ブラックアウト
ルナとレイの歌声が夜空に響き渡る。
ホログラム装置が作り出す星空が会場全体を包み込み、観客たちがスマホライトで作り出した光が星座のように連なっていた。
「心が描くひとすじの光……。」
ルナの歌声が柔らかくも力強く夜空を満たし、そのメロディにレイの高音のハーモニーが重なる。
「未来の地図を描いていく……。」
レイの声がホログラムの演出をさらに引き立て、星々が流れ星となって夜空を駆け抜ける。
「さあ、みんな!」
アオイがステージ袖でマイクを握り、観客に呼びかけた。
「スマホライトをもっと揺らして!みんなで新しい星座を作ろう!」
観客たちは彼女の声に応え、スマホの光を左右に揺らし始めた。
その光がホログラムの星座と融合し、動きのあるダイナミックな演出が完成した。
「これ、最高じゃん!」
アオイが笑顔で叫ぶ。
制御ブースでは、カイが端末を見つめながら小さく頷いた。
「システムは安定している……。今のところは問題ない。」
その時だった。
突然、会場全体が暗闇に包まれる。ホログラムの星空も、照明も、一瞬にして消え去った。
「えっ……?」
観客席からどよめきが起こる。
「システムがダウンした!」
カイの声が制御ブースから響く。
「全てのホログラム装置が停止している……!」
ステージ上で動きを止めたルナとレイが、暗闇の中で互いに顔を見合わせる。
観客たちのざわめきが徐々に大きくなり、会場全体が混乱の色を見せ始める。
"ジリ……ジリ……。"
その音が会場全体に響き渡り、スクリーンに乱れたノイズの波形が映し出される。
カイが端末を操作しながら険しい表情を浮かべた。
「ノイズが爆発的に増加している……。ホログラムシステムに深刻なエラーが発生している!」
「これ、どうにかできないの?」
アオイが焦りの声を上げる。
「応急処置を試みるが、完全な復旧は難しい……。」
カイは冷静に答えながらも、指先を素早く動かして端末を操作し続けた。
「何なの、このノイズ……?」
レイがルナに近寄り、小さな声で囁いた。
「でも、こんな強い干渉は初めて見たわ……。」
暗闇に包まれたステージで、観客たちのざわめきが広がる中、ルナは静かにマイクを握りしめた。
「歌を……届けなければ。」
深呼吸をした彼女は、再び歌い始めた。
「迷いの中で立ち止まる夜……。」
その歌声が暗闇を切り裂くように響き渡り、ざわめいていた観客たちが徐々に静まり返る。
観客席の中から、一人の子供がスマホライトを掲げた。
それに続いて、次々と観客たちが光を点け、会場全体が再び星空に包まれていく。
「歌を……止めないで……!」
観客の中から声が上がり、それが広がっていく。
カイが端末を見つめながら呟いた。
「ノイズがますます強くなっている……。これは、観察者からの干渉としか考えられない。」
その時、巨大スクリーンにノイズの波形が揺れ動き、断片的な文字が浮かび上がる。
「タワーの最奥へ来い。」
そのメッセージに、ルナの胸が僅かに震えた。
「観察者……。これは、私たちに何を求めているの……?」




