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四話『進学と思惑』

 日々の義母と義姉からの苛めに耐えながらラフィール学園へ入学し勝っちゃんに会える日を心の支えに生活していたある日、学園入学を目前に控え私はここしばらく姿すら見たことがなかった父親、ゼイル子爵に呼び出された。

 

 それもそのはずゼイル子爵は子爵邸から離れた郊外に愛人を住まわせており、最近はほとんど屋敷へ帰ってくることが無かったためだ。


 義母が義姉を伴って、他家のお茶会へ揃って出掛けている間を狙ってこうしてふらっと本邸へ帰ってくる。


 全寮制のラフィール学園へ入学するための荷物を準備している所にアンナが呼びに来てくれたのだ。


 無駄に華美な装飾が施された廊下を進み、ほぼ使われる事がない執務室へと足を踏み入れると、机の上に山積みになった書類に了承のサインをいれている父の……ゼイル子爵の姿が見えた。


「お召しに従いユリアーゼ参りました父上」


「ほぅ、しばらく見ぬうちにずいぶんと母親に似てきたな」  


 こちらを舐めるような、粘着しつな視線で見られゾクゾクトした悪寒を覚える。


 娘を値踏みするような、娘を娘と思っていない……ひとりの女を見るような……目。


「お前は確か今年からラフィール学園へ入学だったな」


「はい……」


 何を言われるのかとびくびくと身体が身構える。


「学園には高位貴族の令息や今年は第二王子が入学される、誰でもいいからたぶらかしてこい」


 誰でも良いから……たぶらかす?


 なに言ってるの、たぶらかすってなんで? どうして?


 困惑が顔に出てしまっていたのかもしれないニヤリとゼイル・アゼリア子爵が口角をひきあげる。


「どうした、不満そうだな」  


「なぜ、そのような」


「フッ、なぜ? バックランド伯爵があの女狐と出来ていないと私が気が付いて居ないとでも思っているのか」


 自嘲気味に告げられた言葉にハッと視線をあげる。


「よかれと思いバックランド伯爵家の令息とアルベンティーヌを婚約を進めたが散財に次ぐ散財でこの通りアゼリア子爵家はバックランドに乗っ取られかねない」 


 美しいドレスに宝飾品に娯楽にと義母も義姉も子爵が帰ってこないのを良いことにやりたい放題だ。


「だから誰でもいい学園で、バックランド伯爵よりも高位の貴族の後ろ楯がある貴族の令息をたぶらかしてこい、そうすればこの家をくれてやる、でなければお前に居場所はない」


 バンっと飴色に輝く執務机に握った拳を振り下ろした。


 誰かをたぶらかすなんてしたくない、だって私が会いたいのは勝っちゃんだけだから。


「お断りしたら……?」


「やる気がないなら今直ぐに荷物を纏めろ、嫁ぎ先はガスツール商会の会頭だ」


 ガスツール商会は王室御用達の誉れ高い商人だ。


 今すぐ、それは勝っちゃんのいるラフィール学園に入ることは出来ないと言うこと、そんなの……絶対にいやだ!


 義母の折檻も義姉の嫌がらせを耐えられたのもラフィール学園に入学すれば勝っちゃんに会えると思ったからだ。


 なのに、ラフィール学園にいけないなんてそんなのっ、そんなの認められるもんか!


 絶対にラフィール学園に行く。


「慎んでお受けいたします」


 決意を新たに執務室を出ると、私は準備に取りかかった。

 

 

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[一言] 何万人も救う命を救ったご褒美とか宣う割に なんなん?これ?
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