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二十二話『こんな無茶するなんて!』レオナルド視点

ブックマーク、評価ありがとうございます!嬉しかったのでもう一話あげちゃいます!


 冷たい濁った池へとすぐさま飛び込み、ユリアーゼがいる場所までクロールで泳ぎ寄る。


 生まれ変わってから、泳ぐような場面に出くわしたことは無かったけれど、どうやら身体が変わっても感覚的な記憶が身体を動かしてくれるようだ。


 予想を上回る水温の冷たさに体力を奪われる。


 ちっ、こんな状態でユリアーゼはいったい何時から水中にいるのだろうか……


 水面に上がってきたユリアーゼの腕を掴み引き寄せると、逃げようと暴れるのを無視してそのまま強引に足が付く水深の場所まで引き上げる。


「邪魔しないで! 必ず見つけなければいけないの!」


 ガタガタと激しく震える身体で更に水中へ戻ろうとする。


 低体温症になっているのか青白い顔と視点があっていない、今自分を無理矢理引き上げたのが誰なのかもわからないほどに意識が混濁している。


「離して……離してよっ!」


「何を探しているかは知らないが明日明るくなってから探せばいいだろう! 誰か、直ぐに入れるように湯の用意を頼んできてくれ」


 泉へと右手を伸ばしながら暴れるユリアーゼを肩に担ぐようにして無理やり陸地へ引き上げる。


「こんな寒空の下で泉に飛び込むなど何を考えている! 無事で良かった」


 暴れるユリアーゼを拘束するために身体を抱き締めれば、そのあまりに華奢な小さな身体に驚く。


 水滴を限界以上に吸い込んだ服は重いはずなのに、ユリアーゼの身体は予想以上に軽かった。


 親指と人差指で作った輪よりも細い手首、それからつながる身体は必要な筋肉を維持出来ているのだろうか?


 まるでこれまで満足に食事を与えられてこなかった孤児たちを思い出すその姿に胸が締め付けられる。


 このままでは命の危険さえあるユリアーゼの冷え切った身体少しでも俺の体温が移ればいいと思いながら、しばしそうしていたらなんの前触れもなくユリアーゼの身体から力が抜けた。


 体力も精神力もすり減らしたのか意識を手放したユリアーゼの身体を、しっかりと支え直し脱ぎ捨てたブレザーをユリアーゼの身体に巻きつける。


「まったく……無茶しやがって」


 ユリアーゼの青白い顔を覗き込めばつぅ……と目尻から涙が伝い落ちる。


「本当に……お前は何者なんだ?」  


「殿下、女子寮にいるアンジェリーナ様とフリーダ女子が受け入れ準備を整えておまちです!」


「ご苦労、直ぐに移動するぞ!」


 影からの報告を聞いてユリアーゼを肩にもたれ掛からせる形で抱き上げたまま女子寮へと戻る。


「殿下我々が運びましょうか?」


 影からの申し出にゆるく首を横にふる。


「いや、私が運ぼう……すまないが私の着替えを持ってきてくれ」 


 濡れた服は容赦なく体力を削ってくるが、なぜか心が暖かい。


 ポッカリと欠けた何かが埋まるような不思議な感覚を覚えながら俺は女子寮へと走り出した。


 

 

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