇ拍子抜けしちゃったんだよ!だってさ、絶対にヤバイ位にキレてると思ってたしよ、すごい剣幕で怒鳴られるんじゃあないかと思って内心ビクビクしてたんだぜ。あん時ゃ本当に参ったよ・・・・・・・。でもさ、電話から親父の後ろで母ちゃんが泣いている声が聞こえてきちゃってさ、あの時俺、本当にせつなくなったんだよな・・・・・・・・。」


 茜が反応した。

「お母さんが?それでその後靖君お母さんとも何か話をしたの?」

「ううん、そのまま受話器を置いたよ。ただその日の晩ずっと考えててさ、俺が今こうしてフラフラしていられるのもちゃんと帰る家があって、迎えてくれる家族がいるからこそなんだと思うようになってきたんだ。俺が怪我して退院してきた日に大喧嘩したって言うのにな。

 だからよ、もうこれ以上家族に心配かけさせたくないし俺自身も十分に旅して来たしさ、それにまさかこんな所で茜おねえちゃんと再会できるとは思わなかったからマジでびっくりしたよ。ここまで来たらもう思い残す事はないや。まぁ帰るとなるとチャリで苫小牧まで下ってフェリーに乗って大洗からまたチャリで・・・・って形になるから時間がかかるけど、今となっては早く家に帰って今後の進路に向けて動き出したい気持ちでいっぱいなんだ。」

 靖は目を輝かせながら言った。

「そうなんだ・・・・・・、靖君偉いよ、本当に成長したね。そんじゃあ私がご褒美にソフトクリームもう1個ごちそうするよ!」

「マジ?やったーーーーーーーーーーーー!!!!!ゴチになりやす!!!!!!!」

 この時靖はラベンダーソフトを既に3つ平らげていたが、元々大食いの為か喜んで4個目のソフトクリームに突入した。


「そうだ、話変わるけどさ。」

 靖は口の周りにソフトクリームをつけながら言った。

「ん?何かあったの?」

「いや・・・・・・・、実は青森でバイトしていた時に仲間から変な噂を聞いたんだよ。」

 靖はバイト仲間から聞いた噂話について話した。

「何だか最近東北、それも秋田や青森方面の旅人宿に妙な奴が出没しているみたいでよ、えぇっと・・・・・・そいつの名前何だったっけ。確か”じゅん”何とかって聞いたけどゴメン、ちょっと忘れちゃった!ただそいつさ、見た目は渋谷とかにいそうな今時っぽくて人によってはちょっとコワそうな印象なんだけど偉く人当たりが良くて、それも女に対しては親切に声を掛けるみたいなんだって。だけどその後いきなり襲い掛かってきてひどい時には”ヤリ逃げ”されたりする事があるみたいで、しかも被害者の方も訴えるにもそんな事警察に訴えるのに躊躇するから結局泣き寝入りをせざるを得ないんだって。おまけにそいつ全国各地の旅人宿に出没するみたいで被害者も相当の数だから知っている奴らは皆その”じゅん何とか”って野郎に対して警戒心を持っているって話なんだ。

 まぁこんなの単なる旅人から旅人へ・・・・・・と伝わった噂話だから実際にそんな奴本当にいるかどうかなんて分かりゃあしないから大丈夫だとは思うけど、茜おねえちゃんもこれから先北海道を出て南下する際に北東北方面は必ず通るから、そいつの被害に遭わない為にも一応忠告しておくわ。」


 靖から”じゅん何とか”という人物の噂話を聞いた茜であったが、単なるデマだろうと全く真に受けていなかった。

「おっと!もう4時近いな。話し込んでいるとつい時間が経つのを忘れちゃうよね。私はこれからもうちょっと走ったところにあるライダーハウスに泊まるんだけど、靖君はどうするの?」

「俺は近くにある宿に連泊中。じゃあここで又お別れだけど、後で又メール入れとくよ。それじゃあな!!!!!!!!」

「靖君こそ途中で熊に襲われて食われないようにねーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

 茜と靖はそれぞれバイクと自転車に跨り、それぞれの目的地へと向かった。

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