番外編短編・ガチャ
放課後、クラスメイトの海子と一緒に「コインレストラン・佳味」へ向かっていた。
そんな優花は女子高生。ずっとぼっちだったが、海子とは仲良くなり、一緒に帰る事が多い。どちらといえば明るく、クラスでも目立つタイプの海子だが、何となく気が合う。特に食の好みがあう。
「ここのハンバーガー美味しいんだよね」
「そうそう。ファストフードっぽくなくて。ちょっとペタンとしたパンが好き」
「わっかるー」
二人がコインレストラン・佳味で売っているハンバーガーが特に好きだった。自動販売機で売られている手作りのハンバーガー。ファストフードのものと比べたら、別に本格的でもない。だが、そこが良い。
このレストランが自動販売機しかない無人レストラン。昭和レトロな自動販売機ばかりのせいか、無機質な感じがしない。古い自動販売機は、人の想いなども宿っているのかも。優花はそんな事を考えながら、ハンバーガーを齧る。美味しくはないが、こうして放課後に友達と一緒に食べるのはピッタリな味。ちゃんと温かいし、小さな箱に入っているのも可愛い。
「あれ? ここにガチャなんてあった?」
全部食べ終わってしまうと、海子は両替機の方を指差す。そこには見慣れないガチャがあった。昭和レトロデザインの缶バッジやチャームのガチャらしい。確かにデザイン的にはここにピッタリなガチャで見落としていた。
「へえ。ガチャ面白くない?」
「そっだねー。やってみるか」
二人でガチャを回す。偶然か二人ともメロンソーダ柄の缶バッジが出た。
「すっごい偶然」
「受けるね」
何がおかしいのか二人とも笑ってしまう。今はこんな二人の時間が楽しくて仕方がない。
思えば海子と友達になる確率だって低いのかもしれない。偶然同じ時代、国籍、県、学校、クラスが全部合わないと友達になれなかった。そう思うとちょっとした奇跡? この缶バッジだって奇跡?
「明日のここ来ない?」
「いいね!」
明日の約束もした。別にすごく美味しいハンバガーでもない。それでも二人で食べれば、何でも美味しい。
メロンソーダ柄の缶バッジは、二人ともカバンにつけた。二人の見た目は典型的な令和の女子高生だが、ここだけは昭和レトロ。二人だけの放課後の時期を表しているみたいだった。