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二十五話『何をやらかしたんだ私は!?』


 レオナルド殿下から頂いた侍女見習い用のブローチと許可証、そして鍵を遭遇したご令嬢に取り上げられ泉の中で探し回ったことまでは覚えている。


 落ちた場所はわかっても水の中は冷たくて、水深も深い……流木や岩、水草……泳いだときに巻き上がる濁りで視界が遮られる。


 見つけようと焦るし体力はみるみる削られて周りも暗くなって水中で視界が効かないし、寒さで意識も朦朧として……誰かに無理やり水中から引き上げられて暴れたのは覚えてる。


 ただそこからの記憶がない上にここ……私室じゃない!?


 えっ、私今どこにいるの!? それより今何時なの?


 鍵とブローチと許可証ぅぅう!


 急いでベッドから起き上がり慌てて着替えを探すけれど……


「みあたらないよぉ〜」


「あら、目が覚めたみたいね」


 ニコニコとしたフリーダ女史が扉を開けて部屋へと入ってきた。


「フリーダ様、おはようございます! 申し訳ありません、私はなぜこの部屋に? それに今日は何日ですか!?」


「あらあら、落ち着きなさい」


 わたわたと慌てる私の背中を押してベッドへ座らせると、フリーダ女史が私の額に手を当てて体温を測ってくれる。


「すっかり熱は下がったわね、あなた三日も意識が戻らなくて大変だったのですよ?」


「みっ、三日ですか……」


 想定外に寝込んでしまった事実に青褪める。


「そんな、レオナルド殿下に謝罪しなければ!」


「レオナルド殿下はご存知ですよ、自分のことは気にせずしっかりと身体を癒やすようにと仰っておられました」


 どうやら体調を崩した私の為に連絡を入れてくれたらしい。


「ありがとうございます、実はあまり記憶がはっきりしていなくて……探し物をするために泉に入ったのは覚えているのですが……」


「あら、そうなの? ずぶ濡れの貴女をレオナルド殿下が女子寮へ送り届けてくれたのよ、その次の日もね」


 えっ、私を泉から引き上げたのレオナルド殿下だったの!?

 

「それからアンジェリーナ様にもきちんとお礼をするのですよ、貴女のためにかなり尽力してくださったのですからね」


 どうやら記憶がない間に色々な人に迷惑をかけてしまっていたらしい。


「そうそう、レオナルド殿下からの伝言ですよ」


 そう言ってフリーダ女史はベッド脇のチェストの引き出しを開いた。


 その中にあったのは白いハンカチーフに包まれたなにかだった。


 フリーダ女史は優雅な仕草でハンカチーフを取り出すと私の前で包を開きこちらへと中身を見せる。


 中身を確認した途端涙が浮かんで止まらなくなってしまった。


 そこには泉で無くしたと思っていた、レオナルド殿下から頂いた……唯一の繋がりであるブローチと許可証、そしてレオナルド殿下の私室の鍵があった。


「早く身体を治して、誠心誠意レオナルド殿下にお仕えなさい」


「はい……」


 自分の元に戻ってきた大切な宝物を胸に引き寄せて強く抱きしめる。


「ふふふっ、しかし良かったわね。これで貴女もなんとか明日の全学年交流会に参加できそうね?」


「えっ……全学年交流会は明後日では?」


 先程フリーダ女史は三日間意識がなかったと言っていた筈だ。 


「あら、明日で合っているわよ? ずぶ濡れで寮に運ばれた翌日に熱に浮かされながら寝間着姿で女子寮を脱走してレオナルド殿下が連れ戻してくださってから三日ですから」


 なんですとぅ?! いやぁぁあ、何やってるの私!? 泣いてる場合じゃないじゃない!


 慌てる私にフリーダ女史はにっこりと微笑みかける。

 

「さぁそろそろ自分の部屋に戻りなさい、明日に向けて今日はゆっくり休むのですよ?」


 果たして私はゆっくり休めるのだろうか……             

  


  

 


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