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三十二話『修道院へ送られることになるようです。』


「全く……このような顔ではユリアーゼを王城へ連れて行くことができないではないか!」


 目が覚めるとアゼリア子爵の怒声が聞こえる。


「ここまで内出血が出てしまっては元の肌色を取り戻すまで十四日はかかるかと……」


「くそっ、バックランド伯爵にアゼリア子爵家がユリアーゼを虐待していると王家に密告でもされてこの現状を見られてはユリアーゼの養育権を剝奪されかねんではないか!」


「それが……アゼリア子爵様、ユリアーゼ様の背中に無数の傷跡がございまして、何かお心あたりございますか?」 

 

「なんだと!? チッ、あいつらめ! 傷物にしおって……まぁいい……服さえ着ていれば見えない所だ、傷物だとしても聖女なんて呼ばれている今ならば欲しがる者は星の数ほど居るからな」


 これは、目を覚ましたことを悟られないほうがいいかもしれないな……それから医師は帰っていったようで、扉一つ挟んだ部屋にいるアゼリア子爵の声が聞こえてくる。


「とりあえず、ユリアーゼを隠さねばならないな、バックランド伯爵からの密告で王家に屋敷に踏み込まれては厄介だ」


「ですが、王家からの召喚状にいつまでも返事をしなければバックランド伯爵の訴えを肯定したことになりかねないかと」


「だからユリアーゼを療養としてアゼリア子爵領のもっとも空気がいい王都から遠い僻地へ移動させよ」


「僻地……ですと辺境伯領との境となるトラウ山脈の麓の街でしょうか?」


「ああ、あの街なら良いだろう。 アゼリア子爵家の所有する屋敷はないがたしか修道院があったはずだ、寄付金をたんまり持たせて一時的にユリアーゼを預ける分には問題なかろう」  

 

 どうやら私は修道院へ送られることになりそうだ……せっかく勝っちゃんと、レオナルド殿下と再会出来たと思ったのにな……

 

 「王家からの登城要請には交流会での精神と肉体への疲労から酷く体調を崩しており召喚には応じられないと、手紙を出しておけ。私はこれからユリアーゼを連れて領地へ戻る……」


「他貴族からの社交の招待状は全てお断りしてよろしいのですか?」


「構わん、ただし婚約希望の釣り書は領地へ送ってくれ」


「かしこまりました」


 どうやら話は終わったらしく話し声が遠ざかったのを確認して私は掛布団を頭の上まですっぽりと被り身体を丸めて縮こまる。


 きっと物語の中盤で退場したヒロインに待っているのは王子様とのハッピーエンドではなく、良くてノーマルエンドだろう。


 そうだとしても交流会でレオナルド殿下を失っていたら強制的にバッドエンドだったのだから。


 例え私を忘れてしまったのだとしても、同じ空の下でレオナルド殿下が生きている……それだけでは私は幸せだ。


 メリーバッドエンドくらいで収まってくれるかもしれない。

 

 その日の夜には私は王都にあるアゼリア子爵家からアゼリア子爵領地へと人知れず出発したのだった。

    

 

 

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