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第64話 ダンジョン攻略無双

 Osaka-Second、第81層最奥。


「……えーっと」


 コンに手を引かれるまま、俺たちはダンジョンの最深部までやってきていた。

 目の前にあるのは、高さ10メートルはあろうかという巨大なゲート

 門を構成する分厚いコンクリートの扉には、巨大なかんぬきが掛けられ、ペンキで大きく【関係者以外立ち入り禁止】と書かれている。


「80階層以降、激増した地脈量から予想される出現モンスターのレベルを鑑み。

 多大な危険が予想されるという事で、協会の指示で封印しているんだ」


 ゲートの脇には、管理室らしき小部屋があり、そこに設置されたコンソールを操作する萌香。


 ヴンッ


 モニターに映し出されたのは、複数のグラフと表。

 地脈量の推移を表しているらしいグラフは何を表現しているのかよく分からないが、表にはたくさんのモンスターの名前が書かれている。


「これは……”第82階層で出現が予想されるモンスター”か?」


「ああ」


 キーボードを操作し、表を拡大する萌香。


「うおっ!?」


 各種ドラゴン、トロールにヴァンパイア。

 Sランクに分類される上位モンスターの名前がずらりと並ぶ。


「す、凄いな……」


 ユニ子さんのようにレベル200を超えるレジェンドクラスの探索者がパーティを組んで挑む最強クラスのモンスター。

 ネットやテレビで見たドキュメンタリー映像を思い出す。


「大阪の産業界が協賛し、穴守グループ主導で第82階層以深の探索が行われることになっているが……」


 萌香が開いたのはOsaka-Secondの探索予定表。

 モンスターの出現するダンジョンに潜る探索者は、事前に協会に探索予定を提出することが義務付けられている。

 登山届のようなものであり、もちろんうちのダンジョンでも提出している。


「どうやら穴守グループの提示した探索利権の分配割合をめぐり、最終交渉が難航しているらしくてな……探索開始がいつになるかはまだ未定だそうだ」


「なるほど……」


 第82階層以深の予定は真っ白で、何も入っていない。


「協会としては、本格的な探索前に出現するモンスターの危険度を判定したく……事前調査を行う意向ではあるのだが。

 ということでだ、コン。この先には行けないぞ?」


 端末から離れると、コンに向き直る萌香。


「む~! 地脈があふれそうなのにっ! 消費したいのじゃっ!」


 一時的に成長しているため、萌香より目線が高いコン。

 珍しくだだをこねる様子は可愛いが、その額には汗がにじんでいる。


「産業界の許可は貰っているが、肝心の穴守グループからの許可がないと……す、すまんなコン」


 おろおろと困った様子の萌香。


「そ、そうだ! 高い高いをしてやろう!

 よ、よいっしょっと……ぐえっ!?」


「にはっ?」


 自分よりはるかに恵体になったコンを持ち上げようとして、バランスを崩して転ぶ萌香。悲しいかな……おこちゃま体系の萌香には無理な相談である。


(むむぅ)


 コンのムズムズは何とかしてやりたいが、許可がないなら仕方がない。

 なんとか、上層部のモンスター退治で発散しよう……そうコンに提案しようとしたのだが。


 ピッ


 ズゴゴゴゴゴッ


「……えっ?」


 かすかな電子音が響いたかと思うと、巨大なかんぬきが動き、ロックされていたゲートが開いていく。


「い、いったい何が起きた?」


 慌てて端末にとりつく萌香。


「なっ、穴守グループCEO権限だと!?

 最上位権限で探索を許可? これは……」


「萌香、どういうことだ?」


 つまり自由に潜っていいという事だろうか?

 協会が事前調査を申請していたらしいから、篤さんが許可を出したとか?


「こんなタイミングで? いやしかし……」


 銅輔が偽造IDカードを基幹エレベーター内に落としたせいだとは、分かるはずもない俺たち。


「にはは! つまり裁可が降りたという事じゃな!

 行くぞトージ、突撃じゃ~!」


 たたたっ!


「あ、コン! 待て!」


 止める間もなく、開いた門に突撃していくコン。


(こちらには協会職員の萌香がいるし、まあいいか)


 そう考え、コンに続いてゲートの中に飛び込む俺。


「あ、おい! お前まで!」


「え、あ? 入っちゃっていいのかな?」

「にしし、最近覚えた言葉なんだけど……バズるチャンス! 礼奈ちゃん行くぜ!」


 目を輝かせた礼奈に手を引かれ、理沙もついてくる。


「おおおいっ!

 ああくそ、こうなったら仕方がない! ワタシも行く!」


 かくして、俺たち一行はOsaka-Secondの第82階層に突入することになった。



 ***  ***


「いけいけ~トージ! 蹂躙するのじゃっ!」


 すらりと長い手足をぶんぶんと振って、俺を応援してくれるコン。

 そのたびに、キラキラと地脈の粒子(?)が空中を舞う。


「じゅ、蹂躙しろっていったってなぁ……」


 グオオオオオオオンッ×3


 俺たちの前に立ち塞がっているのは3体のドラゴン。

 ブルーにグリーンにレッド。

 ご丁寧に通常種のドラゴンが3色そろい踏みである。


「トージ! ブレスが来るぞ! もう少し下がれっ!!」


 血相を変えて叫ぶ萌香だが、ここまでの上位モンスターを目にすること自体初めてだ。ゲームの中の出来事のようで、どこか現実感がない。


「……とりあえず牽制しとくか

 連射四式!」


 後ろに下がりながら、得物の和弓からレッドドラゴンに向けて矢を放つ。


 ビシュッ!


「むっ! 良いぞトージ!

 わらわのあしすと、享受するがよいっ!」


 俺が矢を放つと同時に、両手を広げるコン。


 ぱあああああっ


「……へっ?」


 レッドドラゴンに向けて突き進む矢が光に包まれ、そのまま3つに分裂する。


 ザクッ……ドッガアアアアアアアアアアアンッ


 分裂した矢は意思を持ったかのように3体のドラゴンに突き刺さり、大爆発を起こす。


「「「「えぇ……」」」」


 爆炎が晴れた後、そこには何も残っていなかった。


「わずか一射で……ドラゴン3体を屠った?

 トージお前、いったい何をしたのだっ?」


「……いや、それはコンに聞いてくれよ」


「さあ皆の衆、いざ参ろう更なる深淵へ! なのじゃ~♪」


「あ、こら! 一人で先に行くな!」


 ご機嫌なコンに引きずられるようにして、俺たちは奥へ奥へと進んでいくのだった。



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