歌い続ける決意
リハーサルが終わり、賑やかだった会場は徐々に静けさを取り戻していた。
スタッフたちが後片付けを進める中、ステージ上にはルナが一人立ち尽くしていた。
「私の歌で……本当に良かったのでしょうか。」
彼女は静かに夜空を模したホログラムを見上げた。
リハーサル中のノイズの影響――それが自分の存在に起因するのだと思うたび、胸の奥が重く沈む。
「まだ悩んでるの?」
優しい声が聞こえ、ルナの隣にレイが立っていた。
その瞳は温かく、ルナの心の中を見透かすようだった。
「私が原因でリハーサルに支障が出ました。」
ルナの声には、不安が滲んでいた。
「もし本番でも同じことが起きたら……。」
「それならどうするの?」
レイは微笑みながら問いかける。
「歌うのをやめるの?」
ルナはハッと顔を上げた。
「私は……。」
「失敗を恐れる気持ちは分かる。」
レイは穏やかな声で続けた。
「でも、感動って完璧から生まれるものじゃないんだよ。むしろ、不完全だからこそ、心に響くことだってある。」
「不完全……。」
その言葉は、正確さを追い求めてきたルナにとって新鮮な響きだった。
「そりゃそうだよ!」
明るい声が響き、アオイが軽快な足取りでステージに上がってきた。
「完璧なライブなんてつまんないじゃん!むしろ、ちょっとしたハプニングがあった方が記憶に残るんだから!」
「それは君の個人的な趣味だろう。」
ステージ袖からカイが現れた。
端末を手にした彼は静かに続けた。
「だが、彼女の歌には確かに価値がある。それを支えるために、僕たちがいる。」
「そうそう!」
アオイが拳を突き上げた。
「だからさ、ルナは思い切り歌えばいいの!」
その言葉に、ルナの胸の奥で小さな熱が灯った。
彼女は顔を上げ、夜空に浮かぶホログラムの星々を見つめた。
「ノイズがあっても、完璧でなくても……私の歌が誰かの心に触れるのなら、それには意味がある。」
その思いが、彼女の中で確かな形を持ち始めていた。
「ありがとう。」
ルナは振り返り、レイ、アオイ、カイを見つめながら微笑んだ。
「私、もう迷いません。本番で自分の歌を信じます。」
その言葉に、レイは満足そうに頷き、アオイが「よっしゃー!」と拳を突き上げる。
カイも微かに微笑みながら「君がそう決めたのなら、僕たちは全力でサポートする。」と端末を閉じた。
ステージを後にする間際、ルナはふと立ち止まった。ホログラムの波形が再び彼女の意識に浮かび上がる。
"ジリ……ジリ……。"
その音は、彼女に何かを問いかけているようだった。




