ホワイトデーSS3
閲覧いただき、ありがとうございます。
魔姫と紅葉のホワイトデーストーリーです。
バレンタインデーストーリーの続きです。
紅葉視点です。
バレンタインデーに晴れて、私は彼女と交際を始めた。
そして、私は今彼女にバレンタインデーのお返しをすべく、人生で初めて、自主的にお菓子作りをしている。
昔から、手先を使うものは得意だ。
レシピに書かれた通り、分量とやり方に従えば上手くいく。
そう思っていたのだが、焼き上がりがなかなか上手くいかない。
3回も作り直してしまったが、明日のデートには無事間に合いそうだ。
私は彼女に似合いそうな紫色の箱に作ったお菓子を詰める。
誰かの為に何かを作ることがこんなにも楽しいことだとは知らなかった。
彼女が居たから、初めて気づけたことだ。
私は出来上がった箱を見て、思わず微笑んでしまった。
ホワイトデー当日。
私を見つけた彼女は嬉しそうに微笑む。
私はそんな彼女に胸が苦しくなるのを感じた。
今日は話題のカフェに行く。
カフェに行く途中、私は彼女と手を繋ぐべきか迷い、躊躇い、結局店に辿り着くまで、手を繋げなかった。
大学院生にもなって、情けない。
カフェで注文した品を美味しそうに食べる。
普段、どこか凛とした雰囲気の彼女の見せる意外な表情にギャップを感じる。
食べ終わり、店を出る。
私は渡すタイミングが分からず、店を出た瞬間に、持っていた袋を渡した。
「この前のチョコレートのお礼だ」
彼女は入っていた包みを開ける。
私はお菓子だけではなく、彼女が好きそうな紅茶を買った。もし、手作りのお菓子が外れた時の予防策だ。
「この紅茶の銘柄、私好きなんです。このマカロンはどこのですか?美味しそう…」
「それは、私が作ったんだ」
そう言うと、彼女は驚いた顔をする。
やはり、男の手作りというのは引くものなのだろうか。
彼女はその場で一つマカロンを頬張る。
「バニラの味がします。美味しい…」
彼女は幸せそうな顔をして微笑む。
私は口にあったようで、安心した。
そして、彼女は私に向かって手を差し出す。
「手、繋ぎませんか?」
少し躊躇いがちに言う彼女。
私はまた、彼女に先を越されてしまう。
私は不甲斐なく思いながらも、彼女の手を強く握る。
これからは、私が彼女をリードできるように、少しずつ勇気を出していこう。
「ね、紅葉さん。マカロンって貴女は特別な人って意味があるんですよ、知ってました」
「ああ、君に対する私の気持ちを如実に表していると思ってな」
そう言うと、彼女はぼそっと何かを呟く。
心なしか顔が赤いが、気のせいだろうか。
「無自覚人たらし…」
私は彼女の呟きが聞こえなかった。
ぶつぶつと呟く彼女を見て、私は思う。
彼女のおかげで、私の世界はどんどん広がった。
私は彼女に感謝の想いを伝えていきたい。そして、自分の気持ちも。
祝い事に疎い私が楽しみに待ち、準備をしているなんて、ついこの間までは想像もしなかった。
これから、一つずつ彼女と新たな発見をしていくことが楽しみで仕方ない。
良ければ、評価、ブックマーク、コメント等よろしくお願いします。




