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バイク乗り2004 ~ある女性の全国放浪記~  作者: r_SS
第五章 繊細な彼女
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第五章 繊細な彼女 11

 「さぁーーーーーーーーーー、ミーティングだよミーティング!!!!!!!!今日も歌って踊って盛り上がるぞ、イェーーーーーーーーーーーーーーーーイ!!!!!」

 館内中に響き渡るミーティング開催のアナウンスが流れると宿泊客は一斉に大広間に移動した。しかし陽子だけは乗り気でなく、部屋で1人ゆっくりと過ごすつもりであった。そんな陽子の姿を見た常連客と思われる同室の女性がミーティングへと誘ってきた。

 「あら、あなた具合でも悪いの?」

 「い、いえ別に・・・・・・」

 「そう、それじゃあそろそろミーティング始まるから一緒に行きましょうよ。」

 「え、でも私今日来たばかりで慣れていないから・・・」

 陽子は誘いを断ろうとしたが

 「そんなーーー!!!!初めてだからこそミーティングに出なきゃ勿体無いよ。大丈夫、私が一緒についてあげるから早く大広間に行こうよ、ねっ!!!!!」

 と半ば強制的な態度に圧倒されてしまい、結局ミ一緒について行かざると得なかった。


 「それじゃあ今日は昔懐かし『人として』を歌いまーす。途中僕が金八先生の真似をするので皆さんも是非一緒にやって下さいねーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

 この日は1980年代初頭に放映されたドラマ『3年B組金八先生Ⅱ』の主題歌で海援隊の『人として』 を主人公の坂本金八に扮した男性ヘルパーと共に歌う事となった。

 途中ヘルパーが幾度なく髪の毛をかき上げる真似をすると、宿泊客も面白がって真似をし、

 「おりゃ~、このバカチンが~!!!!!!!」

 と言うと皆大爆笑をしていた。ところが

 (嫌ーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!ちょっと何なのよこのバカ騒ぎ!!!!!明後日私の誕生日パーティをやるって言ってたけど、とてもじゃないけどこんな所に1秒足りとも居たくない!悪いけど私、明日すぐにでもここから出て行ってやるんだから!!!!)

 陽子は旅人庵の凄まじいバカ騒ぎっぷりに霹靂し、いい加減我慢の限界に達していた。しかし参加してしまった以上は途中で退出するのも気が引けるので皆の輪から外れて1人で大広間の隅っこで座る事にした。


 その間ミーティングは益々盛り上がりを増し、踊りのコーナーに入るとこれ又昔懐かしドリフターズの『8時だヨ 全員集合!』でやっていた『ヒゲダンス』が行われた。そしてーティングに誘った常連客の女性もすっかり自分の世界に入ってしまい、陽子の事などすっかり忘れてお構いなしの様子であった。

 (何なのあの人、誘っておいて完全に放ったらかしじゃないのよ!)

 陽子はふてくされながらミーティングが終わるのを待っていた。長いミーティングがやっと終わり、心身ともに疲れ果てた陽子は即効部屋に戻ろうとしたが、


 ドスン!!!!!!!

 

 反対側から歩いてきた人と思い切りぶつかってしまったのである。

 「あいたたたた・・・・・・・痛ったーーーーーーーーーーーーい!!!!!」

 陽子はぶつけてしまった頭を抱えていた。

 「ごめん!君大丈夫?」

 ぶつかった相手の男性が陽子の顔色を心配そうに伺っていた。

 「だ、大丈夫です。気にしないで下さい。」

 陽子は頭を抱えながらそう言って部屋へと戻ろうとしたが、大広間にて宿泊客が雑談で盛り上がっている様子が目に入り、黙って見つめていた。

 「何だか凄い盛り上がり様だよね・・・・」

 男性がつぶやいた。

 「さっきのミーティングの時もあまりにも派手に騒ぐから驚いたよ。僕あの時どうすればいいのか全然分からなくってさ。」

 男性が苦笑すると

 「私もなんです。実は今日ここが初めてで、来たときから何だかとんでもなく賑やかな宿だと思っていたんですけど、まさかここまで凄まじいとは思わなかったんです。」

 陽子もため息交じりに言った。

 「へぇ、君も初めてなんだ。僕もだよ。人にもよるけど、やっぱりいきなりテンション高いとなかなかついて行くのが難しいよね。」

 「それ、同感です!私もここに来てからまだ誰ともまともに会話できなくて、1人で浮いてて辛かったんです。けど私だけじゃなかったのね。」

 お互い初めて旅人庵に来たものの、なかなか馴染めずにいた者同士何か通じるものを感じたのか、大広間の近くにある居間に移動してしばらく会話をしていた。


 「やあ旅人さん達、皆大広間で賑わっているのにどうしたんだい?」

 と声を掛けられたのでふりむくと、旅人庵のペアレントが傍に立っていた。

 「君達初めて旅人庵に来たんだね。どうだい?ミーティングは楽しめたかね?」

 ペアレントが尋ねると

 「え、ええまぁ・・・・・・」

 と2人共口を濁した。

 「ハハハ、まぁ最初の内はびっくりするだろうけど、すぐに慣れるから大丈夫さ。ところで明日知床五湖までツアーを出すんだけど、良かったら2人共一緒に参加したらどうだい?」

 「ツアー!?」

 「ここの雰囲気に圧倒されているかもしれないけど、ツアーに参加すればどんなに人見知りする人でもすぐに溶け込めるから大丈夫だよ。」

 ペアレントは自信満々に言ったが、まだ2人共旅人庵に対する不安は取り除けていなかった。

 「けど自分みたいに1人で来た者にとっては参加しづらいんですけど・・・・・」

 男性が言った。

 「大丈夫大丈夫!参加者の殆どが1人で来た人達ばかりだから心配いらないって!!!」

 「うーん、どうしよう。明日特に予定入ってないし、とりあえず参加してみようかな?」

 「おお、参加してくれるんだね!!!!!もう1人のお嬢さんも参加するよね?」

 ペアレントが陽子に向かって言った。

 「わ、私!?」

 陽子はツアーに参加するどころか翌日チェックアウトするつもりでいたのだ。しかし

 「そう言えば君、さっきのミーティングで1人で隅っこに座ってたよね?実はチェックインの時から気になっていたんだけど、かなり人見知りをしている様子だったから心配していたんだ。だけど君みたいな人見知りが激しい人ほど実は旅人庵の空気に馴染みやすかったりするんだよ。まぁ無理にとは言わないけど、せっかくだからどうかね?」

 ペアレントに顔を覗き込まれる様に誘われると陽子も断れなくなってしまい、OKの返事を出してしまった。

 「よし、それじゃあ2人とも参加決定だな。あとで受付に申し込みしておいてね。」

 ペアレントは2人を誘った後その場を後にした。

 (あぁ、私のバカバカバカ!!!!!!!自ら墓穴を掘ってどうするのよ!)

 陽子は翌日のツアーの事を考えると憂鬱で仕方がなかった。

 「さあ皆さーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!!!消灯の時間ですよ。明日に備えて”良い子”は早く寝ましょうねーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

 大音量の消灯アナウンスが流れると先程まで雑談で盛り上がっていた宿泊客が次々と部屋に戻って行ったので陽子も自分の部屋へ戻って行った。

 「あっ!君名前何て言ったっけ・・・・・・・・」

 男性が陽子に声を掛けようとしたが当の本人は全く気づかずにさっさと自室へと戻ってしまった。そしてこの時こそが陽子と阿部悟との出会いの瞬間だったのだ。


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