第八章 健輔じいさん ~出発の歌~ 18
「さっきも談話室で森沢君と何か話し込んでいたみたいだけど、何かあったの?」
ペアレントが心配そうに尋ねた。
「あ、いえ。大丈夫ですよ。」
茜は健輔の体の容態について固く口止めをされていたので適当にさらっと流しておいた。
「そっか、それならいいんだけど。でもまぁ森沢君も大橋さんの大らかな性格を、本音では羨ましいと思ったんじゃないかな?何というかさ、無垢というか穢れがないというか。」
「そ、そうですか?」
「ああそうさ。人ってないものねだりをするって言うじゃないか。大橋さんだって誰かを羨ましいって思ったりするんじゃないのかい?」
「う、う~ん・・・・・・どうなんでしょうね?」
「ま、いずれ分かる時が来ると思うさ。本当に旅人宿みたいに人が沢山集まる場所って色んな面で教えられる事が多いからね。そうでも思わなきゃ客商売なんてやってらんないよ、アハハハハハハハハ!!!!!!」
ペアレントはそう言って大笑いした。
「それじゃペアレントさん、本当にお世話になりました。失礼します。」
茜はすぐにチェックアウトをしようとしたがペアレントに引き止められた。
「あれっ?大橋さんちょっと待ってよ!本当に行っちゃうの?」
ペアレントは名残惜しそうに言った。
「だって、やっぱり肩身狭いし・・・・・・・」
茜が申し訳なさそうに言うとペアレントはニヤリと笑った。
「そっか・・・・・、分かった。それじゃ無理には引き止めないよ。だけど勿体無いねぇ。今日は開所記念日で”振舞い酒”を沢山用意していたのに、残念だね~♪」
ペアレントの『振舞い酒』という一言に反応した茜は
「ペアレントさん、どうしてそれをもっと早く言ってくれないのよっ!」
と、即効で連泊する事にしたのだ。




