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第一章 出発 1
2004年5月31日
この日は朝から晴天だった。そして埼玉県さいたま市浦和区内にある大橋家でもいつもの通り朝を迎えようとしたその矢先、玄関前からエンジンの音が鳴り響いた。
荷物も忘れ物ないしメットも被った。セルを回してと・・・エンジンかかった。さぁ、出発だ!
「行ってきまーーーーーーーーーーーーーす!!」
との声と同時に一気にタイヤを走らせた。
「茜!全くあの子ったらもう・・・・」
ため息をつく母奈美子に
「もうあいつは今日から娘でも何でもない!二度と家の敷居を跨らせないぞ!」
朝から怒鳴り声をあげる父敬一郎。そしてそんな光景を見ながら
(あーあ、全く情けないったらありゃしないよ。この先思いやられるわ・・・・)
と呆れ顔で黙々と朝食を取る妹の歩。
大橋茜 27歳、この日の為に購入した新品のオートバイで放浪の旅に出発した。