第四章 イージーライダー 9
「うわ~、茜さんも祐ちゃんも突っ込み激しいね。まあいいや、あの映画についてここまで深く語り合うの初めてだから。後半のフロリダにて娼婦2人と一緒に謝肉祭に出かけるシーン覚えてるかい?
あの時にキャプテン・アメリカが自分の最期の姿を想像するシーンがあるんだけどさ、茜さんはあのシーンを観てどう感じた?」
「わ、私!?う~ん、そうだな・・・・何て言えばいいんだろう?つまり、え~っとその、”現実は自由になるのは難しい”って事?」
茜は何て言えば良いのか言葉が見つからず、適当な回答をした。
「皆同じ事言うんだね、そう思うのも無理ないか。あの時『人の価値は棺を覆って初めて定まる』って言葉があってさ、キャプテン・アメリカ自身も茜さんと同じ事を考えていたんだと思う。だけど俺は2人がどんなに周囲から邪険に扱われても決して屈せずに彼らの自由、つまり解放という主張を最後まで貫き通したんだと思うんだ。いや、俺はそう思いたいんだ。でなきゃ今まで俺自身がやって来た事は一体どうなってしまうと言うんだ!!!!!」
和義はオーバーヒートして思わず大声を挙げてしまった。
「まあまあ和義さん、そう熱くならずに落ち着きなって!ホラ、茜さんもびっくりしているじゃない。全くもう・・・・・。」
祐子がなだめに入った。
「おっといけない。アハハハハハハ!そうだ、茜さん。俺もさ、家族がいる身で道内に移住したりこうして休日になると家族サービスよりもツーリング優先したりなどして、随分と気ままな事ばっかりやっててさ、いい年したオッサンが何やっているんだ、って思うだろ?俺だって実際周りから陰で馬鹿にされた目で見られているの分かっているし、バイクに金掛け過ぎてカミさんと離婚寸前にまで至った事もあるんだ。」
いきなり現実的な話になった。
「えぇ!?馬鹿にされるだなんて。和義さんの様な生き方って素晴らしいと思いますよ!」
「おお、そいつはありがとう。けどさ、話を元に戻すけど家族とか仕事とか年齢とか、自分が背負っている”環境”ってモノがあるにも関わらず俺は好き放題やっている。だから映画の内容もすごく共感できるんだ。
本当に自分のやりたい事や貫き通したい事をやり遂げるのを背負っている環境のせいにして諦めるのはどうかな?って思う訳よ。確かに振る舞いとかについては年相応ってモノはある。けど何かを、例えば俺の場合だったらバイクに全身全霊を掛ける事に対して年齢とかって関係あるのかな?この考えについて茜さんはどう思うかい?」
和義はまた茜に問いかけた。
「ええ・・・・・、私今までそんな事考えた事もなかったから。ただアレかな?旅に出る前に次の仕事を探すのにあちこち面接に行ってたけど、年齢が年齢だけあってなかなか雇ってくれる所がなかったり、それにこの年で今更事務職以外の仕事なんて無理だから諦めてるし。あとはやっぱり自宅から通える所じゃないと難しいかなと思ったり・・・・。やっぱり理想と現実は違うって事?これれが和義さんの言うところの”背負っている環境”って事かな?」
茜の回答に対して和義は言った。
「だーーーーーーーーかーーーーーーーーらーーーーーーー!!!!!君もそうだけど、どうして皆年齢だとか場所だとか言い訳するんだい?そんじゃあ聞くけどさ、世の中全ての会社が君の年齢を理由にして不採用にしたって言うのかい?それに場所だって自宅から通える所じゃないと君の生命の危険に関わる程難しいって言うのかい?!」
「そんな和義さん!何でそこまで大げさに考えるんですか?それにそんなに突っ込まれると私だって返答に困りますよ~!!!!」
(もうこの人何なのよ、さっきから馬鹿笑いしたと思ったらいきなり熱弁振るうしでもう何が何だか訳分からないよーーーーーーーーー!!!!!)
茜は喜怒哀楽の激しすぎる和義の態度に閉口するばかりであった。
「まあいいや。とにかく茜さん、何事にも背負っている環境に囚われる必要もなければ言い訳にもならないって事だけは言っておく。現に君の目の前にいる俺がいい見本だしな!アーーーーーーーーーーーハハハハハハハハハハハ!!!!」
「ハ、ハァ・・・・・・・・。」
和義が又豪快に笑い出すと茜は顔を引きつらせて苦笑した。
「和義さん。まだ私の質問に答えてないでしょ?」
先程から黙って聞いていた祐子が口を開いた。
「えーっとゴメン、祐ちゃん俺に何か質問したっけ?」
「もう和義さんったら!ちゃんと人の話を聞いてよね!!!!」
祐子は和義の背中をバシッと思い切り叩いた。
「キャプテン・アメリカが唱える解放としての『自由』とアメリカ社会が唱える『自由』との違いは一体何なのか?って言ったじゃないのよ。」
「おっ、そうだった。うーん、これも俺個人の見解なんだけどさ、『競争としての自由』って事かな?利益の競争、収入面での競争、能力の競争など色々な意味での競争がある訳だ。そんでもってアメリカは日本と同じ資本主義社会で競争の自由がある。ただそれが裏目に出ると”自分が勝つためには何をしても構わない”という考えも出てくる。
ちょっと無理矢理こじつけてしまうかもしれないけど、映画の中で”解放”という競争にワイアットとビリーに負けてしまった世間が”勝ちたい”という理由から彼ら2人をアメリカ社会から抹消させる事によって自分たちなりの勝利を得ようと思って冷ややかな態度を取っていたんじゃないかな?って思うんだ。これで答えになったかい、祐ちゃん?」
「へぇ、和義さんにしては今回はかなり真面目な事言うのね。見直しちゃった。」
祐子がからかい混じりに言うと、突如和義が祐子に抱きついてわきの下をくすぐり出したのである。
「コラコラ!俺は普段から真面目だっつーの!こいつめ、お仕置きしてやる~!!!!」
「キャーーーーーーーーー!!!!くすぐったい!やめて、やめてったら和義さん!!!!
ひ、ひ~っひひひひひっ、くすぐったーーーーーーーーーい!!!!」
じゃれ合う2人を目の当たりにした茜は目を丸くしてびっくりした。
(嘘でしょ?!和義さんって奥さんも子供もいるのに他の女の人に手を出す人なの?ちょっと信じらんなーーーーーーーーーーい!!!)
「祐子さん、ちょっとこっちに来て!」
「ちょ、ちょっと茜さん!一体どうしたのよ?」
茜はいきなり祐子の腕をつかんで庭から離れた場所に連れて行った。




