第三章 サイクル野郎 ~青年は荒野をめざす~ 14
「何なんだあんた!」
靖の父親が言った。
「大橋茜と申します。済みません、さっきの話全部聞いていました。お父さん、お母さん。せっかくいらして下さったのに申し訳ないのですがこのまま靖君に旅を続けさせてあげて下さい!」
茜は突拍子もない事を言い出した。
「何を言うんだ!赤の他人には関係ない事だ!!」
靖の父親が大声で怒鳴ったが茜も引かなかった。
「いいえ、赤の他人だからこそ分かる事だってあるので言わせてもらいます。
古村さん、あなたの息子さんは私があの時犯人グループに捕まって殺されそうになった時に命懸けで私の事を守ってくれたんです。息子さんが今までイジメに遭ってどんなに辛かったか親である貴方ならお解りですよね?今までの事息子さんは全て私に話してくれました。
貴方達や弟さんに暴力を振るっていた事について申し訳ないと思っている事も全て洗いざらい話してくれました。そんな息子さんがですよ、今まであらゆる事から背を向けてばかりだったのが前向きに生きようと必死で頑張っているんですよ!親ならばそんな息子さんの気持ちをどうして解ってあげられないんですか?!
あの事件の事でしたら全て私がいけないんです。あの時奴らの声を気にさえしなければこんな事にならなかったんです。だからお願いです、息子さんの意見を尊重してあげて下さい!!!」
茜は必死で靖の両親に訴えた。
「もういいよ、いいんだよ!全部俺がいけないんだ、元々こんな旅自分でも無理だと分かってたんだ!俺帰るからさ、もう何も言うなよ!」
さっきまで帰りたくないと言った靖が茜を制止した。しかし
「何言ってるの!靖君、あんたそれでいいの?あんた強くなりたいんだよね?今まであんたの事苦しめて来た奴らの事を見返してやりたいんでしょ?今ここで帰ったりしたら又今までと同じ事になっちゃうんだよ?ねぇ、逃げるの?又逃げちゃうの?!!!!!!」
茜は靖の両肩を持って揺さぶらせながら迫った。それは靖を見届けたらすぐに帰ろうとした自分自身に対する言い聞かせでもあった。自分もそうだった、リストラされて再就職先が見つからず毎日苦しい日々を過ごして来たが、たまたま立ち寄った本屋で読んだバイク雑誌がきっかけで今までの過去を清算したく、旅に出た。そして目の前にいる少年も過去を清算したくて旅に出ている。そんな似た者同士だからこそ靖にはどんな事があっても旅を続けてほしかったし茜自身も再び旅を続ける気力が沸いてきたのである。
「済みません、古村さん宜しいでしょうか?」
ペアレントが再び口を挟んできた。
「ごめんなさい、先程自分は息子さんに帰った方がいいと言いましたが自分も彼女、大橋さんと同意見です。あなた方が思ってらっしゃる以上に息子さんはしっかりされてますし、彼自身も今旅を通じて心身共に成長をしている時期なんです。それは彼がここに来てからずっと見て来た僕が保証します。ですからお2人共ここは黙って息子さんを見守ってあげましょうよ。」
ペアレントもやっと本音が言えた。
「な、何だと!他人事だと思って・・・・!!!!!」
靖の父親は無理矢理自分の息子の腕を掴んで連れ戻そうとしたが
「お父さん!何をされるんですか?」
今度はペアレントが止めに入った。




