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この前の恋愛相談の結論として出たのが、海斗と同じアルバイト先でアルバイトを始めることだった。海斗と愛しの彼女を近づけるのは不服で仕方なかったが、可愛い友人のためだ。勿論、私も同じく働くことに決めた。
当初、彼女はそこまで付き合わせるのは申し訳ない、と遠慮したが、恋する友人のためと働く意思を伝えた。
決して、彼女のウエイトレス姿が見たかったわけではない。死亡フラグ回避の為である。
シフトも全く彼女と同じ日程で提出したが、流石に丸かぶりとは行かず、初出勤の日は彼女より一足早く始めることになった。
「本日からここでホール担当として、働かせていただく、位方季々です。初めてのアルバイトで至らない点もあると思いますが、宜しくお願いします」
個人経営のレストランでのアルバイト。
位方季々としては初めてだったが、生前の自分は四年間カフェでアルバイトをしていた。
多少のブランクはあったものの、淡々と業務をこなしていった。
一日の仕事を終え、バックルームに戻ると、一人の男性が挨拶をした。
「お疲れ様。季々ちゃん初めてなのに、凄くテキパキ動いてて、感心しちゃったよ」
にこやかに微笑みながら、私に告げる。
攻略対象との鉢合わせに固まっている私を見て、戸惑っているのだと思った彼は少し申し訳なさそうに言う。
「ごめんね。初日なのに馴れ馴れしかったかな。色んな人に自己紹介された後だろうから改めて。僕は冬木雪之助。君と同じホール担当だよ。ここの店ではユキちゃんとかユッキーって呼ばれてる」
よろしくね、と優しく微笑む。
私は慌ててお辞儀をする。
そして、流れで私は雪之助と少しの間世間話をすることになった。
「へえ、元々は栄養学部志望だったんだ。どうして、全く別の国際学部に入ったの?」
「オープンキャンパスで(彼女を)知って、これだ!って思ったんですよね」
「季々ちゃんにとって、そんなに魅力的な(学部との)出会いだったんだね」
「はい、とても魅力的(な彼女)でした」
おそらく噛み合っていないであろう会話に乾いた笑いを内心浮かべながらも話は進んでいく。
雪之助は会話が上手い。流石、ゲーム内で一番の社交家だ。そして、何故か連絡先も交換してしまった。
彼女が雪之助のペースに巻き込まれないように気を配っておかなければ。
世間話も終わり、身支度を済ませて、バックルームを出ようとする私に、雪之助が声をかける。
「今日はお疲れ様。これから頑張ろうね」
そう言って、笑顔で手を振る。
白人とのハーフの彼は、端正な顔立ちと色素の薄い髪色をしている。
こんな人に笑顔を向けられるのは乙女ゲームならではだな、と内心思ったのだった。
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