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裏話と番外編  作者: まるみ
3/5

とある日の内緒のミッション

アーテル国にある、【くじら島】で暮らすフリントキャットの女の子、ルーシーとクラウディアは、あまり学校では親戚であるコーデリアと、島に移り住んだ時から、なぜか島に居ついているキヌネコの女の子の「しろねこちゃん」と呼ばれている子とは話さないようにしている。

コーデリア達は小学五年生で、自分達は小学四年生という立場で、話しかけづらいからという理由と、単純に苦手だからという理由がある。

しかし今回、ルーシーは、クラウディアとしろねこちゃんには内緒という事で、コーデリアを呼び出し、人気の無い所へ連れ出した。

一方、クラウディアの方も、ルーシーとコーデリアには内緒でしろねこちゃんを呼び出し、ルーシーとは別の場所にある人気の無い所へ連れてった。

そこでルーシーとクラウディアの双子の姉妹は、普段、話さない相手と、とある計画をたてた。

ルーシーはコーデリアに対し「クラウディアとあのしろねこちゃんと呼ばれている子には内緒にしといて」と告げ、クラウディアはクラウディアでしろねこちゃんに対し「ルーシーとコーデリアには内緒にしといて」と告げた。

「内緒にしといて」と言われた二人は、言われた通りにすると約束し、ちゃんと守った。

ルーシーとクラウディアは、双子であるがゆえに誕生日が一緒である。

お互い、相手の誕生日プレゼントを内緒で買いに行くために、二人にお願いしたのである。

『一緒にルージュ市のデパートへ行って、プレゼントになりそうな物を探して欲しい』それが双子が普段話さない二人を、わざわざ呼び出した理由という訳だ。




当日、四人はいつもとは違う二人組で、カルセドニーに船を出してもらい、秘密のミッション中だからと、やはりこの行動を誰にも喋るなと良い、約束させてから船を降りた。

帰宅は分からないから、その時はまた連絡すると言われ、カルセドニーは島へ帰された。

カルセドニーは、珍しい事もあるものだと思いながら、四人の行動にとやかく言わないで見送った。

別々の時間にデパートへ着いた四人は、デパート内で辺りを警戒しながら、商品を物色し始めた。

ルーシーは、水色や青が好きで、クラウディアは、ピンクや赤が好きである。

それからヒントを得て、クラウディアとしろねこちゃんの二人は水色の物を探し、ルーシーとコーデリアはピンクの物を探した。

普段話さない相手ではあるが、そこは女子同士である。

それなりに会話は弾んだ。




一階のメインホールで休憩していたクラウディアとしろねこちゃんは、ルーシーとコーデリアを見つけ、慌ててピアノの方に隠れた。

その時、どこからともなく低い声が聞こえてきた。

「君たち、こんなところで何をしてるんだ?ピアノのそばでかくれんぼか?それは困るから今すぐ止めて欲しいな」

しろねこちゃんがキョロキョロと辺りを見渡し、ようやく上を見上げた時、茶色と黒いモサモサした物が目に入り、思わず声を出して背にしていたピアノの方に転がってしまった。

クラウディアは「危ないじゃないの!なにやってんの?」と、そちらを見て、手を差しだし、しろねこちゃんを救出した。

それを見ていた茶色と黒いモサモサした物をぶら下げている者は、「大丈夫か?頭打ってないか?」と、心配してくれた。

しろねこちゃんは「ビックリして転がっただけで、大丈夫です」と告げると、クラウディアは、「おさわがせして、すいませんでした」と、相手に告げ、しろねこちゃんの手を取りその場を離れた。




「ここじゃ危険ね、カルセドニーの店の方に行きましよう」

「はい」

二人はそのまま手を繋ぎながら、カルセドニーの働く店の方に向かって歩いて行った。




一方、二人がいた事を知らないルーシーとコーデリアは、一階メインホールまで来た。

「少し休憩しよう?ほら、ライオンさんの演奏も丁度始まるみたい」

ルーシーが言うと、コーデリアは「分かった」と返事をした。

二人は辺りを見渡し、誰も知り合いがいない事を確認し、近くにあったベンチに座った。

その時、ベンチには忘れ物があったが、それが誰の物かルーシーには分かった。

「あれ、忘れ物…これ、クラウディアのだ、じゃあ、もしかしてここに来てるのかな?」

「どれ?あー、確かに見覚えがある、ねえ、そういえば、どうして私をここに連れて来たの?誕生日プレゼントなら、一人で探せるでしょ?」

「別に…深い意味はないけど、誰かいた方がアドバイスとか聞けて良いかなって」

「友達と探しても良かったんじゃないの?」

「…いつも、クラウディアと一緒だから、あまり友達とか作らないんだ、たいてい相手がいてくれるから」

「そう、まぁ良いけど」

「特定の相手と一緒にいるって、コーデリアだってそうじゃん、それに、コーデリアなら、私の気持ちもある程度理解してくれるかなって思って…」

「えっ?どの辺が?」

「服の色とか…いつもなんかこう、青い色の服とか着てるし、その…」

「あー、私、海の色とか好きなの、そういえばルーシーも青とか水色の服をよく着てるよね、私、それで見分けてるわ」

「よく言われる、あのねー、ちゃんと見分け方あるのよ?耳の所の毛の色…左右逆なの。」

「耳の…あぁ、なるほど」

フリントキャットの女性は、耳の辺りから目の上辺りの所に黒っぽい毛が生えている。

それ以外は、白い毛で覆われている為、それが、左耳に出たり右耳に出たりするのだ、どうやら彼女らは、そこで見分けるらしい。

「そういえば、カルセドニーの三つ子も一人を除いてそうだっけ、右耳が黒いのがーあー、忘れた」

一人、見分け方を覚え、カルセドニーの三つ子を思い出し、独り言を言うコーデリアにルーシーはボソッと呟いた。

「たまには、コーデリアと出かけるのも楽しいかも」

その時、ピアノの演奏がホールを包み、コーデリアはそちらに耳を傾けた。

「これ、クラウディアにどうやって返そう…」

ルーシーは一人、手に持っているクラウディアの忘れ物を見て呟いた。




一方、カルセドニーが働く店付近で、クラウディアは、持っていたバッグの中をあさっていた。

「あー、どうしよう、やっぱりないかも」

「さっき、慌ててベンチから動いたから、その時じゃないでしょうか?」

「たぶん」

「探しに戻りますか?」

「そうしたいけど…なんていうか」

「私が一人で行ってきましょうか?」

「それでも良いけど、うーん、後で探しに行けば良いよ、場所は分かってるんだし」

「そうですか」

「今は、ルーシーの誕生日プレゼント探したいから」

「それなんですが、ここまで来たし、折角だからカルセドニーさんのお店を見てみませんか?」

「あー、そうだね、私達のお小遣いでも買える物もあるかも」

二人は、真っ直ぐ店へ向かった。

「ねぇ、さっきのライオンさんだけど」

「あれ、ライオンさんだったのですか?」

「なんだと思ったの?」

「茶色と黒のもじゃもじゃ」

そこでクラウディアが笑い出した。

「笑うとこですか?」

「だって!あれ、ライオンさんの、たてがみ!」

笑いながら話す為、言葉が途切れ途切れになってしまったが、クラウディアはクスクスと笑い、止まらなくなっていた。

「クラウディアちゃん…あまり笑わなくても…」

「ごめん、そうだ!良い事教えてあげる!ライオンさんのたてがみ、なんで茶色と黒いのか知ってる?」

「えっ?意味があるのですか?」

「あれね、茶色くて短いとあまり女性にモテないんだって!だけど、黒くて長いと、そっちのがモテるんだって!いでんしってやつなんだってさ!」

「そんなことが!初めて知りました…」

「だから、ライオンのたてがみは、茶色だけじゃなくて、黒く長いのも生えてた方が良いんだって!ふしぎだね!」

二人で笑い合い、楽しい時間を過ごしながら、二人はキラキラ光る店の中へ入って行った。





その頃、一階のホールで、ピアノを聴いている二人は、誕生日プレゼントについて話し合っていた。

「ピンクとか赤い物って、私よりしろねこちゃんのが詳しいかも」

「彼女、そういう物が好きなの?」

「たしか…だけど、花とかが好きみたい、だからその、ピンクや赤だけじゃなく、花の色が好きって感じかな」

「へぇー」

「クラウディアは?どういった物が好きなの?」

「キラキラ光ったりするもの」

「じゃあ、カルセドニーの働いてる店のパワーストーンとかは?」

「もしかしたら、その辺にいるかも…そうしたら計画が台無しになっちゃう」

「あーそうか。」

「でも、これ、渡したいし」

そう言って、ルーシーは手に持った忘れ物をコーデリアに見せた。

「あー、今頃探してるかもね」

「どう渡すか、考えてるんだけど、良い答えが浮かばなくて…」

「私が渡そうか?」

「うーん、それでも良いけど、計画が台無しに」

「そっか、難しいね」

「コーデリアなら、どうする?」

「うーん、私なら…直接渡すかも」

「計画、台無しにする勇気ある?」

「それは、こっちのセリフ」

二人は見つめ合い、少々黙ってからルーシーが立ち上がった。

「カルセドニーが働く店の方、行ってみよう」

「わかった、そうしよう」




その頃、なにも知らないクラウディアは宝石に目が奪われていた

「すごいね、あーここ、カルセドニーって書いてある!」

「どれ?本当だ!カルセドニーさんの名前!」

「ねえ、カルセドニーの名前の由来知ってる?」

「たしか、コーデリアちゃんのお母さんが名付けたと聞いてます」

「すっっごい名前負けだよね」

「カルセドニーさんは、もう少し普通の名前で良かったかも知れませんね」

そこで二人はまた、笑い始めた。

可笑しくなると、止まらない飴でも舐めたように笑ってしまう。

ここまで笑えるとは、正直思ってもみなかったが、結構、気が合うようだ。

「ねえ、カルセドニーのさぁー」とクラウディアが言うと、「兄貴がどうかしたか?クラウディア」と声が聞こえてきた。

その声の方を振り向くと、クラウディアの父でありカルセドニーの弟、セバスチャンが立っていた。

「パパ」

「クラウディア、ルーシーは?」

「あっ、あの今日は…」

「あぁ、誕生日プレゼント探してるとか?」

「うん、どんなのが良いか分からなくて」

「で、カルセドニーのトコにいる、彼女を一緒に連れて来たって訳か、それならコーデリアの方が良さそうなの探してくれそうだけど…、おまえはコーデリアみたいなのは、苦手だよな」

「べつに、その、なんていうか…」

「まぁ、彼女のが話しやすいよな、おまえは騒がしいの苦手だから」

「…ちょっと、その」

「別に、構わん、彼女だってコーデリアとはよく一緒にいるけど、分かってるだろ、な」

そう言われて、しろねこちゃんはどう返事して良いか分からなかったが、確かにコーデリアは少し、騒ぎ立てる癖がある。

その辺を上手く伝えられるか分からないが、しろねこちゃんは「コーデリアちゃんは、たしかにその、賑やかな子だと思います」と答えた。

そう言うと、クラウディアは「コーデリアと一緒にいて、うるさすぎると感じたりしないの?」と言い、しろねこちゃんを見た。

「うーん、私はあまり」

「そうなんだ」

そう言うと、クラウディアの表情は、少ししょんぼりした表情になったが、セバスチャンが助け舟を出した。

「姉貴に似て、たまにヒステリックだからなー、そういうの苦手な奴もいれば、気にならないやつもいるだろう、あんま気にすんな、クラウディア、ルーシーだと思えばそこまで気にならないだろ」

「そういえば、ルーシー、さっきコーデリアと一緒にいたよね」

「一階で、二人を見ましたね」

そうこうしているうちに、今、名前が挙がった二人は店に入り、クラウディアとしろねこちゃんを見つけた。

「クラウディア!」

ルーシーの言葉に、クラウディアとしろねこちゃんはお互いを見つめた。

「大丈夫、気にしないで、実はね、コーデリアと一緒に内緒のミッションをしてたの、あの、誕生日プレゼントを探して…、それで、これ、落とし物を見つけて、持ってきたんだけど、クラウディアのだよね」

「ルーシー!それ、私の!探してたやつ、あの、ルーシー、実は私達もその…」

ルーシーとコーデリアは、二人に近付き、クラウディアに忘れ物を届けた。

「ありがとう、ルーシー」

「クラウディア、良かったね、無くさないで」

「うん」

「あっ、クラウディア、その…」

「大丈夫、考えてる事一緒だったね」

「ねえ、だったらここでお揃いのパワーストーンのブレスレットでも買おう?」

「うん、そうする!」

二人は手を繋ぎ、パワーストーンのブレスレット売り場まで歩いて行った。

「しろねこちゃん、私達もお揃いのブレスレット買ってかない?」

「あの、お小遣いは…」

「あー、そうだった」

「カルセドニーが、これを二人に渡してくれって言ってたけど、コーデリアとしろねこちゃんは、これを受け取ってくれるかなー?」

そういって、セバスチャンはお小遣いが入っている袋を二人に見せた。

「えっ何それ?」

「コーデリアとしろねこちゃんとおまえの子供が二人、船を使ったってカルセドニーに言われてなぁ?あっ、秘密だったか!すまない、カルセドニー!」

「それじゃあ…!」

「そうだ、カルセドニーが二人にお小遣いって言ってたぞ、ほら!」

そう言い、セバスチャンは二人に袋を渡した。

「お小遣い!しろねこちゃん、いこ!」

「うん!」

そうして二人もパワーストーンのブレスレット売り場まで行くのを確認すると、セバスチャンは一歩後ろに下がり、店の出入り口の方を見つめた。

「バカな兄貴だなー全く、自分が働く店なんだから、堂々と入って来いよ、休みだからとか言わずに」

そう言うと、店の出入り口に立つ黒い影を見つめた。




カルセドニーの船に乗って、島へ帰る途中、ルーシーとコーデリア、クラウディアとしろねこちゃんは、お互いのブレスレットを見せ合っていた。

結局、四人のお小遣いだけではお金が足らず、四人の子供達の様子を見ていたカルセドニーと、そんなカルセドニーに、わざわざ仕事終わりに現地へ呼ばれたセバスチャンの二人が多く支払う事となったが、それでも四人は大満足だった。

改めて、四人は少し絆が産まれたようで、新たな組み合わせの二人組が誕生した。

青や水色の物が好きなルーシーとコーデリア。

赤やピンクの物が好きなクラウディアとしろねこちゃん。

新たに誕生した組み合わせは、その二組だ。

大人二人は、その光景を微笑ましく見つめていた。

財布の中身はその分、寂しくなったが…。




END

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