情けの話 或いは恥の話
かなしい、下ネタです
文章の書き方の本を読んだ。
曰く「いい文章とは、私にしか書けないことを、皆がわかるように書くこと。私にしか書けないこと=『体験』。まず『辛かったこと』を書くといいでしょう」。
いい本だと思った。
その本に倣って、自分語りをしてみる。
国語の授業でのこと。詩の授業だった。
叙事詩、叙景詩、叙情詩、詩は3種類に分けられる。
この3種類がよく理解できるように、皆で「事」が含まれる熟語をあげてみましょう。
はい、「事実」。
そうですね。叙事詩は事実が書かれた詩です。
では「景」が含まれる熟語は?
そういう具合に授業は進んだ。
私は本が好きだった。
コドモの本で満足できず、オトナの本も読んだ。勿論知らない言葉がたくさん出てくる。それでも「オトナの本」を読める「賢い私」に、私はいたく満足した。
熟語は、漢字の意味を考えれば理解できると本で読んでいた。だから辞書もろくに引かずに、読みすすめた。
ある日私は「情事」という言葉を見つけた。情、心、情け、そういうものがある、何かを、オトナはするのだ。
情事、情事、情事。
きっと何かものすごくロマンチックで、とてつもなく心が動くようなことなのだろう。
その言葉の美しさに、私は感動した。
「情という漢字の入った熟語はなんでしょう?」
情事、と、小声で呟いた。
目が合った先生は、怪訝な顔をしていた。
聞こえなかったのかな…?
もう一度、さっきよりは大きな声で、情事、と囁いた。先生の顔が一瞬凍りついた。
「情熱、とか、心情、とかですね、
心のことを書いているのが、叙情詩です。」
先生はつつがなく授業を進めた。女の先生だった。
先生の表情がどうしても引っかかり、私はすぐ辞書を引いた。
情事、とは、性交、セックスのことだった。
恥ずかしかった。顔から火が出るとはこういうことなのかと、私は身を以て覚えた。あの女の先生の深い深い「情け」に、私は心から感謝した。
もの知らずを恥とは思わないが、ものを知らないことで、とてつもなく恥ずかしい思いをすることは、ある。そう思う。
せんせいありがとう…