ホワイトデーSS1
閲覧いただき、ありがとうございます。
愛と海斗のホワイトデーストーリーです。
バレンタインデーストーリーの続きです。
海斗視点です。
今日はホワイトデー。
バレンタインのお返しをする日だ。
水泳部のマネージャーには、部員全員で買ったお菓子でいいだろう。
問題は、あいつだ。
バレンタインに後輩からチョコレートマフィンを貰った。
あの気合の入ったデコレーションとラッピング、それにチョコレート味にしたのは自分で決めたみたいだし、期待してしまう。
妹分のような後輩に対する気持ちは考えないようにしている。
この想いを認めてしまったら、もう自分の気持ちを抑えきれなくなりそうで。
既に、彼女が同級生の男子と仲良く話しているだけでも、嫉妬に似た気持ちに駆られるのだ。こんな状態では、彼女を傷つけてしまう。
だから、俺は先輩として、可愛い後輩にお返しをすることにした。
手には購買で買った缶のホットココア。
これくらいなら、気軽に渡せるだろう。
問題は、ブレザーのポケットに入っている方だ。
偶然、街で見かけて思わず買ってしまったもの。
とりあえず、持ってきたはいいものの、これは先輩のお返しとしては、大きすぎるだろうか。
このせいで、彼女に会うのも躊躇してしまい、放課後になってしまった。
そして、言い訳に言い訳を重ねて、ホットココアを買い、それで様子を見るという方針に至ったのだ。
ーさて、あいつはどこにいるかな。
俺は、携帯を取り出し、彼女に連絡を取る。
暫くすると、彼女から屋上との答えが返ってきて、俺は屋上に向かった。
屋上の扉を開けると、夕暮れに照らされた彼女の後ろ姿が見え、俺は思わず立ち止まる。
見惚れて、しまったのだ。
扉の音で、彼女が振り返る。
彼女は少し拗ねたような顔をして、俺を迎えた。
その表情に思わずドキッとしてしまう。
「もう、今日は会えないのかと思いました」
「お返し欲しかったのか?ほら、これ」
サインペンで『うまかった、ありがとう』と書かれたホットココアを彼女に渡す。
彼女は両手でホットココアを持つと、嬉しそうに微笑んだ。
「ふふ、ありがとうございます」
お返しはホットココアだけだと思ったのだろう。俺はすっかり、もう一つの物を渡すタイミングを逃してしまった。
少し躊躇って、俺はポーカーフェイスを装って、彼女に小さな包みを渡す。
「可愛い後輩にプレゼント」
彼女は少し驚いた顔をした後、子供のような無邪気な顔をして、包みを開けた。
「これ、バレッタですか?」
白いレースとエメラルドグリーンのリボンをあしらったバレッタ。
彼女は宝物のように大切に持つ。
「街で偶然見つけてな。愛に合いそうだなって思って」
そう言うと彼女は今まで見たことのないような可愛らしい笑みを浮かべた。
彼女は頬を真っ赤にしながら、髪にバレッタをつける。
「大切にします。ありがとうございます」
イメージ通り、彼女によく似合っている。
「うん、来年もよろしくな」
そう言うと、彼女は笑顔で頷いた。
来年も、この先ずっと、彼女との縁が続きますように。
夕暮れに照らされた彼女を見ながら、俺はそう願った。
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