誕生日SS 2
閲覧いただき、ありがとうございます。
魔姫の誕生日のお話です。
魔姫視点です。
3月3日。今日は私の21回目の誕生日だ。
21回目の家族と迎える誕生日。
いつもはこの家族と過ごす誕生日が幸せなのに今年は少しブルーな気持ちだ。
私は携帯を開く。
もう日が暮れている。それでも彼からのお祝いメッセージが来なかった。
今週会った時に、彼がもうすぐ君の誕生日だな、と話しかけてくれたから期待していた。
おめでとう、と言ってくれるのではないか。
あわよくば、一緒に過ごせるのではないか。
そんな淡い期待を気づけば寄せていた。
忘れているのかもしれない。それでも、彼にとって私の存在が大したことではないと意味しているようで胸が苦しくなった。
「姉ちゃん。今日ずっとため息ばかりついてるじゃん。何かあったの?」
弟の魔咲が心配そうに尋ねてくる。
今日は魔咲とちらし寿司を作っているのだ。
折角、私の誕生日に予定を空けて一緒にお祝いしてくれている魔咲に申し訳ないと思い、私は明るく努めた。
「別に無理しなくてもいいよ。男だろ?」
私は思わず菜箸を落としてしまう。
そんな私を見た魔咲は呆れ顔で菜箸を拾う。
「姉さん、最近百面相してスマートフォンを見てるし。そんなに悩むなら、その男を今日デートに誘えば良かったじゃないか」
そんなの出来るはずない。
私達は恋人同士ではないのだから。
押し黙った私を見て、魔咲はそれ以上の追求はしなかった。
私はどんどん欲深くなっていく。
季々たちと出会って、家族にも、友達にも恵まれ、もう十分幸せなはずなのに。
これ以上、何を望むというのだろうか。
夕飯の支度を進めていると、ふとインターホンが鳴った。
誰だろう、郵便だろうか。
私はモニターに映る姿を見て、目を見開いた。
そこには、彼の姿があった。
私は慌てて、玄関に向かう。
「紅葉さん、どうして…」
「突然すまないな。その、誕生日おめでとう」
そう言って、彼は真っ赤な薔薇の花束を差し出した。
私は、言葉にならない声を出して、動揺する。
「家族団欒の邪魔をしない方が良いとは思ったのだが、どうしても当日に直接君に伝えたくてな」
ということは、彼からの連絡がなかったのは遠慮をしていたのか。
私は突然のサプライズに心臓の鼓動が高鳴るのを感じた。
彼は優しく微笑む。
「もうすぐ誕生日も終わるが、今日一日楽しかったか?」
貴方のせいでブルーな誕生日でした、と言ってやりたかった。
だが、今、彼がここに来てくれたことで、寂しさや悲しさが消え、今は喜びでいっぱいだった。
涙目になる私を見て、彼が慌てる。
「す、すまない。やはり、迷惑だっただろうか?」
「そんなことないです!」
狼狽える彼に私は間髪入れずに答える。
そうだ驚きのあまり、私は言っていなかった。
「ありがとうございます。嬉しいです。誕生日に紅葉さんに会えたのも、こうして覚えて、お祝いしてくれたことも」
私がありのままの想いを伝えると、彼の顔が真っ赤になった。
「どうして、いつも君はそうやって…」
彼の手が伸び、私の顔に触れそうになったところで背後から声がかかった。
「姉ちゃん、誰が来たの?」
私が帰ってこないのを心配した魔咲がこちらに来た。
魔咲は彼の顔を見ると、全てを察したようで悪戯めいた表情をした。
彼は軽く一礼をし、挨拶をした。
「こんばんは…弟さんかな。君のお姉さんを引き留めてすまない」
「いえ、いつも姉がお世話になってます。姉の誕生日を祝いに来てくれたんですよね。立ち話もなんですから、良かったら上がってください」
私には見せない、ビジネススマイルを浮かべて魔咲は彼を家にあげようとする。
慌てて魔咲を見ると、彼に気づかれないように私にウィンクをしてきた。
こうして、今年の誕生日、私は世話焼きな弟と気になる人の三人で一緒に過ごすことになったのだった。
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