第四章 イージーライダー 8
「ゴクゴクゴク・・・・・・ぷはーーーーーーーーっ!うぃ~っ、ウマイ!やっぱりビールはサッポロクラシックだよな!!!」
和義は富沢ハウスに向かう途中購入してきたサッポロクラシックを美味しそうに飲んでいた。
この日の客は茜と和義だけであった。そして今、茜・和義・祐子の3人が庭で焚き火を囲みながら宴が繰り広げられていた。
「それにしても茜さん、俺も酒は好きだけどさ、君って俺以上によく飲むよねぇ。今飲んでいるのだって既に5本目だぜ!」
この時茜は既に サッポロクラシック を1人で5本飲んでいたのである。
「やっだーーーーーーーー!こんなのまだまだ序の口!だって今日は朝早く礼文島を出て、それから稚内からバイクでここまで来たのよ。それに途中和義さんからアレコレとシゴキを受けるしさ。この位飲んだってバチ当たらないって!それにしても今日はよく動いた分ビールがすっごく美味しい!!!!!!!」
茜は再び缶ビールを飲み、とうとう5本目まで完全に飲み干してしまったのである。
「おいおい、”シゴキ”だなんて人聞きの悪い。ところでさっきビデオ観たんだよね?どうだった?すっごく感動したでしょ!!!!!」
早速和義は茜に『イージー☆ライダー』の感想を求めてきた。しかし茜の口から意外な答えが返って来たのである。
「ああ、あれ?すっごく納得行かなかった!だって何で最後の最後で主人公達があんなにひどい仕打ちを受けなきゃいけないの?」
「ほほう、納得行かなかったか。それは又どうして?」
和義は納得行かない理由を尋ねた。
「だって彼らは別に人に迷惑をかけている訳じゃないでしょ?私だって今こうして1人旅をしているけど、今まで邪険に扱われた事なんて1度もなかったのよ。それなのにキャプテン・アメリカとビリーは何であそこまで周囲から拒絶されなければいけなかったのか分からないの!」
茜は酔ったせいもあり、物語の中で主人公のキャプテン・アメリカことワイアットと相棒のビリーが自由という名のアメリカ社会から拒絶の目で見られるという現実に心底納得が行かなかったのである。
「そんじゃ今度は俺の考えを言っていいかな?」
和義は『自分なりのイージー☆ライダー論』を語り出した。
「確かに茜さんの解釈は間違ってないだろうし、今までも同じ事言ってきた奴らは数多くいる。だけど俺はこういう風に思うんだ。”あの2人は最後まで『自由』に生き抜いた”ってね。」
「自由に?それって一体どういう意味?」
茜は和義のほうへ身を乗り出して聞いた。そして祐子も興味深々に2人の会話を聞いていた。
「これはあくまでも俺個人の見解なんだけどさ、世間がワイアット達の事を快く受け入れないのってさ、別の見方をすると”羨望の眼差し”だったんじゃないかなって思うんだ。要はさ、本当なら自分達だって世間体とかしがらみから解放されて気ままに好きな事をしたいんだけど、現実問題として自分のしたい事の為に周りを犠牲にする勇気ってなかなかないじゃん?だから大半の人々は背負っているモノの為に己の欲望を押さえつけてしまうんだよ。
だけど2人は”解放”という名の自由を手に入れて気ままに旅に出てしまう。当然そんな彼らを目の当たりにした周囲は己の現実と比較してやり切れなくなってしまうって訳よ。」
和義は更に話を続けた。
「じゃあやり切れなくなってしまった人々はどうなってしまうと思う?やりきれない気持ちを
消す為に羨ましいと思う相手、つまりキャプテン・アメリカとビリーの存在を葬ってしまおうという行為に出るって事になるんだ。」
途中で茜が口を挟んだ。
「ごめん!何だか話が難しくなってきちゃった。和義さん、もう少し分かりやすく説明して頂戴。」
「おっと、ごめんよ。うーん、つまりそうだな・・・・。日本人的に言えば『出る杭は打たれる』ってところかな?”自由の国”と称しているアメリカであっても、それはワイアット達が求める”解放”としての自由ではないって事だと思うよ。」
和義も酔いが回ってきたのか、昼間以上に語りに熱が入って来た。
「へぇ、そんじゃどうして和義さんは”最後まで『自由』に生き抜いた”って解釈したの?」
茜が聞くと
「私も知りたい!あとキャプテン・アメリカ側の『解放としての自由』とアメリカ社会側の『自由』の違いに関する和義さんなりの解釈も聞かせて!」
と祐子も便乗してきた。




