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番外編短編・たまご

 最悪。こんな田舎だとは思ってもみなかった。


「おばあちゃん、このあたりにスタバないの?」

「ないね」

「ショックー」


 美琴は顔をしかめた。祖母によると、百均もスリコもない。サイゼリヤやコメダ珈琲もない。駅前にはマックがあるらしいが、他のファストフード店はないらしい。


「田舎暮らしでいいだろ。スローライフだ」

「いやあ」


 思わず変な声が出てしまう。


 美琴は小学六年生。両親が離婚したので、母にくっついて実家に帰った。祖母と三人で新しい生活になる。


 この春からは新しい学校生活。転校生という立場は、とても嫌。その上、こんな田舎暮らしなんて。百均もないとか、どうやって生活してるんだ? 美琴の顔は憂鬱だった。小学生と思えないぐらい暗い。


「なあ、美琴。ちょっと遊んできなよ。友達もできるかもしれない」

「そうかな? この辺り子供少ないでしょ?」

「いいから、スローライフだよ」

「私は都会で暮らしたい!」


 文句を言いつつも祖母と二人でいるのも退屈。ちょっと家の周辺を散歩する事にした。


 住宅地から県道沿いの道を歩く。コンビニはあるようでホッとするが、道は老人ばかり歩いてる。子供は全くいない。これはメディア騒がれている限界集落という場所では?


 そんな不安を持った時、変な自動販売機があるのに気づいた。一見、コインロッカーのような見た目だが、産みたての卵を売っているらしい。卵はちゃんとケースに入っていて、持ち歩いても割れないようだ。田舎でもその点はちゃんとしているらしい。


「ふうん。養鶏場の自動販売機なんだ」


 背後には養鶏場があるのも見えた。いかにも田舎。こんな卵の自動販売機は、都会では見た事がない。


「卵ねぇ……」


 卵の自動販売機の側には、黒板式の立て看板もあり、熱心に推されていた。手書きの文字からは、この卵が美味しい事が伝わってくる。推しへのラブレターのようだ。熱量がすごいが、なぜか近所の店も宣伝していた。


 近くに「コインレストラン・佳味」という店があり、そこで提供されているうどんや蕎麦にここの卵が合うらしい。その店も自動販売機の店というが。


「自動販売機の店? 謎すぎる……」


 全く想像できない。自動販売機でうどんや蕎麦が買えるってどういう事だ? 都会でもそんな店は見た事がない。急に好奇心が刺激されてきた。


 他の店を宣伝しているのも、笑ってしまう。都会ではそんな事している人は見たことない。田舎らしい。ゆるゆるだ。


「よし、卵買ってみるよか。それで、変な自動販売機の店も行ってみよう! まあ、田舎暮らしもいいんじゃない? ちょっとワクワクしてきたかも」


 もう美琴の顔は憂鬱ではなかった。


ご覧いただきありがとうございました。感想もありがとうございます。


お礼といってはなんですが、番外編短編を一編書き下ろしました。今は新作書いてます。夏前には連載したいなと思ってます。よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 1人だけど1人じゃない あったかいお話でした 
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