第三章 サイクル野郎 ~青年は荒野をめざす~ 9
「俺と・・・・・・同じ?」
「そう、そうなの!私も靖君と同じ様に仲間はずれにされた身なの!!!!」
茜は自分が旅に出た経緯を靖に話した。
「遠野に来てから皆には一度も話さなかったんだけど。私ね、旅に出る前は普通に会社勤めをしてたんっだけどさ、ある日突然会社の偉い人達に呼び出されて首切り宣告をされたんだよね。今までずっとずっと長い間働きつづけていたのに同じ会社の、同じ釜の飯を食った仲間から仲間はずれにされたの!それは本当にショックだった。」
茜は続けた。
「すぐに次の仕事を見つけようと必死で探したけど、そこでも“あんたなんていらないよ”ってずっと仲間はずれにされ続けてきた。それがずっと延々に続くから毎日が孤独で辛くて泣いてばかりだった。
だから靖君が今どれだけ傷ついて悲しいか凄く分かるし、ましてや軽蔑だなんてこれっぽっちも感じてない。だから・・・・・だからお願い、私と一緒に帰ろうよ!靖君は1人じゃないし、第一自転車で旅に出て強くなろうとする人が駄目な人間なんかじゃない!!!!!!」
茜はこみ上げて来るものを堪えながら靖を説得した。旅に出て以来気丈に振舞っていてもやはりリストラされた、という過去は辛いものであるし決して忘れ去る事は出来ないものである。
(この人がリストラ?俺と同じ仲間はずれ?とてもそんな風に見えないのに…。)
靖は今まで自分が見てきた茜の姿からは想像できない真実を聞き、驚きと戸惑いを感じていた。そして彼の中で茜に対する不信感が消えようとしていた。
(それに会って間もない人なのにここまで俺の事を心配してくれている。今まで信用できない奴らばかりだったけど、この人なら信用できるかもしれない…。)
「あのさ・・・名前何て言ったっけ?」
靖がボソボソ声で茜に問いかけた。
「大橋茜、茜でいいよ。」
「茜・・・・・さんか、いい名前だね。さっきは“あんた”とか言ってごめん。
悪口言ったあいつら2人は許せないけど、とりあえず俺帰るよ。」
「靖君!」
茜と靖はお互いに微笑み合い、『遠野ふるさとDGH』へ帰る事となった。




