6話 その夜
部屋が繋がるという現象から4日がたった日の夜。創也は部屋で勉強をしており、再び部屋は繋がった。
2日目は千紗のベッドで寝ており夜中に起きて覗いてみたが自分の部屋だった。その日以外は繋がっている。これからこれが毎日続くのか……?
創也は未だに慣れていない。女子と一晩同じ部屋で過ごすというのはかなりハードルが高い。ましてやあの小野咲琴音と。
カーテンを壁代わりにした効果はあったようで、吹き抜け状態よりはかなりましになった。
創也は小野咲が部屋にいる様子だったのでカーテン越しに話しかけた。
「小野咲いるんだろー、おまえ今日しでかしたこと覚えてるか?ちゃんと桜に訂正しとけよ」
「ええ、当たり前よ。未だに私からあなたの彼女だなんて言ったことが信じられない…。今すぐにでも工藤さんに会って話したいわ」
琴音はまだ疲れている様子だった。創也と同じく琴音もこの状況に慣れるわけもなく、心身ともに疲れていたのだ。
「おうおうおれからも桜に言っとく。あと小野咲に聞きたいことがあるんだけど、初めて部屋が繋がった日の次の日の夜、うーんっと0時くらい?なにしてたか覚えてるか?部屋にいたかいないかだけでもいい」
「覚えてるわよ。たしかその日は寝るのが遅かったわ、その時間は風呂に入ってたような。どうしてそんなことを聞くの?」
琴音は怪訝する。
「その日だけ部屋が繋がってないみたいだったからさ。どうしてだろうなーって少し気になったんだよ。普通に考えて部屋が繋がるっておかしいからな?」
創也は冷静さはとうに取り戻しており、この状況がおかしいことも忘れてはいなかった。最初は現実を忘れ楽しんでいたが。
「わかってるわよ!とにかく。今後はあまりお互い干渉しないようにしましょう。部屋が繋がる度にびっくりしていたらきりがないわ」
琴音が断言する。
「まあーそうだなー。止めようもないしなー。大事にもしたくないし。繋がってる時に部屋に誰かが入ってくるのが1番怖い。とくに千紗は用心しとかないとだな。そういえば小野咲、兄弟とかいないのか?」
「姉がひとりいるわ。今は家にはいないけど」
「そうなのか」
創也は琴音の顔が一瞬、強張ったのでこれ以上聞くのをやめた。
「もう寝るわ、おやすみなさい、国水くん」
「ああ、おやすみ」
創也は琴音とおやすみを何気なく交わす。琴音に対するオーラや緊張は徐々に少なくなっていた。別の感情はまだ残っているが。
琴音側の部屋の明かりが消えた。
創也もベッドに横たわりリモコンで明かりを消そうとした。
がその時――
「ちょっと待ちなさい!」
琴音がカーテンの端から体を半分だけ出しながら言った。
創也は少し顔が赤くなる。琴音の寝巻き姿から谷間が少し見えた。
「どうした……?」
「…………その……今日は、ごめんなさい」
琴音が下を向きながら呟く。
「あと…………ありがとう…………」
琴音の顔がますます赤くなる。そして、なにかに耐えられなくなった様子で
「さすがに殴られるのはどうかと思うけど?あの3人組が悪いんだけど!私が少し一方的になってたから……。一応!礼を言っておくわ。勘違いしないことね、決してあなたを心配していたとか、嫌われたくないとか、そういうのでは全くないわ。ただの礼儀よ」
琴音はカーテンの端から顔を少し出しながら言った。
「お、おう……」
創也は驚きながらも平然を装い、返事をした。
あいつも少しはいいところがあるのかもな。いや、お礼をするのは普通のことじゃね?しない方がおかしい。よな……?
結論は出なかったが創也は久しぶりに心地よく眠りにつくことができた。




