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第29話 付喪神様の恋愛(?)提案

「むふふ、賑やかな村は楽しいのう!」


「だな!」


 昼ごはんのチキンカレーを食べてゴキゲンなコン。

 今日から本格的に営業を開始した倉稲村探索者ビジターセンター。

 受付の手伝いや、ダンジョン探索希望者の案内など朝から忙しい。


「もぐもぐ♪」


 午後の仕事に備え、俺たちは屋敷の居間で昼食を採っていた。


「なかなか自分たちのダンジョン探索を進める暇がないな」


「いまは村の基礎を固める段階じゃ。

 しばらくは内政に専念するべきじゃろう!」


「確かに」


 信長の○望みたいなことを言うコン。


「トージ、御代わり!」


「おう!」


 ちょっとだけ成長(彼女いわく”昇級”)したコンの食欲はますます旺盛で、俺の手料理を美味しそうに食べてくれるコンが可愛くて仕方がない。


「三奈の食堂も馳走じゃが、やはりトージの御膳が最高じゃな!」


「くっ……!」


 ほっぺにご飯を付けて満面の笑みを浮かべるコン。

 こんなの、可愛すぎるだろ!


「いくらでも食べていいぞ!」


 俺は特盛カレーをコンに振舞うのだった。



 ***  ***


「むふ~、善きかな~」


 たっぷりカレーをお腹に詰め込んだ後、居間のソファーでゴロゴロとくつろぐコン。


 団体客の来村予定は午後3時。

 まだ時間があるのでゲームでもするか(対戦ゲームにムキになるコンがまた可愛いのだ)と思っていたら、コンが俺の膝に乗って来た。


「にはは」


 キラキラの蒼い瞳が俺を見据える。

 やっぱり可愛すぎる……。


 お昼寝のおねだりだろうか。

 桜色の小さな唇が開き、紡がれた言葉は。


「して、どのおなごが本命なのじゃ?」


「ぶふうっ!?」


 とんでもない一言だった。


「げ、げほおっ! い、一体何を!?」


 俺がむせていると、コンはいかにもしてやったりと言わんばかりの表情を浮かべる。


「やはり、付き合いの長い理沙かの?

 少々おつむは残念じゃが、恵まれた健康的なぼでぃを持つゆえ、おぬしのきさきに最適じゃろう」


「あ、あのな」


 ノリノリなコンの言葉は続く。


「それとも、中年増ちゅうどしまではあるが美里か? 年齢も近いしの!

 いやいや、実は礼奈か! ヤツは少々若いが、かの前田利家と肩を並べるのも一興じゃ!」


「いい加減にしなさい」


 戦国の世でも少々ヤリ過ぎな大名様と同列に語らないでいただきたい。

 それに、美里さんに対して失礼だぞ?


 むにむに


 ニヤニヤしているコンのほっぺをこねくり回す。


「な、もしかしてわらわなのか?」


 更にとんでもないことを言いだすコン。

 そんなの、俺が捕まってしまうだろ?


「気持ちは嬉しいが、少々むつかしいの」


「……え?」


 コンの言葉にハッとする。


「現界したとはいえ、あくまでひと時の人の世じゃ。

 わらわの存在は一代限り。跡取りを残すことは出来ぬぞ?」


「コン……」


 なんでもない事のように言うコンだが、思わず寂しくなってしまう。

 あくまで人の姿は仮初め。

 やはりコンは付喪神様という事か……。


「にはは! 心配には及ばぬ!」


 俺が悲しそうな顔をしたからだろう。

 にぱっ、と音がしそうなほど満面の笑みを浮かべるコン。


「だんじょんある限りこの身は不滅ゆえ、トージの生を末永く憑いて見守ろうぞ!」


「お、おぉ」


 つまり、おしゃまでかわいい神様がずっと俺の人生と共にあるという事だ。


「というか、コン?」


 それは良いとして、彼女の誤解を解いておく必要がある。


「確かに理沙たちは魅力的な女の子だけど。

 俺はただ、故郷の人々を笑顔にしたいだけだぞ」


 コンと共に、倉稲村を日本一の街にする!

 まずはそれからだろう。


「な、なるほど!」


 少々格好つけすぎだが、俺の言葉にコンも感じ入ってくれたようだ。


「つまり、時間をかけて沢山の側室ハーレムを持ちたいという事じゃな!

 流石わらわのトージじゃ! 半端な器に納まる男じゃないのぅ!」


「ちっが~~~~~う!!」


 ぶんぶんと尻尾を振りながら豪快に勘違いするコンのおでこに、ぴしりとチョップを食らわせるのだった。



 キイイイイイッ


『……! ……!?』



「……うん?」


 その時、屋敷の外からけたたましいブレーキ音と人の声が聞こえて来た。


 なんだろう?

 思わずコンと顔を見合わせた瞬間。


「はーっはっはっはっは!! 不正に私腹を肥やす不肖の従兄弟よ!

 この銅輔が断罪に来てやったぞぉ!!」


 外から聞こえてきたのは、聞き覚えのある声だった。



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