誕生日SS 5
閲覧いただき、ありがとうございます。
季々の誕生日のお話です。
季々視点です。
今日は私の20歳の誕生日だ。
彼は私よりも誕生日を楽しみにしていたようで、何度も誕生日もうすぐだね、何がしたい、など様々な質問をしてきた。
珍しく彼がはしゃぐその姿を見て、恥ずかしさを感じる反面嬉しさが込み上げていた。
何でもいいですよ、と最も困る返答をしてしまった私に対して、彼はじゃあとびきりのものにするね、と答えてくれた。
そして、連れてこられたのは有名なホテルだった。
モブキャラには不釣り合いなくらいのオシャレな場所に物怖じしてしまう。
普段よりはオシャレをしてきたつもりだけど、場違いな気がしてしまう。
「季々ちゃん、どうしたの?ほら、行こうよ」
彼は私に手を差し伸べて、入ることを促す。
私はおずおずと手を取り、ホテルに入った。
エレベーターが着くと、そこは全面ガラス張りの景色の良いレストランだった。
思わず値段を気にしてしまう。
大学生が入っていいのだろうか…
席に着き、シャンパンが注がれる。
人生、初めてのお酒だ。
「季々ちゃん、20歳の誕生日おめでとう」
「ありがとうございます」
乾杯、とグラスを掲げる。
少し口に含むと、爽やかな味わいとほろ苦さが口の中に広がった。
「初めてのお酒はどう?」
「大人の味がします…」
そう言うと、彼は笑った。
前菜、スープ、メインディッシュ、どれも一流で美味しいのだろうが、この雰囲気に呑まれて緊張し、さらにテーブルマナーを意識していたせいか、味がよく分からなかった。
大味の食べ物しか普段食さない私にはこの繊細な高級食品は表現できなかった。
ひたすら、美味しい美味しいと食べるしかなかった。ボキャブラリー難民の自分が憎い。
デザートは綺麗に飾られた色とりどりの果物を使ったケーキだった。
口に含むと甘酸っぱい味がした。
「美味しい…」
本日何度目かの言葉を口にする。
「季々ちゃんは本当に美味しそうに食べるね。見てるこっちも楽しくなる」
雪之助は優しい目をして私を見つめる。
そして、彼は箱を差し出す。
「これ、季々ちゃんに」
恐る恐る開けると、そこにはピンクゴールドの時計があった。
「素敵…ありがとうございます」
「ふふ、気に入ってもらえて良かった」
彼の袖口から似たデザインの時計が見える。男物と女物だからきっと違うだろうが。
思わず凝視してしまった。
彼はそれに気がつくと、少し照れた様子を見せた。
「気づいた?これ、お揃い」
時計を見せる素ぶりはまるで時計の広告のようで、とても様になった。
「お、お揃い…」
好きな人とお揃いなんて、憧れていたけれど一生、前世を含めたら二生できないと思っていた。
動揺する私を見て、彼は少し不安そうに見つめる。
「もしかして、嫌だった?」
私は首を大きく振る。
「好きな人とお揃いを持つの、憧れで…凄く嬉しいです」
そう言うと、彼は口元を緩め、嬉しそうに微笑む。
「本当に可愛いな」
甘い声でそう呟かれ、私の顔は紅潮した。
付き合って、もうすぐ一年経つ。
彼と過ごす時間はまだ慣れず、未だドキドキしてしまう。
どうか、この幸せが永遠に続きますように。
こうして、乙女ゲームの世界から抜け出した私は、彼との幸せな思い出をまた一つ紡いだのだった。
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