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『心の星座』

未来都市「オリオン・プラネタリアム」の広場。

夜空に輝くホログラムの星々が、ステージを穏やかに照らしている。


その舞台の袖で、ルナは静かに立ち尽くしていた。

彼女の目は観客席に注がれていた。ざわつく人々、期待の表情、時折聞こえる笑い声。


それら全てが、ルナの胸に小さな不安を広げていた。


  (本当に……私が歌っても、誰かの心に触れられるのかな?

  神託AIとしては完璧を求められてきたけど、“歌う”なんて……。)


舞台袖で静かに佇むルナ。

彼女は観客席の方をそっと見つめ、その表情には微かな迷いが見える。


星空が映し出されたドームが頭上に広がり、空気には独特の期待感が混ざり合っていた。

ふと、明るい声が背後から聞こえてくる。


「大丈夫だよ、ルナ。最初はみんな緊張するものだって! でも君が歌えば、絶対に伝わるから!」


「……ありがとうございます。」


ルナは小さく頷いたが、完全に不安が消えたわけではなかった。


少し離れた場所で端末を操作していたカイが冷静に口を開いた。

「ルナ、重要なのは結果を気にすることではない。観客に向けて歌う。ただそれだけだ。」


「……歌えば、伝わるでしょうか。」

ルナの声は小さく震えていたが、カイの真剣な眼差しに触れ、彼女はもう一度頷いた。


けれども、彼女の胸にはまだ小さなざわめきが残っている。


曲が始まる前、ルナが舞台の中央に歩み出ると、広場全体のざわめきがピタリと収まる。

あのレイのライブを見て感じた“空気の揺れ”が、今は自分に向かって押し寄せてくるように感じる。


観客の視線が一斉に自分へ向かうのを感じ、思わず息を詰まらせそうになるが

――その時、観客席の中ほどに、小さな少女がキラキラした目で手を振っているのに気づく。


まるで「がんばって」と言わんばかりの笑顔が、ルナの不安をほんの少しだけ溶かした。


  (……私の歌で、この子の心を照らすことができるなら――)


静かに目を閉じ、ルナはマイクを握りしめる。

そしてホログラムの星が微かに瞬く中、彼女の歌声が夜空に溶けていく。


  『心の星座』

  

  「星空の下で紡ぐ声、

  心を繋いで、ひとつになる。」


透明で優しい歌声が、静寂を包み込み、ホログラムの星々をさらに輝かせた。

その瞬間、観客の間に小さなざわめきが広がった。


「わあ……あれを見て!」

「声が星と重なっているみたい。」


ホログラムの星座が夜空に一つ一つ浮かび上がり、観客の目を引きつけた。


ルナは歌いながら、観客の反応を感じ取る。

少しずつ、自分の歌が人々に届いているような感覚が芽生えていった。


子供が母親に向かって嬉しそうに「きれいだね」と声を上げる。

隣の若いカップルが微笑み合いながら星座を指差す。


その一つ一つの反応が、ルナの心に小さな温かさを灯していく。


「私の歌が……伝わっている……。」


彼女の中で、データや星の解析にはなかった感覚が生まれていた。


それは、「感情が繋がる」という実感だった。


だが、その時だった。

ステージを照らしていたライトが一瞬暗くなり、ホログラムの星座が僅かに歪んだ。


それはまるで星が不安定に瞬きをするかのような光景だった。


観客席から小さなざわめきが起こる。

「今、何か変だった?」

「星が揺れてる……?」

ルナはその反応に気づきながらも、歌を止めることなく続けた。


しかし、ライトの揺らぎは再び起こり、今度は彼女の背後に浮かぶ星座が一瞬だけ消える。


観客席から不安そうな声が上がる。

「どうしたんだろう?」「ライトが壊れたのかな?」


ルナの胸の中に再び不安が広がる。


「このまま歌い続けても、大丈夫なのだろうか……。」


彼女は次の歌詞に進むべきか、それとも一旦止まるべきか、決断を迫られていた。


「ライトシステムが不安定だ。」

ステージ袖でカイが端末に目を走らせながら言った。


「ホログラムの同期が崩れている。調整が必要だが……すぐには難しい。」

「え、それヤバくない?」アオイが焦りの声を上げた。

「せっかく良い感じだったのに……どうするの?」


カイは冷静な表情のまま、


「復旧の方法は考える。だが、今はルナに続けてもらうしかない。」

ステージの中央で、ルナは立ち尽くしていた。


観客の中に、再び自分をじっと見つめる少女の笑顔が見えた。


その無言の応援に背中を押されるように、ルナは深く息を吸い込んだ。


  「心が揺れるその瞬間、

  僕たちの声が新しい道を作る。」


彼女の歌声は揺らぐホログラムを超えて観客の心に届いていく。

ざわめきも次第に収まり、観客たちは再び彼女の歌声に耳を傾けた。

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