誕生日SS 1
閲覧ありがとうございます。
誕生日シリーズを更新します。
雪之助の誕生日のお話です。
雪之助視点です。
街が光り輝くクリスマスシーズン。
今日はクリスマスイブだ。
そして、僕の誕生日でもある。
クリスマスイブとクリスマスは、彼女と過ごす予定だ。
24日は近くのイルミネーションを見てから、彼女が希望したイタリアンへ。25日は僕の家でDVDを見たりと、ゆっくり過ごす予定だ。
今回は彼女と初めて過ごすクリスマス。
僕は彼女に誕生日のことを伝えていないから、おそらく知らないだろう。
自分から言うのは、気が引けてしまった。
誕生日なんて、関係ない。僕は彼女とのクリスマスを楽しもうと思っていたんだ。
それにしても、今日の彼女はいつになくそわそわしている。
小動物のようで可愛いが、少し気になる。
しかし、尋ねても、あからさまに話を逸らされてしまう。
彼女をからかいつつも、時間はあっという間に過ぎ、僕達はイルミネーションを見て、彼女が希望したイタリアンレストランへ向かった。
そして、レストランに着くと、彼女は一層落ち着きがなくなった。
時間を気にしたり、周りをキョロキョロしている。店員とも頻繁にアイコンタクトを取ろうとしている。
僕は淡い期待を寄せてしまった。
もしかして、彼女は僕の誕生日を知っている?
メインディッシュを食べ終え、デザートが来る。
可愛らしいキャンドルのついたケーキとチョコレートで書かれたハッピーバースデーの文字。
ふと、彼女の顔を見ると、無邪気に笑っている。
ああ、この子はどうしてこんなに可愛いのだろう。
「雪之助さん、誕生日おめでとうございます」
彼女は僕の反応を伺いながら、お祝いの言葉を述べる。
僕は、そんな彼女をいじらしく思いながらも驚いた様子を彼女に見せた。
「僕の誕生日知ってたの?」
「それは勿論、攻りゃ、いや、魔姫先輩に聞いて」
彼女は一瞬不自然に口を閉ざしたが、聞かれたくないようだったので、気づかないフリをした。
「嬉しいよ、ありがとう」
本当に、嬉しい。
彼女が一生懸命、今日のために準備してくれたと思うと頬が緩む。
すると、彼女は恥ずかしそうに目を伏せ、紙袋を手渡す。
「これ、誕生日プレゼントです」
ありがとう、と僕は紙袋を受け取る。
「開けてもいい?」
そう尋ねると、彼女は一瞬戸惑い、そして頷いた。
「これは、コインケース?凄く素敵なデザインだね。ありがとう」
彼女はホッと胸を撫で下ろした。
この紙袋にはコインケースだけではなく、もう一つ何かが入っていた。
僕がそれを開けようとすると、彼女がぶつぶつと何かを呟いた。
「うう、やっぱりそっちは返してください」
真っ赤な顔で涙目になりながら、手を差し出す彼女。
扇情的な表情に僕は思わずドキッとしてしまう。
「ダメ、これはもう僕のだよ」
僕は悪戯心で彼女の手の届かないところで、仰々しく包みを開けた。
そこには、深い青色のマフラーが入っていた。
タグが入っていない。そして、所々編み目が粗い。
「これ…」
彼女は観念したように、小声で応える。
「マフラーを編んでみたんです。重いかな、と思ったんですけど、作りたくなって…」
僕のためにマフラーを編んでいる彼女を思い浮かべた。
可愛らしい彼女の行動に僕は思わず彼女を抱きしめてしまった。
「素敵な誕生日プレゼントだよ、ありがとう」
「喜んでもらえたなら良かったです…」
マフラーを着ける。
首元がゆっくりと温かくなるのを感じる。
12月24日。僕は今までで一番幸せな誕生日を迎えることが出来た。
これから、彼女と様々な思い出を紡いでいきたい。
そんな夢を抱きながら、幸せな誕生日は幕を閉じた。
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