第三章 サイクル野郎 ~青年は荒野をめざす~ 4
(うーん、いい天気!とても6月とは思えない!)
茜が住んでいる浦和の方だと今の時期はジメジメしていて不快指数が高くなるのだが、ここ遠野では湿度もあまり高くなく、とても爽やかな気候であった。
(昨日はとにかく急いで走ったけど、今日みたいに景色を楽しみながらゆっくり走るのもいいもんよね。)
茜の目の前には遠野の田園風景が広がっていた。
「おーーーーーーーーい・・・・・」
後ろから声がした、靖達自転車組であった。
「おーーーーーーーーーい!私の方が後に出たのに追い抜かれてどうするんだ~!
ホラホラ、若者!早くこっちに来ーーーーーーーーーーーーーーい!」
「ちっくしょ~!そっちはバイクでいいご身分だよ!俺達ゃチャリで
汗水垂らしながら必死で走ってるんだぜーーーーーーーーーーー」
「ホ~ホホホホホ!大人は金があるんだからいいんだよ、つべこべ言わずに早くせんかい!」
「くっそーーーーーーーー!単車に負けるなぁ~、行くぞぉぉぉぉぉ!」
茜と靖はお互いからかい合いながらそれぞれの足を走らせて目的地に向かった。
「あ~、今日は本当に動いた動いた、君の言う通りやっぱり動くと腹が減るよな、本当に」
「だから俺言ったじゃん。チャリって半端じゃなく体力使うから脂肪もかなり燃焼するしダイエットにもなるんだよ。ま、俺にはダイエットなんて無縁な話だけどさ」
と、靖が言うと
「そうだよな、けど古村君みたいに若けりゃいいけど俺なんて40代間近のオヤジだし、この前も会社の健診で体脂肪が多いって指摘されたばっかりなんだよね~。」
レンタルサイクルで一緒にカッパ淵まで行った30代後半の会社員男性が言った。この日の夕食はとても盛り上がっていた。自転車組は体力を使った分ご飯を沢山おかわりをしていた。一方バイク組の茜は・・・彼らに負けず劣らずしっかり食べていた。
「今日はいつもよりご飯を沢山炊いたからどんどんおかわりしてね。」
とペアレントが言った。昨晩の靖の食いっぷりを見て、今回はいつもの倍近くご飯を炊いておいたのである。尚、本日の夕食はペアレント夫妻も茜達と一緒に食卓を囲んでいた。そう、DGHでは宿泊者の人数があまりいない場合、ペアレントをはじめ従業員達も客と一緒に食卓を囲む事があるのだ。
茜が言った。
「私、今回が初めてのDGH宿泊なんですけど、いつもこんな感じなんですか?
ここの前に宿泊した宿でも話し相手こそいたのに、ここまで賑やかになる事はなかったんで驚いているんですよ。けど本当に楽しいから来て良かった~!」
少しずつではあるが茜もDGHの良さを感じ始めていたのである。
「全てが全てではないけど、初めてでここまで楽しめるのなら慣れるのも早いと思うよ。心から楽しいと感じる気持ちが大切だからね。」
とペアレントが優しくアドバイスをした。
「さて、そろそろ皆食べ終えたかな?じゃあ使った食器を重ねてカウンターまで持ってきて下さいねー。」
そう、DGHでは旅館等とは違って使った後の食器やベッドメイキング等も基本的にはセルフサービスとなっているのである。
「あ~、食った食った。ちょっとテレビでもつけようかなっと」
茜がDGH内の談話室にあるテレビをつけると臨時ニュースが流れた。
番組の途中ですが只今臨時ニュースが入りましたのでお伝え致します。
先程岩手県盛岡市内にあるコンビニエンスストアにて強盗グループが売上金を
奪って逃走中との情報が入っております。尚、盛岡市内周辺では2日前から
強盗グループによる窃盗事件が相次いでおり、地元警察では今回の事件も
同一犯によるものと見て現在も犯人達の行方を追っています。
「あら嫌だ、盛岡ってここから結構近いじゃん。コワー・・・・」
近くで起こった事件に一同テレビに釘付けとなるが、完全に他人事だと思っていた。




