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彼女を海斗の元へ送り出した後、私は雪之助との待ち合わせ場所に向かった。
私を見つけた雪之助は嬉しそうに微笑む。
それを見て、私の心臓はまた高鳴っていく。
最近の私は雪之助の一挙一動に動揺を隠せなくなっていた。
「今日は一緒に回れて嬉しいよ。じゃあ、行こうか」
差し出された手を取るのにも慣れてきた。
しかし、手を繋いでる時の鼓動の高鳴りは抑えることが未だ出来ない。それどころか、日に日に高まっている気がした。
出店を周り、桜太の華道イベントを見に行ったり、様々なところを巡っていると時間はあっという間に過ぎていった。
そして、私達はチャペルで行われるプロジェクションマッピングを見にいくことにした。
会場は人が多く、とてもプロジェクションマッピング見えるような状態ではない。
どうしようか、と考えていると、雪之助が手を引っ張った。
雪之助の方を向くと、人差し指を口に当て、ついてきて、と小声で言った。
そして、辿り着いたのはチャペルから少し離れたB棟のスカイラウンジだった。
そこには人が一人もおらず、夜の為、照明も点いていない、暗くて静かな場所だった。
スカイラウンジの大きな窓に近づくと、大学内を一望することが出来た。勿論、プロジェクションマッピングを行うチャペルも。
「綺麗…」
ちょうど、プロジェクションマッピングが始まり、思わず感嘆の声を漏らしてしまった、
隣で雪之助もプロジェクションマッピングを見始める。
「ここ穴場なんだ。昼も人通りが少なくて景色も綺麗で、ここならゆっくりプロジェクションマッピングを観れると思ってね」
「そうなんですね。素敵な場所を教えてくださってありがとうございます」
チャペルを背景に様々な映像が映し出される。先程、買った炭酸を飲みながら見る景色は特別な気分にさせた。
「ねえ、季々ちゃん」
プロジェクションマッピングが終わりに近づき、雪之助がふと真剣な声で私を呼んだ。
「僕、季々ちゃんのこと好きなんだ」
私は息を飲む。
心のどこかで期待していた自分がいた。
「僕と付き合ってくれませんか」
大きく頷きたい気持ちがあった。
でも心のどこかで、もう一人の私が幸せになっていいの?と呟く。
原作とは違うと分かっていながらも、ストーカーの自分が私を責める。
ヒロインの幸せより自分の幸せを優先するの?
ー彼女はそんなことを望んでいない。
今まで沢山の時間軸の人達を殺してきた。
勿論、雪之助も。
ーそれは私ではない。
貴女が雪之助に相応しいと思うの?
いつかの日にファンクラブ会員に言われた言葉。その言葉が突き刺さる。
私は自分に自信がない。
恋愛経験も乏しいし、雪之助と釣り合う容姿も性格もスキルも持っていない。
彼が私を選んでくれたのは嬉しい。でも失望されるのが怖かった。
私の迷いを察したのか、雪之助は寂しげな顔をした。
「急にこんなことを言われても困るよね。少し時間を置こうか。前向きに検討してくれると嬉しいな」
そう言って、雪之助は私の頭を撫でた。
何故、私は即答出来なかったのだろう。
プロジェクションマッピングの後、気まずい雰囲気が流れ、その日は解散となった。
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