表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/40

観客とつくる星空

「ライトがまた揺れた……。」

カイの端末にはエラーメッセージが次々と表示されていた。


彼は眉をひそめながら、素早く対応を試みる。

「これ、やばいんじゃない?」

アオイがカイの肩越しに画面を覗き込む。


星座ホログラムが揺らぎ、時折消えかける様子に、彼女の顔にも緊張の色が浮かんだ。

「ライトシステムが不安定だ。」

カイが冷静に答える。


「調整には数分かかるが、今は歌を止めさせない方がいい。」

アオイは広場の方に目を向ける。

観客の中から「星が消えた?」というざわめきが聞こえ始めた。


「ルナ、どうするんだろう……。」

ふと、アオイの目が一瞬輝いた。


「待って!いいアイデアがある!」

彼女は勢いよくカイの肩を叩き、笑みを浮かべた。


カイはその手を振り払いつつ、「また即興か?」と冷ややかに聞き返す。


「そう、即興!」アオイは胸を張り、広場を指差した。

「観客に星空を作ってもらうの! スマホのライトを使えば、みんなでこのステージを救える!」


カイは一瞬考え込み、「成功する保証は?」と短く問う。


「ないよ!」

アオイは悪びれる様子もなく、笑みを浮かべて答えた。


「でも、何もしないで終わるより、何かやってみた方が絶対にいいじゃん!」


アオイはカイの反応を待たずに、マイクを手に取った。

「みんなー!」彼女の声が広場に響く。


「お願いがあるの!スマホを出して、ライトを点けてみて!」

観客たちは一瞬戸惑ったように顔を見合わせたが、アオイは続けた。


「君たちの力で、このステージを星空で埋め尽くして!ルナの歌を一緒に支えてほしいの!」

その明るく力強い声が観客に届いたのか、最前列の子供がスマホを掲げた。


それをきっかけに、次々と観客がスマホのライトを点け始める。

「いいぞ、みんな!」

アオイはステージの横で飛び跳ねながら指を指し、観客を煽るように叫んだ。


「もっと高く掲げて! 星座みたいに繋がっていくから!」

「ふぅ……。」


カイは短く息を吐き、端末を操作し始めた。

「連動プログラムを即席で作る。星座の形と光の動きを制御する。」


「さすが、頼れるじゃん!」

アオイがにっこり笑い、ウィンクを送る。


カイは顔を上げずに答えた。

「君が無茶を言わなければ、そもそもこんなことにはならなかった。」


「でも、その無茶が楽しいでしょ?」

アオイの声には自信と明るさが満ちている。


ステージの中央で歌を続けていたルナが、観客の手に掲げられた無数のスマホの光に気づいた。

その光が一つに繋がり、広場全体を星座のように彩っている。


「これは……。」

ルナの瞳が輝きを増す。星座のように連動する光の中で、彼女の歌声が夜空に響き渡る。


「ほら、すごいじゃん!」

アオイがカイに笑いかけた。


「観客が星空を作った! 私の最高のアイデアだね!」

「……成功だな。」


カイも小さく頷きながら、画面に映る安定したプログラムを確認する。


「ルナ!」


アオイは手を口に当てて叫ぶ。


「みんな、君の歌を待ってるよ!そのまま続けて!」


ステージ中央で、ルナは微笑みを浮かべながら再び歌い始めた。

彼女の声が、観客と一緒に作り上げた星空に溶け込む。


スマホの光が会場全体に広がり、夜空を一面の星で埋め尽くしていた。

観客たちは、それぞれの光を掲げながら、無言のうちにルナの歌を待っている。


ステージ中央のルナは、その光景に胸を打たれ、マイクを握る手に力を込めた。

「こんな星空が……観客と一緒に作れるなんて。」


彼女の目に映るのは、ただのホログラムでもスマホのライトでもなかった。

そこにあったのは、一つのつながりだった。


「私が止まるわけにはいかない。」


深呼吸を一つ。ルナは再び目を閉じ、心を込めて歌い始めた。


  「選び取る未来が、星々を導く。

  心が揺れるその瞬間、

  僕たちの声が新しい道を作る。」


ルナの声が夜空に響き渡ると、スマホライトが星座のように瞬き始める。

それはまるで、観客たちが彼女の歌声に応えるような光のダンスだった。


「すごい……!」


「星空と歌が一緒に動いてる!」


子供たちの歓声が上がり、カップルが微笑み合いながら手を握る。

年配の女性が目を潤ませているのをルナは見つけた。


その一つ一つの反応が、彼女の胸に温かい灯をともしていく。


「私の歌が……観客と一緒に星空を作っている。」


その実感が、彼女の不安を消し去り、歌声に力を与えた。


曲がクライマックスに近づくと、ホログラムの星座がスマホライトと連動して輝き出した。

星々が一列に並び、一つの流れ星となって夜空を駆け抜ける。


観客たちの間から驚きと感動の声が上がる。

「流れ星だ……!」

「なんてきれいなんだ……!」


その光景に、ルナは胸がいっぱいになるのを感じた。

彼女の歌が、観客とともに夜空を一つに繋げていた。


最後の一節を歌い上げた後、彼女は深く一礼し、静かにマイクを下ろした。

  

  「心に触れるその響きが、

  波紋となり広がっていく。」


一瞬の静寂。


会場全体が息を飲むような沈黙に包まれる。


そして次の瞬間、嵐のような拍手と歓声が広がった。

観客たちは立ち上がり、手を振り、口々に感動の言葉を口にしている。


「ありがとう!」

「素晴らしかった!」


その反応に、ルナの胸が熱くなる。

彼女の目に一瞬だけ光るものが宿ったが、それを拭うことなく、ただ観客に向けて深く一礼した。


「ありがとうございました。」


その声は、マイク越しに広場全体に静かに響き渡る。

ステージ袖でルナが戻ると、アオイが大きな笑顔で迎えた。


「見た?見た?最高のライブだったね!」


ルナは微笑みながら深々と頭を下げた。


「ありがとうございます。あなたたちがいなければ、私は歌い続けられませんでした。」


「おお、褒められちゃった。」


アオイが肩をすくめながら冗談めかして言う。


「でもまあ、ルナが頑張ったんだよ。」


その時、カイが静かに口を開いた。

「……ありがとう、アオイ。」


アオイは驚いたように目を丸くして振り返る。

「え、何それ、めずらしいじゃん!」


「即興で状況を変えたのは君のアイデアだ。」

カイは短く頷きながら続けた。


「結果的に、それが今回の成功を作った。感謝する。」


アオイは一瞬きょとんとした表情を見せたが、すぐに満面の笑みを浮かべた。

「ほら、そういうこと言えるじゃん!カイって、やっぱり素直になればいい男だよね~!」


「余計なことは言うな。」

カイは軽くため息をつきながら端末を閉じたが、その口元には微かな笑みが浮かんでいた。


観客の声がまだ広場に響いている中、ルナは一人静かに星空を見上げていた。

その瞳に映るのは、スマホライトで作られた観客たちの星空。


「模倣でも……誰かの心に触れることができる。」


その小さな確信が、彼女の胸に温かく宿っていた。


「次は、もっとたくさんの人に届けたい。」


その決意は、彼女にとって新しい旅の始まりを告げていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ