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次の日、私は彼女から海斗と無事交際を始めたことを報告された。
「きーちゃんは雪之助さんと一緒に回ったんだよね。何かあったりした?」
好奇心たっぷりに彼女が尋ねる。
あった。しかし、私は躊躇ってしまった。
そんな私の様子を察して、彼女は探るように私を見つめる。
「さては告白されたな?」
私は思わず動揺し、飲み物を吹き出しそうになってしまった。
当たりか、と彼女はにやりと笑った。
「それで、付き合ったの?」
彼女は興味津々で身を乗り出して話を聞こうとする。
私は口ごもる。
「その、保留にしてます…」
彼女は驚いたように目を見張る。
理解できない、といった様子で私を見つめる。
「なんで?二人は両想いでしょう?」
彼女から見ても、私が雪之助に惹かれているのは一目瞭然なのだろう。
私は居たたまれない気分になった。
私は自分に自信がないことを告げると、彼女は思い切り頬を膨らませ、抗議する。
「雪之助はきーちゃんのこと本当に好きだよ。釣り合いが取れないとか、そういう風に思うのは告白した人に対して失礼じゃないかな」
彼女にしては珍しく辛辣な言い方をする。
「それにきーちゃんは可愛いし、面白いし、雪之助さんともお似合いだと思うよ」
私は多分何年経っても自分が雪之助に相応しいとは思えないだろう。
ファンクラブまで作られるような色男とモブキャラが釣り合い取れるとは思えない。
それに、と彼女は続けて言う。
「雪之助さん、きーちゃんを守りたくてファンクラブを解散させたらしいよ」
私は思わず目を丸くする。そんな話は聞いていない。
「きーちゃんは愛されているよ。私、ファンクラブ会員に知り合いがいるんだけど、雪之助さん、この前凄く怒ったらしいの」
あの雪之助がファンクラブ会員に怒る姿は想像出来なかった。
彼女はびしっと私を指差す。
「きーちゃんも雪之助さんのこと好きなんでしょう?素直になりなさい!嫌われたらどうしようなんて思わないこと!」
有無を言わさぬ彼女の物言いに私は押し黙る。その様子を見て、彼女は苦笑いする。
「雪之助さんと居る時のきーちゃんって凄く幸せそうで嬉しそうで…親友として、きーちゃんにも幸せになってもらいたい」
そう言うと、彼女は私の手をぎゅっと握った。
「何があっても私はきーちゃんの味方。私、応援しているから。きーちゃんは勇気を出して、雪之助さんに素直な気持ちを伝えて」
いつになく、真剣な彼女の表情に私は頷いた。
大学から帰り、ベッドに横になる。
目を閉じ、今までの想い出を振り返ってみた。そして、雪之助との想い出が蘇ると同時に芽生え始めた感情も鮮明になった。
これ以上自分の気持ちに嘘はつけない。
私は今までゲームの世界だということを言い訳にして、彼女達と真剣に向き合おうとしなかった。
それがどんなに相手にとっても寂しいことか、自分にとっても苦しいことか、気づかせてくれたのは雪之助だった。
私は怖かった。もし、好きになったらどうしよう。このゲームの世界で恋愛をして、感情に飲み込まれてしまったら、と不安な気持ちでいっぱいになってしまった。
でも、死亡フラグがあろうとも、自分がストーカー役だろうと、シナリオ通りじゃなくても、私は雪之助が好きだ。
私はスマートフォンを手に取り、雪之助に電話をする。
「雪之助さん、今から会えませんか?」
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