第四章 イージーライダー 5
「茜さん、コイツが俺の相棒!」
駐輪場に着くなり和義が自分のマシンを茜に見せた。
(うっ!!!!!!)
その『相棒』を見た途端、あまりの凄まじい改造ぶりに茜は絶句した。
ハーレーダビットソン社ソフテイルFXST系の90年代式エヴォリューションをキャプテン・アメリカ風 に改造したモノであるが、その改造具合が尋常ではなかった。
まず本体だけで180万円以上かかり、次に3段シートにマスタング・タンクの星条旗カラーにペイント依頼で20万以上、そして背もたれのシーシーバーに チョッパーハンドル、 フイッシュテールマフラーにフロント・フォーク 等外観で軽く60万から70万円を掛けていた。更にピストンやキャブレター等エンジン類にもお金を掛け、これらを全てトータルするとかなりの額になっていた。
「どう、スゴイでしょ?けどコレだけじゃまだ満足だとは言えないんだよな。もう俺コイツの為なら心中したって構やしないぜ!!!!!!」
和義はまるで我が子の如くキャプテン・アメリカ仕立てのマシンを可愛がっていたが、何も知らない茜からすると
(何コレ、まるでトラック野郎じゃない・・・・・。)
程度にしか思えなかったのである。
「さて、そろそろ行くべ。」
和義がエンジンをかけたので茜もすぐ自分の250TRのエンジンをかけようとしたが、どういう訳かなかなかエンジンがかからなかったのである。
「あれ?ねぇ和義さんどうしよう。エンジンがかからない!」
助けを求められた和義が
「ん?どうした、ちょっと一旦離れてくれる?俺が見てやるから。」
と言って即座に250TRのチェックをした。
「ええっと・・・・・とりあえずセルは何とか回っているみたいだ。点火プラグチェックした方がいいな。けどバッテリーがやられている可能性もあるからな・・・んん?????何だこりゃ!こいつはひでーな・・・・・・・。」
茜のマシンを点検するなり和義が呆れ顔で言った。
「あのさー、君さ。このマシンのメンテを最後にやったの一体いつ?」
「メンテナンス?だってそういうのってガソリンスタントとかでやってくれるものでしょ?そりゃ洗車ぐらいはやっているけど、ただ礼文島にいた間あんまり乗る機会なかったから半月程放置してたかも。でもそれだってそんなに期間がある訳じゃないし大丈夫なんじゃないんですか?」
茜の言葉に和義は心底呆れてため息をついた。
「あのねぇ、確かにショップ等でも点検はやってくれるよ。けどさぁ、自分の相棒位自分で手入れできる様にしなきゃさ、いざと言う時に困っちゃうよ。ホラここ見てここ!点火プラグっていうんだけどさ、煤がすごいじゃん、これじゃあエンジンかからないのも無理ないよ。それにバッテリーだって放電しかかっているみたいだったしさ。あとチェーンも緩んできているし、他にもダメな所沢山あったよ。こんなんじゃさぁ、せっかく手に入れたマシンだってあっという間に台無しになっちゃうよ!」
「ええ、ハァ・・・・・・」
さっきまで愛車を自慢したのかと思ったら今度はいきなり説教を食らってしまい、茜は戸惑った。
「まぁいい。とにかく俺が臨時で治せる所は治してやるからさ、工具貸して!本体買ったときに一緒に車載工具が付いてたよね?」
「工具?ええっと・・・・ああ、何だかレンチだの何だのショップの人が言ってたものね。けどあんなの使うことないと思ってたし邪魔だったから自宅に置いて来ちゃったんですけど・・・・。」
今までメンテナンスの事など全く頭の中になかった茜は肝心の工具類を全て自宅に置いてきてしまったのである。
「ハァァァァァ???????置いて来ただと????ははは・・・・アハハハハハハハハ!!!!!!いや~、アンタ本当に面白い!今までこんなに面白い人間見たの初めてだ!!!!」
今度は突然笑い出した。全く持って喜怒哀楽の激しい男である。
「そんじゃ仕方ないから俺の工具あるし、そこで待っててよ。ちょちょいのちょいで治してやるからさ。」
和義は自分の工具を取り出して茜のカワサキ250TRのメンテナンスをした。
「よし完了!これでもうエンジンがかかると思うよ。あとガソリンの量もちょっとヤバかったから
まずは近場のスタンドまで走って行こう。」
茜がエンジンをかけてみると無事にかかったのですぐに2人は稚内を出発した。




