番外編3-2
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桜太の番外編です。
今日はシャルロッテが日本に戻ってくる日だ。毎日チャットをしているものの、シャルロッテがいない日々はどこか味気ないものだった。
従姉妹が空港に迎えに来るということで、家族水入らずの時間を邪魔するのも悪いと思い、俺はシャルロッテの帰国の連絡を家で待っていた。
しかし、その日からシャルロッテの連絡は途絶えた。
シャルロッテの乗っていたはずの便は無事に着いている。
何かあったのだろうか。でも、大きな事故だったらニュースになるはず。
それとも個人的な何かがあったのか。もしくは俺が何かしただろうか?
シャルロッテに電話を掛けてみても、繋がらず、メールもSNSも応答がなかった。
手紙を出してみても、返事がこない。
到着予定日から5日が経ち、居ても立っても居られず、一度だけ訪ねたことのあるシャルロッテの家を訪ねることにした。
シャルロッテの住む学生マンションを訪れ、俺は記憶を辿りながら、シャルロッテの部屋番号を打つ。
心配しすぎだろうか。シャルロッテは思うところがあって、俺を避けているのかもしれない。
迷惑になるのでは、だが、何かあってからでは、と考えを逡巡していると、声を掛けられた。
「あれ、貴方は桜太さん?」
そこに立っていたのは、白人の女性だった。
白人、ということはシャルロッテの知り合いだろうか。
「私、ロッテの従姉妹のサマンサよ」
どうやら、サマンサはシャルロッテから俺の写真を見せてもらったようで、顔を知っていたようだ。
シャルロッテは風邪を引いて、寝込んでいるらしい。帰国直前にスマートフォンを壊してしまったが、体調が悪く、買い替えることができなかったらしい。
サマンサはシャルロッテの為に食べ物を買いに行っていたらしい。
俺はシャルロッテの無事を確認し、安心した。日を改めようと踵を返そうとした時、サマンサに引き止められた。
「折角いらっしゃったんだもの。会いに行ってあげて」
そう言って、サマンサは俺を半ば強引にシャルロッテの部屋へ連れて行った。
サマンサからご飯を準備している間、シャルロッテの様子を見てほしいと言われた。
俺はベッドで寝ているシャルロッテに近づく。額に汗をかいていたので、ハンカチでそっと拭った。
すると、シャルロッテは身じろいだ。
「ん、サム…?帰ってきたの?」
シャルロッテはゆっくりと目を開ける。
そして、その表情がどんどん驚きに変わる。
「桜太?どうしてここに?」
俺は少し恥ずかしくなった。
シャルロッテと連絡が取れなくなって、数日経ち、不安になった俺はついに家にまで来てしまったのだ。
「いや、お前らしくない連絡の途絶え方するからなんかあったのかと思って」
そう言うとシャルロッテは、明るい表情をした。熱のせいかいつもより頬が赤い気がする。
「心配してくれたの?嬉しい」
そんな笑顔を見せられると、俺はどうしていいのか分からなくなる。
いつものようにシャルロッテが俺を抱きしめようとして、躊躇った。
俺は思わず眉を顰めてしまう。
「私、風邪引いてるから移しちゃう…」
おずおずと手を引くシャルロッテ。
普段と違う、どこかしおらしいシャルロッテを見て、俺は気づけばシャルロッテを抱き締めていた。
シャルロッテは少し動揺した後、抱き締め返した。
いつもより熱い。やはり、熱があるのだろう。
「桜太、大胆…ドキッとしちゃった」
体を離すと、シャルロッテは茶目っ気たっぷりな表情をして、上目遣いでこちらを見る。
いつもと雰囲気が違うせいか、俺は思わずドキッとしてしまう。
「何言ってんだよ、バカ。起こして悪かった」
そう言って、ベッドから離れようとすると、シャルロッテは弱々しく俺の腕を掴む。
「もう、帰っちゃうの?」
シャルロッテは寂しげな表情をする。
そういえば、小さい頃、妹が熱を出した時、こんな表情をしていたな。
俺は昔、妹にしたように額にキスをした。
そして、手を優しく握った。
「寂しいなら、まだいるよ」
シャルロッテは少し驚きながらも、嬉しそうにありがとう、と礼を言った。
そんなシャルロッテを見て、俺は当分、シャルロッテに振り回されるんだろうな、と思いながら、彼女に微笑んだ。
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