第四章 イージーライダー 11
「うーーーーーーん!!!!気持ちいい!!!!」
昨晩熟睡した茜は早起きし、気持ちよく腕を伸ばしていた。
(そう言えば昨日和義さんが私のバイクを点検してたっていうからどんな感じなのかちょこっと見てこようっと。)
茜は駐輪場に置いてあるカワサキ250TRの周りをざっと見回した。すると曲がったブレーキレバー及びペダルといいハンドルといい何から何まで全てきちんと治ってあった。そして後ろには新たにテール・ボックスまで取り付けられてあった。昨日の転倒により散らばった荷物を見て和義が最低限必要なモノが入れるボックスを取り付けた方がいい、と判断したものであった。
(和義さん・・・・私の為にここまでしてくれたんだ。やっぱり昨夜祐子さんが言ってた通り本当に面倒見のいい人なんだな。)
茜の中で和義に対て抱いていた呆れた気持ちから感謝の気持ちへと変わって行った。
「おはよう!」
背後から和義の声がした。
「おはようございます、和義さん、これ・・・・・。」
「ああ、コイツね。まぁ大した事やってないけどこれで少しは今後の走行が楽になると思ったんだよ。あとボックスがあるだけでもまた転倒したりした時にでも少しは荷物の被害が軽くはなると思ってさ。」
「和義さん、本当にありがとうございます。バイクの事といい富沢ハウスに連れてってくれた事といい・・・・・・。」
茜は心から和義に感謝をしていた。
「いいっていいって、別に大した事した訳じゃないんだからさ。ところで俺は今日このまま真っ直ぐ札幌の自宅に戻るけど、茜さんはこれからどうするんだい?」
「特に決めてないけど・・・・・、そうだ!こうして出会ったのも何かの縁だから差し支えなければ和義さんのメールアドレス教えて!」
「おっ、いいよ。そんじゃ君のアドレスも俺の手帳に書いてくれよ。」
和義は手に持っていた手帳を茜に差し出そうとした、しかしうっかり手を滑らせて下に落としてしまったのである。
「いっけね!落としちゃった。」
落とした手帳の周りには中に入れておいたメモ帳やら名刺やら写真やらで散らばっていた。
「大丈夫?手伝いますよ。」
茜も散らばったモノを拾い上げるのを手伝ったその時、落ちてある1枚の写真が目に入った。どこかの宿で撮ったと思われるものであったが、その中には和義とほかの宿泊客が何人かいて、その宿泊客の中に仙台で出会った『憧れの君』こと入江勝がいたのである。
「和義さん、この写真一体いつ撮ったものなんですか?この中にいる人なんですけど、ご存知なんですか?!」
茜は写真の中の勝を指差して和義に聞いた。
「ああ、勝君のことか。先週十勝方面へツーリングに行った時に使った宿で一緒だったんだけど、彼と知り合いなの?」
「ええ、ちょっとね。それよりも今、入江さんがどの辺りにいるか分かります?」
茜は迫るようにして和義に聞いた。
「うーん、詳しくは知らないけど・・・・。そうだ、確か”来週は『知床旅人庵DGH』で4~5日程過ごす”って言ってたな。そんでもって今日がその1週間後だから今頃知床辺りにいるんじゃないの?」
和義がそう言うと茜は即座に知床に向かう準備をする為に部屋に戻ろうとした。
「ありがとう!私いまから知床に行って来る!」
茜は一旦部屋に戻って出発の準備をしに行った。
「えっ!!!!ちょっと待って!あの『旅人庵』に行くのかい??????あそこは・・・・あそこは別名・・・・・」
和義は茜が『知床旅人庵DGH』へ行くことに驚愕したが、茜の頭の中には既に入江勝との再会の事でいっぱいだった。
しばらくしてチェックアウトを済ませ、荷物も積んで250TRのエンジンをかけた。
「茜さーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!!!!ちょっと待って!コイツを、どうかコイツを一緒に持って行ってくれ!!!」
和義は出発しようとする茜の元へ駆けつけ、富沢ハウスの庭にある”宝の山”から漁って来た
工具類一式とオートバイメンテナンスマニュアルの本を茜に差し出した。
「コイツを君に渡すよ。これからの道中何かあった時に絶対に役に立つからどうかお守り代わりとして持っていてくれ。そんじゃここでお別れだけど、これからもいい旅しろよ!!!!」
「ありがとう、本当にありがとう!和義さんこそこれからもずーーーーーーーーっと『永遠のライダー』でいてね!!!!!!!!」
茜は和義から受け取った”プレゼント”をテール・ボックスの中に入れてすぐに富沢ハウスを後にした。
「途中でまたコケたりするなよーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
和義は茜を見送った後、自身も相棒のチョッパーマシンに跨って自宅のある札幌へと向かって行った。
そして
(全くあの子『旅人庵』に行くだなんてすごい勇気あるよ。あの宿の独特な雰囲気だけは俺はどうも肌に合わないんだよな・・・・・。)
とも思っていたのである。




