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閲覧いただき、ありがとうございます。

今回で本編、完結です。

日が陰る頃、家の近くの公園で待っていると、雪之助が息を切らしながら、こちらへ来た。


「ごめん、待った?」


「いえ、急に呼び出して申し訳ないです」


雪之助曰く、女の子を一人で夕暮れの公園に居させるのは危険だと思い、走ってきたらしい。


場所を指定したのは私だ。

これならもう少し違う場所を選ぶべきだった。


暫くの沈黙の後、私は切り出した。


「その、この前の返事がしたくて」


雪之助は頷く。

人生で告白されたことは初めてだ。それに、告白の返事をすることも。


心臓が爆発しそうになるのを堪え、雪之助を見る。


雪之助は真剣にこちらを見ている。

そうだ、今度は私が素直になって真剣に彼と向き合わなければ。


勇気を出して、私は震える声で告げる。


「私も雪之助さんのことが好きです。私で良ければ…っ」


最後まで言えなかった。

雪之助が私のことを勢いよく抱きしめたからだ。


「ゆき、の、すけ、さん…」


抱きしめる雪之助の手から震えているのが感じられた。


「良かった…断られるかと思ってた」


私は小さく首を振る。

本当は全力で否定したかったが、雪之助の抱きしめる力が強く、それが限界だった。


「大好きだよ。大切にする」


震えた声で雪之助が告げる。

雪之助も緊張していたのだろうか。

不謹慎ながら、私はそれが嬉しくてたまらなかった。自分と同じだと思ったからだ。


「私も雪之助さんのことが大好きです」


溢れる想いを言葉にする。

そして、私は精一杯、彼を抱きしめ返した。


こうして、モブキャラの私は原作と全く違う結末を迎え、新たなスタートを切ったのだった。


そして、季節は冬になり、私は雪之助の実家が経営する旅館に来ている。


原作で雪之助ルートのハッピーエンドで訪れるところだ。


今回は二人っきりでの旅行だ。

昼はスキーを楽しみ、温泉に浸かって、部屋に戻ってきたところだ。


私は夜景を見ている雪之助を後ろから抱きしめた。


「おかえり。温泉はどうだった?」


「気持ちよかったです」


雪之助はおいで、と自分の膝を叩く。

私は少し恥ずかしいと思いながらも、甘えることにした。


向かい合うと雪之助が上目遣いで私を見る。なんだかこの視点は新鮮だ。


「季々ちゃん」


「なんですか?」


「僕を選んでくれてありがとう」


それはこちらのセリフだ。

私を好きになる物好きは貴方しかいない。


私がそう告げると、雪之助は笑った。


「季々ちゃんの魅力を誰よりも知ってるのは僕だからね」


そう言って、私達はどちらからともなくキスをした。


これから、私達は乙女ゲームの世界では存在しない、新たな一年を迎える。


不安がよぎることもあるが、彼と一緒ならきっと幸せだろう。


最後まで閲覧いただき、本当にありがとうございます。次回からは番外編を投稿していきます。引き続き、お付き合い頂ければ幸いです

良ければ、評価、ブックマーク、コメント等よろしくお願いします。励みになります。

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