第三章 サイクル野郎 ~青年は荒野をめざす~ 6
花巻を急いで出発し、集合時間よりだいぶ遅れて遠野へ到着した。
茜がDGHの方に目をやると皆既にバーベキューの準備に取り掛かっていた。
「おーーーーーーーーーーーい、遅くなってごめーーーーーーーーーーん!」
茜が叫ぶと
「何やってんだーーーーーーーーーーー、早くしないと肉なくなるぞーーーーー!」
と靖が手を振りながら茜に向かって叫んだ。
「えっ?やだ!私の分の肉取っておいてーーーーーーーーーーーーー!」
茜は更に急いでDGHへ向かって行った。
「ハァ?花巻で温泉入って遅刻だって?」
「うんうんそうなのよ、だって本当に気持ち良かったからつい時間忘れちゃって。」
「言い訳すんな~、とにかくそっちが温泉入っている間俺達が全部準備したんだから
後片付けは任せたよ・・・っと、肉が焼けたーーーー!いっただっきまぁーーーす!」
「ハイハイ分かったよ、全くもう・・・・」
夕食時のバーベキューにて、お互い『肉の取り合い』をしながら盛り上がっていた。
「それにしても靖君、アンタ本当によく食べるねぇ・・・。」
「だって俺、食べ盛りのお年頃だもん。皆こそあまり食べ過ぎると成人病になっちまうぜ~、ヒヒヒヒヒ。アッ!それ俺がキープしてた肉取るな~!」
相変わらず化け物染みた食欲の靖であった。しかも今回の夕食は何と、岩手県産の地酒まで用意されていたのである。
「キャーーーーーーーーー、私お酒だ~い好き!いっただきまーーーーーーーーす。」
目の前に並んだ地酒を茜は真っ先に手をつけた。それもそのはず、茜は自他共認める”超”酒豪であり、実は仙台滞在時にも仙台駅前のショッピング街にてあらゆる地酒を眺めては飲みたいと何度も思ったのだが『憧れの君』こと入江勝がいる手前、ずっと我慢していたのである。そして今目の前に大好きがお酒が出て来た為に今まで押さえつけていた食欲ならぬ”飲欲”が爆発してしまったのである。
DGH側も茜や靖の様な客がいると儲かるものも儲からなくなってしまうのでは
ないかと心配になってしまうのではないだろうか?
「さあさあもっと食うぞーーーーーーー!あっ、おっさん!そのデカい肉俺が貰ったから取るなよーーーーーーーーー!」
「おっ、”おっさん”?あはははは~、古村君冗談キツイねぇ・・・・」
先程から随分とテンションが高くなっている靖、同宿者の27歳自営業男性に向かって”おっさん”呼ばわりしたのだ。と言っても靖本人は冗談で言っただけであるが。
しかし、だ。
「おい、今の聞いたか?何だあのガキ、出会ってまだ間もないのに”おっさん”だと?あいつと比べたら確かに”おっさん”だけど、いくら何でも図に乗り過ぎなんじゃねぇの?」
「ああ、あいつね。俺もさっきから気になっていたんだけどさ、妙に馴れ馴れしいしタメ語使って来るしで偉く勘違いしてるよな・・・・」
靖と他の男性宿泊者2名の間に何やら険悪なムードが漂い始めていた。




