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番外編短編・フルーツサンド

 なぜか分からないが、登校拒否も引きこもりもすっかり辞めていた。もっとも、亜紀はSNSもクラスメイトと親しくなるのも全部辞めていたが。


 今日は放課後、コインレストラン・佳味へ行く予定だった。毎日のように放課後向かっている。すっかり常連だった。


 秋の夕暮れの県道沿いを歩く。春頃は深夜に来ていたが、こんな時間に行くのも悪くない。


 コインランドリーのような見た目の店だが、中は違う。昭和レトロば自動販売機が並ぶ空間だ。自動販売機はラーメンやうどん、ハンバーガーばどの食事が買える。機械の中はどうなっているのか疑問に思うほど、温かい食事がすぐに出てきた。


 今日は比較的客もいるようで、子供連れの母親も来ていた。子供はよっぽどこの自動販売機が珍しいのか、何度も「この機械の中に人がいるでしょ?」と母親に聞いていた。確かに子供の目線に立つと、自動販売機も不思議な機械に見えるだろう。


「あれ?」


 ただ、いつもと違う違和感も持った。新しい自動販売機が一台多く設置されていた。フルーツサンドの自動販売機のようで、地元農家のフルーツで作られたものらしい。シャインマスカット、イチゴ、芋、マロンクリームのフルーツサンドは見た目も綺麗だった。


 この昭和レトロな場所に、フルーツサンドの自動販売機は違和感がある。機体もSNS映えしそうなフルーツのイラストがデザインされ、可愛い。なんだかとっても令和風。


「まあ、いいか」


 亜紀はイチゴのフルーツサンドを買ってみた。ここでは令和風のそれは、ちょっと違和感があるが、次第に慣れてきた。どうせここは何でもアリな空間。令和の全てを否定されたら、亜紀だって追い出されるかもしれない。これは、これでアリ。


「お? 佐川?」


 ちょうど、自販機からフルーツサンドを取り出した時だった。同じクラスの古賀泉が客として来ているのに気づいた。チャラいイケメンでなんとなく苦手なのだが、ここの常連か?


 亜紀には心当たりがあった。あの来客ノートに「イズミン」という名前のコメントがよくあった事。そして、こもイズミンが亜紀のコメントにもよく返信してくれた事があった。


「もしかしてイズミン?」

「そーだよ。ここの焼きそばとかうどんとか美味しいよ!」


 弾けるような笑顔を見せられて、亜紀は困惑してしまうのだが。


「フルーツサンド、一緒に食べない? 二つ入ってるけど、ちょっと多いし?」

「そこ疑問系なんだ。受けるな。まあ、いいか」


 再び彼は笑顔を見せる。無邪気で何の裏表のない笑顔。


 一時は引きこもり、登校拒否までしていた亜紀。他人の目が怖く、人自体が好きじゃない。それでも今は、古賀泉について興味は湧いていた。


 店の窓からは、オレンジ色の光。子供と母親の声もする。


 そんな事はどうでも良くなるほど、目の前の彼が気になり始めていた。

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