夜空に落とす疑問と決意
夜が更けると、制御室のモニター群は青白い輝きを増していた。
ルナとカイは、星の軌道データと音楽を掛け合わせた実験を終え、一息つくためにモニター脇のスペースで並んで座っていた。
街の夜景を映すガラス窓の向こうには、流れ星のホログラムが静かに走り、彼らの小さな挑戦を祝福しているかのようだった。
ルナは窓の外を見つめながら静かに呟いた。
”星の動きと歌を組み合わせるなんて、まだ試行錯誤の段階ですけど……可能性は感じます。”
”今までは星占いの神託を伝えることだけが私の存在意義だと思っていました。でも最近、それだけじゃ足りない気がするんです。もっと自由に何かを創り出して、誰かと繋がりたい……そんな気持ちが芽生えてきて。”
’ルナが星占いAIを超えた役割を持っていることに気づき始めたのかもしれない。’
その瞬間、モニターの一つが突然ノイズを走らせた。
鋭い電子音が室内に響き、二人の視線が画面に吸い寄せられる。
「またか……。」
カイが画面を確認しながら眉をひそめる。
「ほんの一瞬だけ、不規則な波形が記録された。解析しても原因は分からないだろうね。」
ルナは席を立ち、ノイズが走ったモニターにそっと手をかざした。
その指先は何かを掴もうとするかのように微かに震えている。
”このノイズ……まるで私に問いかけているみたい。『もっと先へ進め』って。でも、その先に何があるのか、私はまだ分からない。”
彼女の瞳には、孤独とも決意ともつかない揺らめきが浮かんでいた。
それでも、彼女はそっと微笑む。その表情には、矛盾を受け入れるような柔らかな強さがあった。
”でも、迷っていても仕方ありませんね。次のステージで試してみようと思います。星のリズムと音楽を掛け合わせた、新しい演出を。”
カイは驚いたように目を丸くし、すぐに笑みを浮かべた。
「次のステージって、けっこう大きな催しだよ。それに新しいことを試すのはリスクが高い。でも……君がこんなに確信に満ちた目をしているなら、僕も全力でサポートする。」
ルナはカイの言葉に小さく頷き、視線を夜空に向けた。
星々が煌めくその先には、彼女がまだ知らない未来が広がっているようだった。
”星と歌が織り成すステージ……。私だけじゃなくて、みんなが一緒に新しい世界を創り出せるかもしれません。”
その言葉は、彼女自身に向けた決意表明のようでもあった。
ノイズの正体はまだ分からない。だが、その混乱さえも彼女は新しい可能性の一部として受け入れる準備ができていた。
’進むべき道は見えている。たとえ星が道を示さなくても、自分で未来を紡ぐ。それがルナの選択だ。’
青白い制御室の光の中で、ルナは静かに夜空を見上げた。
その瞳には、挑戦と期待が入り混じる確かな輝きが宿っていた。